ザ・グレート・展開予測ショー

『解放』


投稿者名:Nor
投稿日時:(98/ 1/18)

#Norで御座います。いや、あのですね。ちょっと思い付きましたんで、
#書いてみます。なんだかルシオラな話ばっかだな(^^;)

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「ルシオラ・・・そうか、それがお前の選択か」
 アシュタロスはまず目映いほどの光に包まれたルシオラを見、そして自分の胸に深々と
突き刺ささっている『蛍槍』を見つめた。その顔には、どことなく自嘲的な雰囲気が漂っ
ていた。
「まあ、いい。これもまた、事象の結果、神の認めざる因果律、その一つなのだからな」
「申し訳ありません。でも、私は・・・」
「全てを理解した上での、行動なのだろう?」
「・・・はい」
「あの、男か?」
「はい」
「そうか・・・」
 巨大化したアシュタロスの全身を覆う魔気が、消滅した。あちこちの皮膚が石化し、白
色の石質が体を覆って行く。
「私の作った『道具』の出来は、悪くなかった、よう、だ・・・。ふふふ・・・ふふふふ
ふふ・・・・フハハハハハハハハハ!!!」
 空気を震わせるような、アシュタロスの笑い声が空洞内に響く。だが、徐々にその笑い
は弱まり、ついに、その全身が石に覆われた。アシュタロスは、死んだのだ。
『ルシオラ!』
 その声に、ルシオラは、『蛍槍』を突き出した姿勢のまま、ゆっくりと振り向いた。
遥か眼下に、横島の姿があった。
「ヨコシマ・・・」
 横島は叫んだ。
『もういい! もういいんだ! さあ、降りて来てくれ! 戻って来てくれ!』
 ルシオラはにっこりと微笑い、そして、ゆっくりと首を振った。ルシオラの体から発す
る光が、弱まっていた。
『ルシオラ!』
「駄目・・・私は、造り主に反逆した・・・アシュタロス様を、倒してしまった。アシュ
タロス様の存在を、停止させてしまった・・・」
 ルシオラはちょっとアシュタロスの方に振り向き、ふたたび横島に顔を向けた。
「もう、私は存在しないのよ」
 ルシオラの体から、輝きが消えた。同時に、ふっ、と力を失い、両手は『蛍槍』から離
れ、ゆっくりとその体は落下する。
「ルシオラ!!」
 横島はその下に駆け寄り、両手を突き出した。だが、ルシオラの体は、横島の手を擦り
抜け、床に叩き付けられた。横島は両膝と突き、その体を掴もうとした。無駄だった。ま
るで幽霊に触るかの様に、横島の手はルシオラの体をくぐりぬけた。ルシオラは、力なく
笑った。
「ル、ルシオラ!?」
「駄目よ。私は、幻影なのだから」
「ルシオラ?」
「お前は、優しい・・・」
「しっかりしろ。な? 寿命、延ばしてやるって、言ったろ?」
「月並みかもしれないけど、楽しかった。他になんて言えばいいんだろう。やっぱり、
経験不足なのか、な」
 ルシオラは、もう一度、ふ、と笑った。その姿が、ゆらいだ様に見えた。まるで、ホロ
グラフィか何かの様に。そして、かき消えた。
「ルシオラッ!!」
 ころり、と彼の膝元に何かが転がった。そっとつまみ、掌に載せる。小さなホタルだっ
た。ぴくりとも、動かなかった。
「ルシオラァァァァッ!!!! う、おおおおおおおおおぉぉぉっっ!!!」
 横島は、絶叫した。そして、その場に力なく、へたりこんだ。

 どれほどの時間が経ったのだろう。そのままの姿勢で、横島はそのホタルを見つめてい
た。
 ぽつり。
 横島の顔に何かが当たった。横島は、上を見た。石像と化したアシュタロスの表面
に幾つものひびが走っていた。がらり。破片が次々に剥がれ落ちる。横島は立ち上が
り、身構えた。
『すべては、終わりました・・・』
 厳かな声が、それでいてどことなく優しい声が響いた。石像から光が洩れていた。
「・・・・!」
 そして、そこには一人の女性が立っていた。といっても、背丈は彼の5倍はあろうか。
「お前は・・・」
『女神、アシュタロス』
「なんだって!」
 アシュタロスとなのった女神は、横島を優しく見下ろしていた。
『私は、もう一人の私に押さえられていたのです・・・。近代宗教が作り出した、悪の
存在としての、もう一人の私・・・。その、もう一人の私は、求められた悪を演ずるべ
く、今日まで存在していました・・・』
「・・・・・」
『私には物言うことが許されないかもしれない・・・でも、一つだけ言わせて欲し
い・・・。ありがとう・・・』
「ルシオラを、返してくれ」
 横島は、ぽつりと言った。
「ルシオラが、いなくなっちまった。ベスパも、パピリオも、いなくなっちまった・・・
みんな、いいやつだったのに・・・」
『・・・ルシオラは、もう一人の私が、真魔アシュタロスが創り出した存在なのです』
「・・・」
『私に、ルシオラを創る事は出来ない・・・たとえ出来たとしても、それは、あなたのル
シオラではない』
「そんな・・・」
『だが、悲しむ事はありません・・・真魔アシュタロスは、ルシオラを創った。だが、産
み出した訳ではありません』
「?」
『彼が行ったのは、諸物の呪縛・・・ルシオラという存在の、呪縛を行ったのです。彼が
私に戻る時、呪縛は解き放たれる・・・』
「それじゃあ、意味が無いんだ! 一匹の、ただのホタルじゃ駄目なんだ! ルシオラで
なくては、意味が無いんだ!!」
『・・・呪縛は、消えます』
 その時だった。横島の掌の上のホタルが、突如光り出した。思わず横島は片手で目を覆
った。
「うっ?」
『全ては、解き放たれるのです』
 一瞬、空洞内が目映いせん光に満たされた。何も見えない。そのとき、横島は片手にず
しりと重みがかかるのを感じた。
 光が、消えた。横島は、恐る恐る、目を開けた。腕の中に、一人の少女がいた。
「・・・ルシオラ?!」
『ルシオラではありません』
「?」
『真魔アシュタロスは、命を産み出す事は出来ません。彼は、呪縛を行う事しか出来ない
のです。命は、私でなくては産み出せない・・・』
 横島はその少女を見つめた。顔は、どう見てもルシオラだった。だが、一つの変化に横
島は気付いた。触角が、無い。
『私には、多数の従者がいた・・・そして、私の従者は、すべて、人間・・・』
「・・・」
『その少女は、遥か過去の、私の従者の一人・・・。自然の中に生を享け、生きたが、不
幸にも若くして死にめぐり合ってしまった者。その心の清さゆえ、私が新たな生を与えた
一人』
「まさか・・・」
『私が眠り、彼が目覚めた・・・彼は、同様に眠った私の従者たちを、必要に応じて、自
分の望む姿で出現させた』
「そう、だったのか・・・」
『そうです。ルシオラも、ベスパも、パピリオも。人間だったのです』
 腕の中の少女が微かに体を動かした。
「・・・! ルシオラ? ルシオラ?」
「・・・ん・・・。 ヨコ、シ・・マ・・・?」
 横島は、力いっぱい、少女を抱きしめた。女神は、消えていた。

 地下基地内の瓦礫の間から、二つの人影が起き上がった。一人は、かつてベスパだった。
一人は、かつてパピリオだった。3人は、呪縛を解かれたのだ。

 女神は、従者に声をかけた。
「ドグラ・・・行きますよ・・・」
「は・・・」
 従者は、女神につづいた。が、一瞬とどまると、もう一度振り返った。遥か前方に横島
たちの姿が見えた。勿論、横島たちには呪縛を解かれ、神の眷属、従者としての姿を取り
戻した彼は見えない。かつて土偶の化け物だったそれは、横島たちの方に向かい、深々と
頭を下げた。

 *   *   *

 某方面からの圧力の結果、戸籍簿に3人の女性の名前が書き加えられた。日本国の公式
人口が、3、加算された。うち一人の書類には、本年度都内の某高校に編入、とある。

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#さて、どうだったでしょうか。Norとしては、個人的には嫌いじゃないんですけ
#ど・・・。
#つまらない? あああ、言わないでっ。
#というわけで、さきほど投稿したアシュタロス女神説からの展開でした。ほんとは
#ルシオラの意識が戻ったところで止めたかったんですけど、他の面子の顛末も書き
#たかったもので・・・結構終わりが長くなってしまいました。はい。でも、結構幸
#せな終わりでは無いかと・・・。
#ところで、呪縛を解かれたルシオラは、どんな格好だったのかなぁ。地味な布の衣
#服でもいいんですけど、生まれたままの姿の方が受けがいいかも(殴)。・・・そ
#れでいいです(^^;)。
#でぃは、また。たまにはおキヌちゃんな話とかも書きたいなぁ・・・。と呟くNor
#でした。



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