ザ・グレート・展開予測ショー

横島危機100発!!


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 2/16)

 「横島ぁ!!」

ぱしぃぃん!!ばきばき!!

 それは寒い冬の朝。
 バスルームの前で横島がタオル一枚巻いただけのあられもない姿の美神にどつきまわされている、極普段通り変わらぬ日常がそこにあった。
「これで何度目だと思ってるの!!少しは反省って物がないの、あんたのノーミソには!!」
「ごめんなさいごめんなさい!!」
よほど腹に据えかねているのか、神通鞭を振り回し、烈火のごとく怒鳴りつける美神と床に這いつくばり謝り倒す横島の姿。
「馬鹿ね、あいつまたやられてるわよ」
「先生、情けないでござる・・・」
タマモとがさもあたりまえのように嘲笑し、シロも何度見ても当然のように悲哀の顔を浮かべ、横を通り抜けていく。
「そろそろご飯ですよ、美神さん」
おキヌちゃんは、横島を見ないように美神に声をかける。
 横島が助けを求めようと視線を向けるとぷいっとそっぽを向いてしまった。
 幽霊のときはまったく気にしなかった横島のスケベ心だが、生身になった彼女には何年経っても理解できるわけなく、当然怒りを露にする。
「良いのでござるか?」
何も言わないおキヌちゃんを見てシロが肩を揺らしてどうにかする様促すが、
「知らない!横島さんなんか!!」
おキヌちゃんはそのまま踵を返すとキッチンへ向かってしまった。
「美神さん、もうやめるでござる!」
おキヌちゃんが完全に止めないと見て取ると仕方なくシロは自分で止めに入る。
「あんたには関係ないでしょう?」
しかし身神の強烈な視線を受けて、顔を引きつらせてたじろぐ。それでも、
「横島先生も反省したようですし・・・」
どうにか言葉を続けた。しかし、
「この馬鹿、いっぺん死なないと分からないのよ!」
という強烈な言葉とともに発せられた怒気に、シロはついに諦め尻尾を巻いて逃げ出してしまった。
 恐ろしいほど、極日常的な風景である。 
そんな時。 
『美神オーナー、唐巣神父が見えられました』
「え、神父が?」
人工幽霊一号の声に手を止める美神。横島はほっとしているまもなく危機から脱しようとゴキブリのようにチョコチチョコと後退する。
「逃げるな!」
しかし美神に一喝されてびくううっと体を固める。
『ええ。お急ぎのようでしたのでお通しいたしました。数秒でそちら向かわれるかと」
「え、ちょっとなに考えてるのよ!ああもう!!」
唐巣神父を通したと言われて慌ててバスルームに引っ込もうとしたその時。
「な、どうしたんだ横島君、そんな血まみれで・・・、ははは、相変わらずのようだね美神君」
なにやら高価な宝石の入ってそうな箱を手にした唐巣神父が、呆れ果てた顔をしてそこに立っていた。

「で、何のようです先生?」
いつもの服に着替えてソファーに腰をおろしながら美神が唐巣神父に尋ねる。
「何の用って、ずいぶんな言い方だね師匠に対して。まあそれはいいとして、まずこれを見てくれるかね?」
唐巣神父はぞんざいな美神に苦笑をしつつ、手にした宝石箱をテーブルの上に置き、開けてみせる。
 それは15カラットはありそうなブラックダイヤの指輪だった。時価にして数億はくだらない代物だ。
「あ、ずいぶんきれいな指輪ですね!」
何時の間にか完全復活している横島がご丁寧においてあった白の手袋をはめるとその指輪をひょいと手にとって見せる。
その時。
「あ!」
唐巣がまるでこの世の終わりが来たかのような顔で横島を見た。
「え、どうしたって言うんですか?」
横島が素っ頓狂な声をあげる。
「先生、まさかその指輪って・・・」
美神がつばを飲みこみ、重々しく口を開く。
「ああ、美神君には一昨日話したと思うが、・・・イタリアの宝石商から送られてきた、そのなも『アンラッキーオンワンハンドレット』」
「100回の不幸・・・その名の通り直接手にした本人に100回の不幸が訪れるって言う伝説のダイヤね」
「え?冗談でしょ、唐巣さん、美神さん・・・」
「残念ながら冗談じゃない」
「話も聞かずいきなり手にするあんたが悪いんだからね・・・」
笑い飛ばそうとする横島を哀れみの目で見る二人。
「・・・そ、そんな・・・」

がしゃぁぁん、ごすぅ!!

横島が口を開いた直後、ガラスが割れ、横島の右頬に白い塊がめり込む。
「あ、が・・・」
「君には気の毒だがいまのうちにダイヤのほうを封印してしまおう」
「誰かに不幸をしてもらっている間じゃないと触れないのよねぇ〜〜」
「・・・・あんたら、わざとだな・・・・」
横島はプルプルと体を震わせながら白い塊をもぎ取る。可愛そうにくっきりと縫い目の跡が頬に刻まれている。
「いや、美神君に毎日半殺しの目に遭わされている君なら、乗り切れるだろうと思ってね・・・」
神父が黙々とダイアをお札にくるみながら言う。
「良かったじゃない、人に認められて。それにねぇ、話を聞かずに勝手に手に取ったあんたも悪いんだからね。いい勉強になったでしょう?あ、それ以上近寄らないでね。巻き添えはごめんだから」
「・・・あんたらなぁ!!!」
さすがの横島も我慢の限界か、白球を思い切り投げつける。
しかし白球は二人の間をすり抜けると壁で二回ほどバウンドし、

めきょめきょ!

今度は左頬にめり込む。
「いってぇぇぇ!!!」
「残り98回よ。がんばって」
「・・・神よ、我を許したまえ。彼ならきっと不幸に耐え切ることができるでしょう。万人の幸せのために身を投げ出した彼に祝福を・・・・」
「天罰でも食らえ!おっさいいいいぃ!!」

ずるぅ、ごす!!

「ぎゃぁぁぁぁあ!!!」
悪態をつく横島、今度はボールの上に足を乗せてしまい、そのまま後ろに倒れて後頭部をしたたかにソファーの手すりにぶつけ、痛みにのた打ち回っている。
「・・・本当に大丈夫なのか、美神君・・・」
唐巣は今更ながら己のなした所業を後悔していた・・・。

続く

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa