ザ・グレート・展開予測ショー

オカルトG−メン西条の事件簿。


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 1/25)

 「いやぁひどい雨ですね西条さん」
西園寺タケルはかぶっていたコートを振って水を飛ばすと車に乗り込んだ。
西園寺タケル、西条とパートナーを組んで3ヶ月になる新人刑事である。
 にやけ面にベレー帽というなんとも印象深い姿の青年は助手席に座るとコートを後部座席にかけ、暖房をスイッチを強くする。
「おう、ご苦労さんだったな。あ、コーヒーくれるか?」
「あ、はい、入れてもらってきましたよ」
タケルは小さな水筒を西条に渡す。わざわざ近くの喫茶店でブルマンのブレンドを入れてもらってきたらしい。ブルーマウンテンのブレンドといってもブルーマウンテンの比率は0.5ぐらいの物で、よほど舌が肥えてない限りそれとは気付きもしないだろう。
「いや、すまんなわざわざ」
「いいんですよ、西条先輩。それより奴ら動きましたか?」
コンビニ袋からアンパンとミルクを取り出し、封を開けながら尋ねる。
「いや、動かないな。しかし張り込みなんて何年ぶりだろう?」
「あぐ、そうですね。普段の仕事じゃ滅多にないですからね、張り込むことなんて」
「君、しゃべるか話すかどっちかにしたまえ。しかし呪薬の不法売買のバイヤーの逮捕なんてのは俺たちじゃなく部下に任せればいいのに、美神隊長も何考えてるんだかな」
カップにコーヒーを注ぎながらぼやく西条。
「んぐ、で、そのバイヤーなんすけどね。データベースにアクセスしてわかったことなんですけどどうも悪魔飼ってるらしいんですよ。あ、一応プリントアウトしてもって来ました」
「ああ、そうらしいな」
プリントを受け取りながらしれっとした顔で答える西条。
「って、聞いてたんならもっと早く話して下さいよ」
つれないなぁ西条さんはと少しむくれるタケル。
「お前は張り込んで状況を知らせるだけでいいって言われただろ?」
「ええ、まあそうですけど」
「だったら知る必要はないだろ?」
「そりゃないすよ。俺だってやれます」
「資料見てどう思った?」
「・・・4分6分ですね。下手すれば逃げられるかも」
にやけ面が一転、真剣な顔になる。彼の判断はほぼ間違いない。ちなみに内訳はやるかやられるか、である。
「それじゃだめなんだよ。いいか、奴は人間1000人呪ってもお釣りが来る位のマンドラゴラを扱ってるんだ。そんなものさばかれでもしてみろ」
「この街の夜がもっと騒がしくなる、ですね」
「そういうことだ。これ以上事件が増えると折角のバカンスも台無しになる」
「僕なんかこの仕事初めてシエスタする間もないですからね」
ちなみに西園寺君の祖父はイタリア貴族で、3千エーカーの土地をもち、ワイン専用ブドウ畑との中生代に立てられた城を別荘として所有している。いわば西条君と同じ超金持ちである。
「そうだな。しかしやりがいはあるだろう?」
「そうですね父や母の親ばかにも愛想がつき始めてましたから」
「ははは、君の父上と母上の顔が浮かぶよ。タケルちゃん、危ないことはしてはいけませんよ」
「それは言わない約束でしょ・・・あ、西条先輩、奴が」
西園寺が指差した先。
 昭和中期に立てられたであろう、トタン屋根のさび付いたぼろアパートの一階一番手前の部屋から、中肉で上背のある、ラフな格好をした、おそらくは二十台後半から三十代前半の男が、黒のアタッシュケースを片手にふらふらと出て来る。
「行きますか?」
ガンベルトに手をかけ、ドアを開ける素振りをする西園寺を手で制する西条。
「待て。ペットを連れてない。おそらくあたりを探らせているんだろう、今出たら気付かれる。とにかく様子を見るんだ」
男はなおざりにドアを閉めると、一応あたりを見渡してから、隣の駐車場に止めてあった白のセダンに乗り込んだ。
「逃げられますよ!」
「黙っていろ。・・・一応ナンバー控えとけ。追うぞ」

 車は住宅街を抜け、オフィス街へと向かう通りへ入る。西条達の車は一定の距離を保ちながら後をつける。
「気付いてない?」
助手席の西園寺が、疑問をもらす。
「ああ。ペットはどこかに隠したか」
ハンドルを握る西条の顔が険しい。
「誘っている?、まさかな」
「気付かれてないんでしょう?」
「ああ、たぶんな。しかしそれにしては行き先が気になるんだよ。これを見てみろ」
左手で車戴PCの電源を立ち上げる西条。器用にコンソールを叩く。
「今向かっている先はここ、オフィス街だ。しかしそこを抜けると」
「旧十七倉庫ですね」
「奴がここでブツをさばいたという情報はない。いつもなら深夜から早朝に繁華街で商売をしてるはずだ」
「子供から年寄りまで、見境なくさばいてるみたいですね」
「ああ、しかも素人のやる呪いの儀式はかなり不安定だからな。この間も中学生の女の子が儀式を失敗して呪いを返され八つ裂きになって死んだそうだ」
「かー、たまんないすね」
「ああ、そんな事件が二度と起こらないよう、奴を逮捕しなくてはならないんだ。たとえこれが罠だとしても俺は行くぞ。君はどうする西園寺君」
「行きますよ、俺だってやれます!」
「はは、若いな。だが頼りにしてるぞ」
「はい!」
気合の入った返事に西条は満足して頷く。
そして車は旧17倉庫へと向かっていく。

続く




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