ザ・グレート・展開予測ショー

オカルトG−メン西条の事件簿。第七章


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 2/ 3)

 「で、何なんだその猫は」
「桃毛のこうもり猫ですよ。今度僕のペットになりました」
かなり怒り混じりな声で尋ねる西条に、やけににこやかな顔で答える西園寺。
 腕の中にはしっかりセバスチャンが抱かれている。
「そいつ、あのバイヤーの使い魔だろう?なぜ?」
「気に入りました。既に契約は済ませてあります」
西園寺は上着の袖をまくって見せた。そこには契約の際刻まれる清明判が刻まれている。
 一度正式な契約をなしてしまえば、そう簡単に契約を破棄することは出来ない。通常はどちらかが死ぬまで、契約は続く。
「勝手なマネを!」
「ほっといたら殺してたでしょ?」
「当然だ、敵だからな」
「そんな可愛そうなことは出来ませんよ。セバスチャンだってこうもり猫といえど猫は猫ですから」
こうもり猫は続にいう合成生物(キメラ)が己の確固たる意思を持ち時を経て、妖怪化したものである。元をたどれば化け猫の親戚のようなもの、確かに猫は猫である。
「こいつは俺の『ペット』です。誰にも文句は言わせませんよ」
『なぁご』(訳。そうやで。タケルはんはわての主人になってくれたんや)
「・・・そうか」
西条は仕方ないな、と頷くと、セバスチャンに手を伸ばす。
『びぎゃー』(訳。な、なんや、おっかない顔して何する気ぃや)
おびえるセバスチャン。その頭の上にそっと手を置く西条。
『・・・こいつの事頼むぞ。守ってやってくれ』
それはセバスチャンの頭に直接響いてきた。続にいうテレパスというものである。
 もともと西条にもテレパス能力はあったが、人間以外の意思あるもとテレパシーを交わせるようになったのは、死津喪比女との一戦以来である。
 あの時人口幽霊一号に一時的に霊波を増幅されたことが、テレパスの新次元を発現させるきっかけになったのだろう。最も普段は使うことなど滅多にないが。
『みゃみゃみゃーぉーん』(訳。絶対裏切らへんよ。タケルはほんとにええ奴や。いざっちゅうときは命かけて守ったる。安心してや) 
『そうか。おまえ、人を見る目在るかもな』
『なぁーご、なぁ』(訳。あたりまえやん。あんの馬鹿ども見てたさかいに、ええ奴と悪い奴の区別ぐらいはつくようになったわ)
『ふん、物の怪の割によく吼える』
『にゃぎゃ。にゃーご』(訳。ほっといてんか。それとわての名はセバスチャンや。よろしゅう頼むで)
「西条さん、こいつの言ってること分かるんですか?さっきから頷いたり笑ったり」
「ん、まぁな。テレパスの応用だよ。お前もそのうちできるようになるさ」
「出来たら面白そうですね」
『ふぅぅぅ!!!』
その時である。突然セバスチャンが唸り声を上げる。
『どうした?』
『ふぎゃ、にぎゃぁ』(来るで!気合入れとかんと!)
「はっはっは。まさかその坊やが額田を倒すとは思っても見ませんでしたよ!!!」
スーツの襟を正しながら、男が悠然と歩いてくる。しかしその態度とは裏腹にものすごいプレッシャーが二人と一匹を襲った。
「しかし額田のこうもり猫をて手懐けるとは思っても見ませんでしたよ。それでも忠誠心はなかなかのものでしたからね」
「・・・」
「ま、しょせん、GS崩れの額田じゃ、期待の新人君は手におえないってことですね!」
言い放った瞬間、バイヤーの埋もれた木の土台とドラム缶の山が炎に包まれる。
「きさま!!」
西条が慌てて吸引札を炎に向かって投げつけた。燃える瞬間、爆風とともに低級霊共が四散する。横島が大樹と相対したとき使った手である。
 炎をまとった土台とドラム缶が吹き飛ばされ、炎を払った。
「む・・ぐぁぁ・・・」
しかし、すぐさま炎を払ったとはいえ、バイヤーの服は燃え、背中に重度の熱傷を負っている。
「む?」
バイヤーが生きていることを確認した西条が、男の姿を追う。
「ふははは。面白いことをする男だ!!」
男は爆風にまぎれて数十枚の咒符をばら撒いている。
「オン!」
気合とともに咒符が一斉に西条達の周りを円を描いて飛び回る。
「何だ!」
「この何万嶺(カモンレイ)の何家伝来の符術、古来より魔を払い、仇なすものそのことごとくを屠ってきた!敗れるものなら破って見せよ!」
符は回りながら徐々に西条たちに迫る。
「くそ!」
西園寺がナイフで符を払おうとするが、符は落とせど落とせどその数を一向に減らさない。
『なぁご、にゃーご』(やばいでしかし。これはほんま)
「大丈夫だよ。怖がらなくていい」
西園寺は言いながらセバスチャンを懐に入れる。セバスチャンはそこから顔だけをひょこっと出した。
「無駄だ、西園寺。この中に本物はそれほど混ざっちゃいない。幻だ!!」
「それが分かった所でどうするのだね?西条君?」
「見極める!!」
西条は黙って仁王立ちする。
「無駄だね。無駄無駄。私の符術、いや2000年の歴史を誇る我が伝来の符術を見破ろうなんぞ100年早い!!」
 符が一気に迫る繰る。
 西条はにやりと笑ったままそこに立っている。

続く

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