ザ・グレート・展開予測ショー

極楽大作戦 de 時代劇 巻之九


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 2/ 8)

ひのめに憑いた馬面の悪魔と城主公彦の病魔が取り除かれた時小さな虫が城内から出た。
その虫は真っ直ぐ自席家老風炉努留(プロフェッサー・ヌル)の元へ。
「どうした?通信虫」
通信虫、彼が考案したスパイ用の昆虫だ。悪鬼二人を取り除いたと、報告をうける。
「くそー、令姫が城内にはいるとは、計算違いだわ!」
「努留そうなると、ここは危ないのではないのえ?」
自席家老宅にいた死津喪比女の言に、芽道邪(メドゥーサ)奴も同感である。
「城内で恐ろしいのは家老の毒田だけであったが、姫やどうも、助っ人がいるな」
「それに祈祷師は童を仇として、あの夫婦者の二人は京で暴れた時からの刺客として」
助っ人であるはずの自分がまさか敵に塩を送る事になろうとは思ってもなかったろう。
「致し方あるまい、ここより北西にわが仮の庵がある、そこに身をかくそう」
「じゃ、あきちは遊郭に戻るえ、藩転覆の計画はこれで終りではないだろうね?」
「あぁ、手など幾らでもあるわ!城内にも我が手の者がいるからな!」
その半刻(一時間)後カラクリ人形毬亜(マリア)の情報によりクロと判明した
自席家老を縄にしようと、奉行の西条が向かったが既にもぬけの空であった。

同じくして、健康を取り戻しつつある城主公彦と皇族の外戚にあたる忠夫が
御前にてやりとりをしている。
「では、我が藩に悪鬼の類が舞いこんでおるのだな」
「はい。以前京の町を半壊させた死津喪比女なる悪鬼を此方で見かけました」
「恐ろしい女子だな」
「しかも城主様。更に恐ろしい奴を見かけまして御座います」
「何と申す?」
「私の勘が間違っていなければで御座いますが、遊郭にかなり魔力に長けた花魁が」
「むう、しかし何故我が藩にそのような悪鬼が集まるのであろうか?」
「こればっかりは、私には解りませぬ」
「そうか。そうなると霊障害に対して迅速に動ける組織が必要じゃな」
「御意」
「そうなると、城内にあると不便だな」
「はい、こちらの唐巣寺の和尚殿も霊能の持ち主とか。其処を拠点に出来ればと」
「うむ解った。ではな付近におぬし等二人の仮屋も持つがよい。当座の金子を」
「有り難く存じます、もう一つ、御許しを願えれば」
腰元のオシロ、オタマも霊力持ちなので、配下にとの進言も快く受けた。
尚、令姫も今日は城内に残るといって父を喜ばせたとか。
そして、明日唐巣寺に参る事を約束にした。
妻キヌが目覚めてから、御赦免状(城内フリーパスポート)を賜り城内を後に。
旅篭『魔鈴』から、氷室夫婦再度小悪鬼のスズメ(鈴女)を借りうけた。
「あ〜の〜、氷室さま〜」
「なぁに?おめい(冥子)さん」
「あたしの〜うちの〜別荘が〜近くに〜あるの〜、其処〜、使う〜」
願ってもないと、夫婦二人に腰元二人は教えられた場所に夕日を浴びて向かった。

不発に終わった西条もその日は大人しく奉行所に戻り、明日唐巣寺に向かう事を聞いた。
家老宅にも明日の報は伝わる。丁度雪之丞が家路に向かう直前であった。
手間が省けてたとはこの事だ。
「ふーむ。明日唐巣寺で相談とな。霊能を持つ者は参加せよ、か」
「は、では些少ながら私も参加したほうが?」
「うむ。それにな、おぬしの友とやらも呼ぶが良い、町民だからと気にでんでもよい」
「解りまして御座います。では明日」
「うむ、当座の資金じゃうけとれ」
懐から一両小判を分け与えた。
そういって妻のタエと二人で浪人の伊達雪之丞を見送った。さて家に入るかのの時に、
「差し出がましいようですが、上様(ここでは薫巣)も向かわれるので?」
「あぁ、これは藩の大事じゃ」
「そうでしょうが、貴方は決して若くないのですから」
「ふふ、見縊られた物よ」
もう初老に達した良夫の心配をする。だが危険な事にならないかと心配させまいと作る、
その笑顔の裏が読み取れぬ程、夫婦中は悪くない。
「そうじゃな、今度の仕事で家老職は辞退するかな。ワシも歳じゃ」
「まぁそれはおいおい、今日は我が家にも若い御客人が二人おりますな」
「うむ、爺婆ばかりの家に久しぶりの若い声が響くな」
小笠原流祈祷師エミを暫くはこの家に置く事になった。と言う事は、
「比延蕩様ぁ〜」
「あー、そ、そのようなことは!」
どんな事かは各人の御想像に任せよう。
寅吉とおまり(麻理)は何時は馴染の菜飯屋にいたので、家老様直々の命に驚く。
「ナンとです事かノー!」
「わたしも信じられないわ!」
「だが、本当に頼まれた事なのだ。藩の大事と有って手を貸さぬ訳ではあるまい?」
「それはそうじゃがノ。解った。明日唐巣寺に向かおう」
「でもあんたー、親方様に怒られない?」
「解って下さるじゃろ?」
「あぁ、たのむ、あとさ、おまりちゃん」
「はいはい。おゆみ(弓)ちゃんにはちゃんと言っとくよ。彼女も解ってるさ」
だそうである。
それではと、自宅に戻る道中で江戸から着た怪我人が運ばれてきた。
「ひ、辻斬りだぁ〜、人斬りがでたぁ〜」
ち、武士の風上にもおけねぇ奴がいるもんだと、気分を害した。その所為もあるか、
「道場にでもよるか」
雪之丞が通う『小竜道場』は美神藩随一の剣術指南所であることは先にも述べてある。
型は無外流、辻兵衛門(つじへいえもん)が源流の江戸剣術屈指の名門である。
繁盛するが故、夕刻からしかやって来れない門弟も少なくない。
女がてらに道場主、おりゅう(小竜姫)が剣を振るっていた。
「雪之丞、珍しいですね、こんな時間に現れるなんて」
「ええ、本日は剣を握ってなかったので御座いまして、それで」
「貴方の担当でない門弟ですが、相手になってあげなさい」
「はい」
「そう。明日、私の師匠筋にあたる方がこの道場に来るのですが」
「申し訳御座いません、明日実は・・・」
家老の約束が有るので外出する胸を告げ、仕方ありませんねと、おりゅうも諦めた。

江戸より来る表門の1里前、そ奴はいた。先程の辻斬りである。
美神藩まであと1歩の処なのに、皆引き返すから首をかしげる旅人がいた。
「先生、みんなどうしたんだろうね?」
「うーむ、この先崖でも崩れたのかな、もし、ちょっとお尋ねしますが」
辻斬りがいることを聞くいた。
「悪い事はいわねぇ、爺様御孫連れじゃねぇか、しんどいが前の宿場まで戻れや」
「いや、御忠告感謝」
「ねぇ先生。やっぱおら 孫に見られちまうだろか?」
この二人実は夫婦である。夫は六十歳位、妻は二十歳そこそこだ。
「まぁな。何にしても、捨ててはおけんな。ではその馬鹿を退治にいくか」
「さっすが先生!」
「じゃがな、ワシが剣を振るっている傍にいてはいかんぞ」
邪剣を振るう相手は皆引き返す中、爺が来たと喜んでいる。
「くくく。この剣の餌食よ!」
驚かせば腰が引けるだろう、そう思わせる老人の風体であった。だが、
「このばか者!」
肺の底から出す大音声、いや気合声と言うべきか。有無を言わさず老人は腰の剣を抜く。
「貴様のような輩は生かしても利益にならん。この秋山小兵衛が引導を渡してやるわ!」
老人とは思えぬ剣さばきであった。けして思い剣ではないが、逃げ場がなくなるのだ。
「く、くそぉ!覚えてろ!」
その賊は怪我を覚悟で崖下に逃げていった。
「俺の名は犬飼穂地(ポチ)、覚えてろ!」
「ふん!忘れたわい、おーい、おはるもういいぞ」
「やっぱ先生は強いねー」
おはるは只々感心するばかりだ。
この老人の名は秋山小兵衛(あきやまこへい)江戸でも屈指の無外流剣術使いである。


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秋山小兵衛、池波正太郎先生の小説『剣客商売』の主人公。
勝手ながら、お借り致します。

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