ザ・グレート・展開予測ショー

ありがとう(その7)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/ 1/25)

その12美神令子事務所(5)
抑揚のない声。表情のない顔の美神。
(ん?)
と後ろから満腹になった腹をさすりつつ二人のやりとりを眺めていた横島が、虚をつかれたといった感じで美神をみる。
こーゆうらしくない善行をした時いつももっと照れ隠しに怒ったような顔をするもんだ。
なのにこの見事なまでの無表情。
らしくない。
と横島は思いおきぬの方に視線を移してみる。
だがファイルの方に気を取られてまだ気づいてない。
ぺらり
と音をたててファイルのページがめくられる。
そうしてページ数が進むうちに
おきぬの表情がさっきまでの嬉しそうなものから一変した。
そして予想していたかのように表情を変えない美神。
「・・・そんな・・じゃあ・・あの逢いにいくって言葉は・・」
と震える声でおきぬ。
「その通りの意味でしょう」
とにべもなく美神。
だが、どこか悲しそうに見えるのは気のせいでは無い。
「どーゆうことっすか?」
と一人話しについていけない横島。
と、ほれといって美神はおきぬと同じファイルが横島へ投げる
「をおっと」
ファイルは宙を舞って横島の手の中へと収まった。
そしてそのファイルをめくる。
コピー用紙の上の無機質の文字を目で追う。
最初は生年月日・身長・体重・死因などが書かれてあった。
だが・・そのコの家庭環境のところで横島のページをめくる手が止まる。
そのコは孤児だった。
赤ん坊のころ母親にも父親にも捨てられた。
孤児院で育ち、年下の面倒を良く見る優しいコであり学校が休みの日はおかあさんを一人捜していたと書いてある。
この少女の口癖はおかあさんに教えてもらったという
 誰でもしあわせになれる
という言葉。
・・事故に遭った日は自分を捨てた母親が自分に逢いたい・・と孤児院に連絡を受けた日であった。
少女は学校でその知らせをうけた。
少女は嬉しかった。
少女は早く逢いたくて、信号に止められるのももどかしくて、
だからいつもはきちんと待つ赤い信号を・・その日に限っては飛びだしてしまったのだ。
ただ、一刻も早く逢いたかったから。
・・・そして
「まだ逢いたくてあそこにいるって訳か」
ぱたん
とファイルを閉じ横島。
「・・逢わせたいです。」
と静かな声でおきぬ。
その瞳には涙は無い。
だが誰にも変える事のできない意思と願いがあった。
つづく
・・・おりきゃらちゅうかおりゆうれい?

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