ザ・グレート・展開予測ショー

おもちゃのナイフで


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 2/ 4)

それはいつも通りの放課後であった。
「それじゃぁ明日の土曜、渋谷の109の前に6:30分に集合ね」
「うん、そうね、そうだ愛子ちゃんはどうする?」
名実共にクラスのアイドルの幽霊にも声をかけるが、
「うん、行きたいけどあたしはほら」
「そっか、残念だね」
「ごめんね。今度は町内でなんかやるからさ」
「ありがと、でも気にしないでね」
机の愛子、学校霊の代表格みたいな物だ。最近『足』を形成したが、机から離れない。
「はぁ、あたしも渋谷とか新宿へいきたいなー」
誰も居なくなった教室に一人残る愛子。電気の消えた部屋で物思いにふけっる。
私がこうやって授業を受けてるだけで凄くうれしかったのに、最近は・・・、と。
「あー、忘れ物だよぉ」
「あれま、相変わらずドジね。横島君」
「幽霊に言われる筋合いはねぇよ、おっと、これだこれだ」
「なに?それ」
「まぁ大した物じゃないよ」
横島、そそくさと懐に忘れ物を入れて立ち去ろうとする。
「学校に持ってきちゃいけない物じゃないでしょうねもしかしてエロ本とか?」
「ち、ちげぇよ、ほら」
「あら、おもちゃのナイフじゃない」
有らぬ疑いは御免だと、渋々と見せた横島の手の中には本当に小さなナイフが」
「これはさ、俺が小さいとき親父にさんざ駄々こねて買ってもらった品なのさ」
「そうだったんだ、いいなー、お父さんの記憶があってさ」
さびしい面持ちを垣間見せる。
「そうだよな、でもお前は今存在してるんだ、いいじゃないか」
「うん、そうだよね」
「そういや、女の子連中あした遊びに行くって相談してたけどお前は?」
「あたしはダメよ。近所ならともかく渋谷じゃ机なんか持ってられないでしょ?」
明るく、勤めて明るく言おうとしているのだが、最後の語尾に幽かな震えが。
「お前は他の机とかじゃダメなのか?」
「うん」
といってから自分の机に頬付く形で、
「このなんの変哲もない材質が物をいってるんだ、だからあたしは離れられないの」
「まったく?」
「うーん、机から出た細かい破片なんかには憑依できるけど、机の形をしてないから」
その説明を受けて横島、ナイフ、といってもとても小さな物だが、その刃を出す。
「ちょっと、痛いかもしれねぇぜ」
右手で握り締めて愛子の机に小さな傷を付け、一部を切り取ろうとしている。
「な、何するのよ!!」
悲鳴声に近い物を出し、すぐに軽く気をうしなう。
「・・・気を失ってた方が楽かもな」
横島は一心不乱に机の一部分を削り取っては手元で何かしている。
数分後、愛子が気づいたには既に横島は帰っていた。
「あんにゃろー、なにしようとしたのよ!」
怒りを露にする愛子、不意に耳の辺りに重さを感じる。
何かと窓辺を鏡に見たてて自分の顔を覗いてみる。
「まぁ!」
そして、黒板には
『ちょっと痛かったかもしれねぇが御免な。これで渋谷にいけるといいな』
と書いてあった。後から後から涙が止まらなかった。
「横島君に、お礼言いにいこう」
比較的行動派な愛子は近くにいた霊に横島がどこに言ったか尋ねると
アパートでなく美神除霊事務所にいると判明した。
さて、その頃、令子とオキヌをはさんで明日の作戦会議の真っ最中だった。
人口幽霊一号が口を開く。
《Mr・横島、あなた様にお客様が》
「え?だれなのこんな時間に?」
《あのー、机の愛子様の様で御座いますが・・机を背負っておいでではありません》
どうしたことかと、メンバー皆で玄関に向かう。
扉を開けると机を背負ってないのにそこにいる愛子だ。令子が尋ねる。
「愛子・・ちゃん?」
「はい、これを見てください」
「あら、変ったイヤリングね、なに、小さな机の形になってるじゃない」
「あれ?これって単なる木で出来てますよ」
とても細かい仕事である。サイコロ程度の大きさの机であった。
「これを横島さんが作ってくれて、あたし、どこでも出掛けられるわ!」
そう、横島はサイコロサイズの机を愛子のイヤリングを作っていたのだ。
「いやー、その耳に繋いであるヒモはそのへんにあったビニールテープだしさ」
「ううん!どんな高価なプレゼントより、これがどれほど嬉しいことか!!」
そういって、少し勢いをつけて横島に寄り掛かり手を首に廻して、
-CHU-
「じゃ、じゃあね、本当に有難うね!」
そういって学校へ戻って言った。
「み、美神さん、あ、あのキスは彼女から・・・それに、お化けだしね。ね」
怖い目線で睨まれる横島だった。だが、
「ま、あんたのいい所か。これはお姉さんからのご褒美よ。目を閉じなさい」
横島は頬に甘い感触を受けていた。
「まだ、大人のキスはお預けだけどね。もうちょっと大きくなったらね」
オキヌちゃんには刺激が大きすぎたのか、立尽くしたままだった。
玄関の扉を閉めたときに一陣の風がおきて、すぐに消えた。

          -FIN-

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