ザ・グレート・展開予測ショー

過去独白(マーロウ美神親子を語る) その8(最終章)


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 1/26)

さて、俺がしってるのは、これで最後だ。いいかな?
《はい、どうぞ、・・暖房お入れしましょう》
有りがたいね。あの喧嘩のあった次の日さ。今日の目覚し時計は嬢ちゃんの悲鳴だった。
「きゃーーー」
「ど、どうしたの?令子」
俺とママさんは急いで嬢ちゃんの部屋に向かったんだ。何があったんだ?
ボーゼンとしている嬢ちゃんの周りには髪の毛が散らばっていた。
「なに?これ・・」
「昨日の・・、あの時に・・」
あの赤ん坊のサイコキネスの風で髪の繊維が斬られてたんだな。
「ママァ」
最近にしては、ポロポロと大粒の涙を流してから、ママさんの胸に抱きついたんだな。
「可哀想に、女の髪は命の次に大切なのに・・・」
はぁ。ソンなものかね。俺と同様で人間の言葉を理解していた猫もそんな事持ってたな。
-しかし人間とは己の体毛に執着する、毎朝櫛でやれ7:3だの- 名前の無い我輩って奴。
で、学校へ行かずに美容院にいって髪を短くしてな。嬢ちゃんげっそりしちまってな。
それから、嬢ちゃんの取巻きも一人減り、二人消えてな、嬢ちゃんは又一人法師にな。
結局普通の人間は霊能を持ってる人間を怖がれるんだよな、危ない目にあったしなぁ。
嬢ちゃんの空笑いすら消えちまってよ。終止ブスって来てるんだ。寒々となったな。
家中の電気が消えたような夜によ。俺はママさんの晩酌を付き合ったんだ。
「ふぅ、令子ってきたらさぁ、ねぇマーロウ」
ワン。
「年頃の娘って難しいわね」
そして、強い酒・・いや、最近弱まったのか同じメーカーの軽い奴に変えたんだっけ。
「あの子、私の手だけじゃ駄目なのかな」
そうかね?俺の目には少なくとも悪いお母さんはやってないと思うが?
「男親が近くにいないのって、大変よね」
だが、公彦のヤロウは嬢ちゃんに会いたがらないだろうし、嬢ちゃんも・・。
「そうね。あの人が可哀想よね。御互いにさ」
実際日本に来ても御互い会わないから、憧れる思いが嫌悪感に変わったのもこの頃だな。
「それにね、マーロウ、最近私は魔物に狙われてるみたいなのよ?」
魔物、たぁいったい?
「かなり強力な奴みたい。しかも複数ね、このままじゃぁ」
ママさんも自分の身で精一杯になりそうだと・・いや、もう手一杯になっていると。
「令子、あのままじゃ伸びないわ。霊力を持った人間の狩が始まりそうなのよ」
嬢ちゃん危ないな。確かに力はあるが、使い方は全くのドシロウト同ぜんだからな。
「西条君ももうちょっと、してくれれば・・って言ってもね、あの頃は小学生だもんね」
俺にはどうしようもない。犬だからな。食っちゃ寝の生活が基本じゃねぇか。
ママさんその日はとうとう、其処で横になちまってな。俺が毛布を掻けようとしたら、
「シッ、マーロウ」
嬢ちゃん。
「ママ、ゴメンね」
上から毛布を持ってきて、ママさんにかけてから、軽く頬にキスして電気を消したんだ。
「おやすみママ、マーロウ」
暗闇の中、微かだが塩水の匂いがした。ママさんの流した涙だったんだろうな。
だがよ、救いの手は有るんだよな。その日は日曜日、天気もいいのに嬢ちゃんは部屋さ。
「令子、令子」
「なに?ママ」
「ちょっといらっしゃーい、出かけますよ」
不承不承付いて来る嬢ちゃんを連れ出したところは少し遠くの教会だった。
「ママってクリスチャンだっけ?」
「ちがうわ。でもすっごくいい知り合いがいるの」
「知り合い?」
「そうよ」
けして豪奢とは言えないその教会の中に入る。重々しい扉もすんなりと開く。
「おや、何方ですかな?」
神父さんが一人、ミサとやらの片付けをやっていた。
「御久しぶりね。唐巣さん」
「美智恵君か!」
あとで聞いたんだが、ママさんの師匠にあたるって訳だ。以外と若いじゃねぇか。
「これは・・・驚いたね。最近日本に帰ってきたから教会を立てたんだ」
「私の方が驚きよ、お金にはルーズだったのに本当に立派な教会をねぇ」
「褒める事ないさ。ぼろっちい建物だよ。ようやく建てられたって程度だからさ。」
「そんなのわかってるわよー」
「・・・相変わらずだね。君は」
師匠様にタメ口を話しながらでも神父さん怒るわけでもない、案外惚れてたのかもな。
「でね、唐巣さんに御願いがあるの」
「何かな?・・予想はつくがね」
「えぇ、これ、あたしの娘、令子って名前よ。ちなみにこれはマーロウ」
「・・・・よろしく」
「はは、これはどうも、僕は唐巣和宏、こう見えても本職はGSさ」
「そうなの、にしては、貧乏そうね」
「こ、これ、令子、唐巣さんは、お金に無頓着な人なの!普通はもうかります!」
何言ってんだ?ママさん。
「で、この令子ちゃんの監督を僕に押しつけるのかな?」
「おしつけるって・・御願いするだけよ。出来ればロハでぇ」
結局おしつけてるな。でもママさんがこんなにまで甘える神父さん只者じゃない。
「まぁ、いいですよ。令子ちゃんもよろしくね」
「そうよ、令子からも御願いしなさい」
「・・・・令子いいよ、別に、」
「美智恵君、同意の元に来なかったのかい?」
「オ、オホホホ」
「笑って誤魔化すなよ」
ママさんが笑ったとき、入り口から悪霊が飛びこんで来た。
「ちぃ、私を狙ってる奴ね、チャンスと思ったのかしら?」
俺も戦闘態勢になるが、嬢ちゃんは教会の奥に逃げていく。
「令子ちゃんはここにいなさい」
で、俺にママさん、それに今回は頼もしい助っ人がいるんだ。
「魍魎退散!!」
「アーメン」
ワン!!
こうやって手語ると、俺もなんか決め台詞ほしいなぁ・・ワン、だもんな・・。
たいした事もなく、そいつは御陀仏になっちまった。
「美智恵君、今狙われてるって?」
「えぇ、そうなの。やんなっちゃうわ」
「そうか・・正直乗り気じゃなかったが、いいだろう、私が預かろう」
「御願いね」
そういってママさんは、帰っちまった。
「さて、令子ちゃん、でてらっしゃい」
「・・・・・ふん」
「そうふて腐らないの」
「ねぇ、一つ質問があるんだけど」
「なんですか?」
「なんで、ママにあの時喧嘩した事言わなかったの?」
「神に仕えるものがイイツケするわけがありませんよ。いいですか」
「ふーん、まぁ助かったよ」
「何時でも来てください。歓迎します。ついでに霊能修行も教えますよ」
「でもあたしは、ちょっと修行したけど」
「女の子が霊能に伸びるのはこれからですよ」
今までブスッとしていた嬢ちゃんの目が急に輝き出したんだ。顔も久しぶりに笑ってた。「それにね。これ以上ママさんに頼っては駄目ですよ、あぁ、マーロウ君」
と俺に顔を近づけて聞こえるかの小声で
(急いで、美智恵君の所へ行ってください、美智恵君、魔族に狙われてます)
な、なんだと!!俺は嬢ちゃんが呼びとめるのも聞かずに外に出た。
昼はあんなに晴れていたのに、今はドンヨリとしていやがる、雨がふりそうな程な。
雨よ、降るな!!匂いが消えちまう。
だが、無常にも小雨がちらついちまった。乏しい匂いを辿っていく。何分ロスしたか。
そして、何時ぞや嬢ちゃんが喧嘩したあの土手に辿りついたんだ。
『ギャ――――――――」
ママさん、
100匹は越えるであろう魔物の死骸だ。だが、最後の一人に心臓を付き抜かれていた。
ヤロウ、猿か!!俺はありったけの遠吠えで魔力をそいつの背後から浴びせたんだ。
『キー―」
猿のような魔物を顔から吹き飛ばしたんだが、もぉママさんは虫の息だった。
「・・マーロウ・・・わたしは」
駄目だ、何もしゃべるな!俺が誰か連れてきて・・・
その時空間の一部が歪んだ、新手か!
いや、奇妙な連中だったよ、そいつらが、ママさんに手を翳したら傷が一発で・・。
その奇妙な連中と何か話しこんでいる。
後で、本当に後でわかったんだが、あれは神様ってやつなんだよ。
そいつ等、ママさんの髪の毛を一本抜いてから、ダミー人形を作った。
死んでいたな。当時の俺に解る訳ないが、そいつ等の一人が言ったんだ。
『悪いが、彼女は死んだ事にしてください。いえ、私達が手を貸さないと死んでました』
俺は納得するしかなかった。
俺は言われた通りママさんは死んだ事にして神父さんの報告した。
葬式を教会で行ったが、公彦のヤロウは顔を出さなかった。参列者もすくなかった。
それから、嬢ちゃんは唐巣神父の所に世話になるんだ。
俺も最初は其処にいたんだが、どうも教会って所では肉を出してくれない。
それにな、GS犬として、俺を迎えたいって人がいたんだ。
誰とは言えない。だが、そいつは産まれた赤ん坊が霊能力者だってことで、
俺の力を必要としていた。それは神父さんも賛成してくれたし、
「貴方が傍にいると、令子ちゃんはあまえちゃうね、だからさ」
そうだな。嬢ちゃんにぴったりの保護者はいる。
俺が去ることを決めた事に嬢ちゃんは反対しなかった。自分の為とわかってたんだな。
嬉しいような、悲しいようなさ。神父の手ほどきも有って霊能科学校へ入学かなってな。

さて、俺が知っているのはここまでさ、
《有難うございました、Mr・マーロウ》
どぉって事ない、さて、じゃぁお前さんの番だ、それからの嬢ちゃんについて、
教えてくれよな。俺だって知る権利あるだろ? だが、今日はいいや。
もぉ疲れちった。歳を取り過ぎたんだよ。じゃぁな。
《いつでも御待ちしております》
今日も朝から天気が悪い、おや、雨が降ってきたみたいだぜ。

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これにて、過去独白、マーロウ編は終了ですが、あと一回、番外編として、
未来編を構想しております。お付き合いの程をよろしくお願いいたします。

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