ザ・グレート・展開予測ショー

極楽大作戦 de 時代劇 巻之七


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 2/ 5)

とらわれの身であるはずの小笠原流の祈祷師エミは満更でもない様子だ。
「いや〜、可愛い男の子二人に囲まれるって悪い気分じゃないわけ」
ベタベタと二人に触りまくるエミだ。特に女性に抵抗の無い比延蕩(ピート)は困惑だ。
「悪いが俺にはいとしの子がいるぜ」
「あら、おねぇさんに乗り換えない?」
「うわ、くっつくな!こんな所おゆみに見られてら」
「おい雪、あそこにいるのゆみさん達じゃないか?」
それは、甘所で休憩していた大工の寅吉と許婚中のおまり(麻理)、役者の銀と、
とても恐ろしい形相で此方を見ている六道屋の奉公人おゆみだ!
「あー、色気の多い女子と一緒じゃノー」
「雪さん、これはどういうことかしら?」
「ま、待て話しあえば、解る!」
だが、商売品である薙刀を持ち出して今にも攻撃しそうな勢いだ。
しかもからかいがてら、エミは雪之丞に抱きつくから始末に追えない。
「ゆーきーのーじょーおー」
武芸師範であるはずの伊達雪之丞も最早形無しだ。
「あーあ、憐れな奴ジャな」
「ホントね、あんたがあんなにモテなくてよかったわ」
「なんか、引っかかるノー」
とのんびりとした会話の中、又局地的な地震が起こる。震度は小さかったのだが。
「あれ、大地が割れてくるぜ、麻呂(マーロウ)が吠えてててる」
ドンと物を噴出すように大地が割れ、オンナのようなのが現れる!!
「っく。エミとやら、わらわを追ってここまで来たか、邪魔よ、ここで果てぃ!」
驚くのは町の人々だ。蜘蛛の子を散らすが如く、解散する。
だが、最初に攻撃をしかけたのは犬の麻呂であった。
『ウォーーーン!』
「なにぞ!ここにも霊能者がいたか!」
サシでなら勝機有りと踏んだ死津喪比女であったからこれには以外である。
「く、まずはこの犬から食い殺してやるえ」
だが、目の前がいきなり真っ暗になる。死津喪比女も慌てるが比延蕩も驚きを隠せない。
「な、なんなんだ?これは!おい、雪之丞、ゆみ」
「慌てるな、これは寅吉の霊能だ、あいつの目に見えぬ空間に持っていく力だ」
「そうなんじゃー、これでワッシは新築の構想を客に見せてるのジャー」
今回の現象に慣れている面々は死津喪比女に攻撃を加える。
おゆみの薙刀に雪之丞は業物(日本刀)、それに麻理も拳に霊気を蓄える。
「もぉ、いいかのー」
寅吉が技を解くと、腐った花の残骸が其処にあった。
「これで、さっきの賊は倒れたのかな?」
「違うわけ、これはあいつの一部なわけ、本体じゃないわけ」
「おぬし、コヤツの事知っておるのだな、まぁ御家老の薫栖(カオス)様におまかせだ」
「そうだな、何はともあれ、ありがとよ。寅吉」
「気にするほどの事じゃないノー」
「おゆみちゃん。で俺は今護衛をしてるんだ。解ってくれよ」
「ま、帰ってきたら改めて話しましょ」
と、まだ膨れっ面のようだ。人間たぁ面白いなと、犬の麻呂があくびをした。
辺りに日常が戻った。
さて雪之丞一行は別れを寅吉らに告げて目的の屋敷を目指す。
地図を頼りに家老屋敷を探す。すぐに見つかったがさして大きな屋敷ではない。
「あら?家老様の御屋敷にしては小ぶりなワケね」
「あぁ、薫栖様は歴代ではなく、抜擢されて家老職にあらせなられたからな」
「ふーんまぁあって見るワケ」
「御免、拙者町方同心武等都・比延蕩 と申す。奉行の西条の使いで参上仕りました」
すると、中からどうぞとの声が掛かり、案内役の武士が丁寧に頭を下げる。
「失礼ですが、わが主から客人が来るとは聞いておりませぬ。書状かなにかを」
「これは奉行西条の書簡であるが、これでよろしいか?」
案内役が一読すると納得したのか、
「解りまして御座います。客間にお通しいたましょう」
けして広くはないが質素というのは程遠い客間に通される。通されてすぐに
先ずは御茶でもと小柄な老婆が入ってくる。
「これは、よくいらっしゃいました。同心様。私薫栖の嫁 たえと申します」
「これは御丁寧に。奥方様。拙者同心の比延蕩と申します」
「わたしは、この同心の獏友(ばくゆう=親友)で伊達雪之丞と申します」
「あたしは、祈祷師のエミでっす」
「して、貴方様方は何故この屋敷に?西条様の御伝達と聞き及んでおりますが?」
「はい、この女子、祈祷師のエミをこちらの御屋敷へと持ってくるようにと」
「そうで御座いましたが。そろそろヤド(亭主)も戻りましょう、御待ち下さいませ」
と言ってタエは家の門で何故か武装して待つ。暫くして門から旦那様帰宅の声が。
「たえ、今もどった、・・・おぬし、何をしとるのじゃ?」
「問答無用!妾を家に入れるとは言語道断!恥をしりなさい!」
「め、妾じゃと?いったい誰のことじゃ、落ち着け、薙刀をふるうな!」
しかもタエは薙刀の免許皆伝である、先ほどのおゆみの先生筋にあたるのだ。
「お、奥方様、本当にあの女子に用事があるので御座います」
「本当だろうね?」
「そうじゃとも。タエ。ワシの伴侶はお前しかいないわ。子供はできなかったがな」
いや、当てられますと奉行の西条。さて、客間に着替えを済ましてから向かう。
「あ、御家老様に御奉行様」
「よい、軽くしておれ、では早速本題じゃ。お主が祈祷師のエミじゃな」
「そう。小笠原流祈祷術師 エミだ」
「お主が今回の地震の予言をはやし立てたな。しかも時刻まで」
「ご家老は当初自分で予言して何らかの形でお主が興しているのではと思っておられた」
「じゃが、今回の報告を聞くと同も違うようじゃな」
エミは答えようとしなかった。
「あの、ご家老様、御話し中ですが、実は先ほどこんな事がありまして」
護衛中にあった死津喪比女の出来事を語る。
「そうか。エミとやら、その化け物の事をしっておったのだな」
「あぁ、あたしがいた藩で大暴れしてね。退治しようとしたあたしの師匠を・・・」
「そうだったのか。仇を討ちにきたのか」
「あぁ」
「だが、風説を流した罪はある。本来なら獄門だが」
「そうじゃな、監視官を付けて自由にしよう。ほれそこの同心がよかろうて」
「そ、それはこまるであります!」
慌てまくる比延蕩であるが、
「いや、ご家老様直々の御依頼受けるように、エミとやらもいいかな?」
「是非に!」
無邪気に喜んでいる。
「それとな、雪之丞とやら、今回手をかした町人達にワシが礼を言ってたと伝えてくれ」
そして、もしかしたら力を借りる事になるやも知れぬ胸も一緒に伝えよと命じた。

城では美神姫と腰元の二人以外には珍しい物である。
「令子姫〜これなーにー」
相変わらずのおめい(冥子)である。
ちなみに美人の腰元が通る度に鼻を伸ばす亭主の忠夫の尻を抓るは女房のキヌだ。
皇子様が突然の御来場とあっては城内てんやわんやの大騒ぎ。
普段殿様の控えるお目見えの間上段に3人の客人を乗せ、病気の城主公彦もやってきた。
「おい、オキヌ、城主様の御体を蝕んでるのも」
「そうや、ありゃ悪鬼の類ですわー。もう一波瀾あるそうやなー」
ひのめ様以外にもう一人悪鬼がこの城内にいるようである。

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桜華様、米田タエさんを拝借賜りました。心から御礼を申し上げます。
昏無鈴(グレムリン)亭 遁譜村(トンプソン)

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