ザ・グレート・展開予測ショー

リハビリSS 〜 mPの逆襲 〜


投稿者名:桜華
投稿日時:(01/ 1/23)

 それはある日常の出来事だった。ある平凡な学校で、一人の貧しい学生が、卵焼き一つのために三回まわってワンと言うか否かを真剣に悩んでいた時の事だった。
  ピンポンパンポ〜ン
 校内放送がかかり、
「除霊委員、除霊委員。至急、職員室まで来てください。繰り返します……」
 既に忘れていた自分の役職(非公認)を呼ばれたのは。




「で、今度はなんなんですか?」
「腹減った……」
「またなのよ」
「また?」
「卵焼き……」
「そう。また、音楽室のピアノが勝手にね」
「……なるほど」
「たんぱく質……」
「また、アイツなわけね」
「しつこいのー」
「養分……」
 以上、音楽教師に連れられて音楽室に向かう除霊委員一行の会話であった。




 音楽室についた一行。やはりと言うかなんと言うか、怪奇現象の正体は……
「メゾピアノ!」
「ふはははは。久しぶりだな、愛子君!」
 薔薇を咥えた自己陶酔バカであった。
「あんた、ピート君に負けたんだからもうちょっかい出すのやめなさいよね!」
「いや、あれは勝負ではない! まだ私は負けを認めてなどいないのだからな!
 ピート君!私は今一度、君に勝負を申しこむ!」
 勝負はまだだと言いながらもう一度と言う辺り、なかなか脳味噌が溶けているようだ。
「今度は負けない。ピート君、私は君を打ち負かす秘策を手に入れた!」
「なんじゃと!?」
「生意気言いやがって。おい、ピート! やっちまえ!」
「いいわねいいわね。青春だわ!」
「え? ボクがですか?」
「「「他に誰がいる?」」」
「とほほ……」




 かくしてピートはピアノを弾き始めた。だが、
「ふははは。聞かんな、ピート君。君の音楽は、所詮は音楽ではないと言う事なのだよ」
 この殺戮的不協和音の中、メゾピアノは平然と立っていた。
「な!? 一体、なんで…ってああ!!」
 耳を押さえつつ、愛子が叫ぶ。
「あいつ、耳栓してる!」
「「なにい!?」」
「フフフ。ばれてしまってはしょうがない。そうとも、聞く価値のない音楽など、聞く必要はないのだ。私の勝ちだな、ピート君!」
 勝ち誇るメゾピアノ。しかしその顔に、横島がびしりと指を突き付けた!
「メゾピアノ敗れたり!」
「なにい!?」
「ピートの音楽を聞く価値もないと耳をふさいだのだろうが、それ即ち、貴様がピートの音楽に耐えられないと言う事!」
「!!!」
「お前は既に、心でピートに負けているのだ!」
 ズッギャーー―ーーン!!!!(効果)
「そ、そうだった……」
 崩れ落ちるメゾピアノを見て、横島はやはりこいつもこのノリかと嫌気が指していた。
「ならば、これでどうだ!」
 立ち上がると、メゾピアノは耳栓を抜いた。
「さあ、来い、ピート君! このメゾピアノ、見事君の音楽を受け切って見せよう!」
 この時点で既に勝負は決していた。
「やったれ、ピート!」
「本気でいきんしゃい、ピートはん!」
「青春だわ!」
「わ、わかりました。では」




「ぎいやああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
 パリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリン!!!!!!!
 どがらがぐわどがしゃばらばどごしゃ!!!!!!!!




 説明すると。
 ピートの上級魔族もはだしで逃げ出す超超破壊音波によって、メゾピアノは断末魔の叫びを残して消え、窓ガラスは全て割れ、棚の楽器は崩れ落ちた。
 と、言うわけだ。
 もちろん、人間もその破壊の的から逃げる事叶わず。
「い、生きてるか、タイガー?」
「な、なんとか。横島さんは?」
「こっちも、なんとか。
 …………あれ? 愛子は?」
 消滅したかもしれないと思いつつ、二人は愛子の姿を探した。ほどなくして、楽器の中に埋もれる半透明の彼女の姿を見つけた。
「おい、愛子! しっかりしろ!」
「かなり衰弱してますのー」
「無理もない。直にアノ攻撃を食らったんだからな」
 小さなうめき声を上げ、愛子が意識を取り戻した。
「おお、気付いたか、愛子!」
「…………」
「ん? なんだ?」
「燃え尽きたぜ……真っ白によ……」
 それだけを呟き、再び愛子は意識を失った。
「こんな事で燃え付きんなーーー!!」
 無駄と思いつつ、横島は突っ込んだ。




 ある学校の、ある晴れた日の。
 それは何でもない、日常の一コマであった。
 余談だが、この時ピアノを弾いた少年は、その後二度と音楽室には入らなかったと言う。

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