ザ・グレート・展開予測ショー

NERVOUS BREAKDOWN!!(4)


投稿者名:ブタクリア
投稿日時:(01/ 1/25)

屋敷を出ると、途端に騒がしい街への道が開かれる。
しかし、その道は一方通行の場合が多い。

いきはよいよい かえりはこわい
こわいながらも とおりゃんせ とおりゃんせ

不謹慎かつ無責任なことだが、雪之丞の頭には対象者の死は、既に無かった。
(……俺向きの展開になってきやがった)
今までの退屈な依頼の鬱憤が溜まっていたのだろう、黒い笑みを浮かべながら声のする方向へ、人の海を泳ぐように走る。

この街では、殺人の1件や2件、そう珍しいモノではない。
しかし、その断片に遭遇することは希な事である。
よって、雪之丞の追う女は、鈴の音の中に色の違う鈴を打ち鳴らすように、人々の声を引きずりながら走るので、雪之丞はその声の方向を目指せば良かった。

かといって、街の人々は警察に知らせるほどヒマではない。
人通りの無い所まできた雪之丞は女を見失った。
ゆっくりと肺の空気を入れ換え、気配を探る。
彼はこういったことが苦手であった、そこがいまだにGSとして一人立ちできない理由でもあるのだが
『余計なお世話だっ!!』
………非常識にもモノローグにツッコミを入れる雪之丞、しかし事実は事実である、が、天馬探偵事務所に勤めはじめてから、確実にその能力は上がっていた。
彼が言うところの「つまらん依頼」を投げ出さずにこなしてきたのは、自分を成長させるためなのだろう。

フレグランスの様な気配を嗅ぎながら慎重に進む。
いた。
取り壊された家の横の空き地、女は手にした包丁をじっと見つめている。
気づかれぬ様、じりじりと間を詰め、彼の経験と勘が引いた線に達したとき、声を掛ける。
『包丁を捨ててゆっくりこっちを見ろ』
女は驚いて体が縦に弾かれ、雪之丞を見る。
『えっ!?あっ!あのっ!ちがうんです!ちょっと触っただけなんです!』『お前は、ちょっと触っただけで人間の腹が吹き飛ぶのか?』
乱れた髪と墨を塗ったような目の下のクマ、おまけに顔半分は赤黒いモノを被っているので、判別しにくいが、女の歳は10代後半から20代前半といったところか。
彼女は目を白黒させながら、雪之丞の言葉をゆっくりと脳に伝えたのか、次の言葉までに少し間があった。
『……あっ!コレなんです!包丁にちょっと触っただけなんです、なんか、渡されたんです』
『渡された?誰にだ?』
『え?あ?』
女の顔がさまざまな色に変わる。
困惑 恐怖 納得 否定 不安
『や、んと、やっぱり自分ののような気がします』
(………突然の出来事でパニクってんのか?)
『やっ!でも、ちがうんです!いや、あの、ちがわないかもしれないんですけど……』
彼女は空いてる方の手で髪をかき上げようとしたが、乾いた血液のせいで指がつっかえ、小さく「いたっ」と声をもらした。
『落ち着いて、何があったのか話せるか?』
『はい!落ち着いて!あっ、私ですね!? はい!大丈夫だと思うんです!はい、あ、やってないとも思うんです!あっ、信じてくれるます?』
雪之丞は内心「だめだなコリャ」と思いながら、まず彼女を落ち着かせることにした。
『とりあえず信じてやる。普通、包丁で人間をあんなには出来ないからな』
女の表情が明るくなる。
それは良い事なのだが、嬉しかったのか、落ち着き無さが増したようにソワソワしだした。
『落ち着け!』
『はい! あ、あの、………そうだ!良かったら、こんなとこであの、なんですから、家に来ましてみます?』
罠である可能性は高いが、雪之丞にはそれを承知で行くだけの好奇心と自信がある。
『………いいぜ』
女は「えへ へへ へへへ」と笑っていた。


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