ザ・グレート・展開予測ショー

おキヌのような花


投稿者名:Misao
投稿日時:(01/ 3/ 1)

とある昼下がり。
横島はおキヌの買い物に付き合っていた。
強い、しかし優しい日光がレンガ道を照らし、行きゆく慌ただしい人々の影をゆらゆらと躍らせた。
左側にはいろいろなガラス張りの店が並び、ウィンドーショッピングができるので、おキヌはこの通りが好きだった。
喫茶店のガラスに映る自分と、その少し後ろにぼーっとしながら歩く横島を見ながら、ただ気持ちの良い風を感じていた。
が、ハッとする。
「あぁっ!!大根、買うの忘れましたよねぇっ!」
いきなり大声をあげられ、思わず体がビクッっとする横島。
「まぁ、大根ぐらいなくってもいいんじゃねぇ?」
「だぁめです!大根がないとおでんじゃないじゃぁないですかぁ〜」
大根だけで何をそんな深刻に・・・と横島は苦笑して頬をポリポリとかいた。
「いいんじゃね〜の?今から引き返すのも時間掛かるしなぁ」
そうですね・・・とおキヌは呟き、うつむいた。あの苦笑い、生返事のような口調。いつもになく微妙にちょっとだけ冷たい横島の態度を、何となく感じていた。
まぁ、徹夜で寝ていない横島をムリヤリ荷物持ちで長い買い物に連れてきたのだから、仕方無い。
と、おキヌは足を止めた。
「あ・・・うっわぁ〜!!横島さん見て見て!すっごく綺麗〜♪
いつか私も着てみたいなぁ〜・・・」
おキヌがガラスに張り付く。横島が少しだるそうに見てみると、思わず口が開いた。
新装開店したウエディングドレス専門店だ。
そこには白くパールに輝くウエディングドレスの数々。マネキンでさえも幸せそうに見えてしまう美しさ。白バラのように優美で華麗で清楚。
「お、おキヌちゃんやったらどれも似合いそうやなぁ〜!良かったら僕の花嫁になっ・・・?」
いつものようにふざけてみる横島は、言いかけて首をかしげた。おキヌが背を向けたまま動かない。
「きっと私が美神さんだったら、美神さんにも同じ事言うんでしょうね・・・」
ぎくっ・・・。
ドレスを見た時、今まで避けていたそう言う会話になってしまうのではないかと予感していた横島は、冷や汗を流した。
「い、いやぁ。み、美神さんはこーゆーモノ切る機会無いと思・・・ちゃった・・・り?」
振り返ったおキヌの冷たい目に思わず引いてしまう横島。
「前々から・・・思ってたんです。横島さんはいろんな人に優しくて・・・みんなに気があるように言うけど、一体誰が本気で好きな女性なのかなっ・・・・て。私はただの冗談言う相手の1人なのかなって。横島さんの美神さんへの想いには、かなわないのかなって」
「あ、いや、あ」
おキヌは拳に力を入れて言い放った。
「横島さん・・・ずっと前から私のキモチ、知ってるんでしょう!?美神さんとか私とかに心がふら付いていつも曖昧で・・・。
ちゃんと・・・私を1人の女として見てくださいっ!」
一瞬、周りの音と空気が止まったかのように感じた。
今までに無かったおキヌの強い言葉に、横島は人が流れる道の真ん中でただ呆然と立ち尽くすだけだった。
「お、俺は・・・」
言えなかった。言いたい台詞が口の中でこもる。
「・・・。さ、戻りましょ」
その場から離れ、速足に歩き出すおキヌの背中は、なんだかいつもと違う。横島は顔を曇らせながら距離を置いて歩いた。

この後、さらに2人の距離が広がってしまう出来事がある。
その話の行方は、次回へ続く。


今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa