ザ・グレート・展開予測ショー

ありがとう(その10)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/ 1/29)

そして数時間後ー
その病院に三人はついた。
鼻につく独特の薬の臭いとどこか不自然な清潔さのただよっている内部。
闇の中・・で
音の無い部屋
もうそこには美神の目的としていた人物は居なかった。
いや、人物のぬけがらしか無いと言った方が正しいだろうか?
そのコの母親はついさっき息を引き取っていたのだ。
不治の病といわれて苦しんだと聞いた割には驚くほど安らかな死に顔だった。
最期の言葉は
   「ありがとう」
である。
聞こえるか聞こえないか位の声で嬉しそうに言っていたらしい。
子供を捨てるはめになって自らは不治の病に侵されて苦しみの果てに見もしらぬ医者にみとられる人生の最後の言葉が「ありがとう」である。
くっと
唇をかみしめてもうすこし早くきてればと美神。
いうべき言葉を見つけきれずただ沈黙する横島。
そしてじっとその死に顔を見つめるおきぬ。
その表情はどこか・・・悲しいというよりは・・辛そうに見える。
「・・・どうしてですか・・」
とぽつりとおきぬ。
「なにが?」
と美神。
「どおして置いていっちゃうんですか・・死ぬ前もしんでも・・一人成仏して・・なのにありがとうって・・・まだあのコは待ってるのに・・・死んで自我がなくなっても・・・・待ってるのに・・・」
その言葉には深い深い悲しみが見えた。
美神はああ・・と思う。
ああ・・このコもこんな思いを抱えているのだと。
いつも明るくて優しいなんの悩みもなさそうに見えるがその心の奥に苦しみを抱えて生きているのだと。
「・・・待ってたのに・・」
それは誰の事だろうか?
「おきぬちゃん・・」
と美神。
「分かってるんです・・人が死んだのにこんな風な考え方しか出来ない自分がいやなんですけど・・でも、どおして・・逢ってあげれないのかなあっておもっちゃって」
透明な雫がおきぬの頬を濡らす。
美神はそっとおきぬを抱きしめた・
なきじゃくる子供をあやすようにー
「・・み・・みかみさん?」
しゃくりあげながらおきぬ。
「多分しらないからよ。」
と優しい・・優しい声で美神。
「え?」
「その母親は残されるのが待つのがどんなに苦しいのか知らないから、捜すのが、逢いたいって思いつづけるのがどんなにしんどいのか知らないからね・・」
「しらない?」
「そう、これは多分体験しないと分からない」
現に自分も体験した。
「・・・・・・・・そうですね」
とおきぬ。
「ほんとうは、その母親が生きてるうちに自分の子供がこの世に未練残してるっていってやってこの世に縛りつけてまとめてあっち側に送ろうと思ったんだけど」
そしてそう一人ごちる。
「え・?」
とおきぬ。
「ん?何?」
と美神。
「・・・・・・えっと」
「おきぬちゃん何も言わないほうがいいぞ美神さんの外道な方法は今に始まったことじゃないから」
と何かを悟ったように横島。
「なにか言った?」
と美神。
「・・・・・・・・・いえ特に大したことは」
・・・・さすがにこの場でしばかれるという事はなかったが病院を一歩でた瞬間横島はぼろ雑巾のようになっていたらしい。
つづく
・・・・・・・しりあすに耐え切れませんでした(平謝り)

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