ザ・グレート・展開予測ショー

オカルトG−メン西条の事件簿。第三章


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 1/29)

 旧第十七倉庫は予想していたよりも小奇麗だった。
 確かにここ数年は利用されてはいないはずだったのだが、どうもそれが誤報だったようである。明らかに人の出入りを予想させる。
 白のセダンは入り口、鉄の引き戸の前で止められている。
 人の気配が予想以上に多い、いや予想だにしない状況だった。これは明らかにわなである。
 「しくじったな」
西条はもはや苦笑いをするしかほかに道は無く、逃げるでもなく黙って車を進めた。
 既に後方は数台のアメ車で固められている。
 西条達の車ではそのバリケードを突き破ることは出来ない事は無いが、体がついて行く保証は無い。
 そんな危険な賭けに乗るよりは、応援が来るのを待ったほうが良いだろう。
「完全にばれてたって訳ですか・・・」
西園寺君はいまさらながら恐怖で小刻みに体を震わせた。
「相手が一枚上手だったって事だろう?いまさら慌てても仕方ない」
胸ポケットからタバコを取り出しジッポで火をつける。
「ふぅ。どうやら相手を見誤ったらしいな。俺たちは」
「かなり大規模な組織だったみたいですね」
「ったく、うちの情報部もたまに大ポカやらかすからな。まあそれだけ手口が巧妙だったってことか。ふぅ」
西条は紫煙を吐き出すと、車をとめる。すると背後から人の気配が迫ってくる。
「捕まったらアウトだ。1、2の3で飛び出すからな」
ジャスティスを抜き放ち、リボルバーの撃鉄を上げる西条。
「了解」
両手に投げナイフを六本ずつ持った西園寺が頷く。
 オカルトGメンでは対人格闘術もみっちり叩き込まれる。その辺はとかく問題ないのだが、問題は西園寺君の実戦経験の少なさである。幽霊相手にできることでも生きている人間相手にできるか、その胆力があるかどうか。
「いいか、手加減するなよ」
「・・・了解」
「したら死ぬぞ、・・・1、2の・・・」
『3!!』
掛け声と同時にドアを開き飛び出す。
その時二人の目に飛び込んできたのは人ではなくゾンビーであった。
凄まじい死臭を放ちながら車のすぐ背後まで迫っていた。
その数ざっと30。
「ネクロマンシーか?気をつけろ西園寺!」
ゾンビーは基本的に動作が遅く、知能が低い。その代わり凄まじいまでの攻撃耐性がある。腕を飛ばそうが足を飛ばそうが襲ってくるのだ。
「滅びされ!屍人ども!」
いかにそのゾンビーでも西条の剣技の前では人形同然であった。ジャスティスを構えると
一息で三体ものゾンビーの頭を吹き飛ばす。
「・・・西園寺家伝来の手裏剣の技と母から受け継いだ破邪の力、とくと味わえ!」
手裏剣は忍びのものと思われがちだが、護身の技の1つとしても伝えられている。彼が受け継いだのもその1つだ。
(確かひょう、とかいってたような。本来は親指の頭程度のコンペイトウのような礫を投げつける技です)
西園寺は両手に構えたナイフをまとめて全部ゾンビーに水平に投げつける。
銀色の光を放ち空を滑ったそれはものの見事に数体のゾンビーに突き刺さる。
「食らえ!」
更に気負いをこめる西園寺。その瞬間ナイフが輝き、ゾンビーの体がぼろぼろと崩れ去る。
実はすべてのナイフには鋼線が結わえられており、ナイフが命中した瞬間、その鋼線を伝えて一気に霊気を流し込んだのだ。
「やるなぁ」
西条はそれをちらりと見て感心した。実は訓練では何度か観ていたものの彼の実践を見るのはこれが初めてである。
彼は予想以上に完成されたGSである。
そんな二人の超人的な活躍で、ゾンビー軍団はものの3分で全滅した。
「はっはっは。お見事ですね。オカルトGメンのお二人さん」
二人が一戦終えて一息つこうとしたその時、倉庫の中から人影が現れた。
「誰だ?」
端的かつ的確な言葉で尋ねる西条。
其処には堀の深い東洋系の顔の、紫色の趣味の悪いダブルのスーツで身を固めた中年の男が、無骨な笑みを浮かべていた。言葉のアクセントが中国系を思わせる。
「んふふ、そんな事はどうでもいいじゃありませんか。それより私の名をそんなに知りたいですか?いいですよ。その代わり命をいただくのが我が一族の流儀ですが」
紳士ぶった口調の中に、明らかな残虐性が見て取れる。
二人はこの男に生理的嫌悪を覚えた。100年経っても彼を認めることは無いだろう。
「・・・霊能力不当使用の現行犯で逮捕する」
「やれますか?」
男は不敵な態度で、言った。
 
続く

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa