ありがとう(その5)
投稿者名:hazuki
投稿日時:(01/ 1/22)
その9看板前(2)
「・・・よ・よこしまさん?」
とひっくりかえった声でおきぬ。
なんでこんなとこに横島がいるのか?
いつからここにいたんだろうか?
とそんなことがぐるぐる頭をまわる。
その姿にさっきまでの儚げな・・悲しそうな姿はない。
どうやら、横島は自分のかさをおきぬに差してくれているらしい。
呆けたように横島を見ているおきぬ。
横島はへらっとしまりの無い顔で笑っている。
「やっぱここだ」
「え?・・どーして」
とおきぬ。
横島はおきぬの疑問の声に直接答えず少し困ったように
「ど−でもいいんだけどおれらけっこう注目あびてんだよなあ」
といった。
確かにこの二人の姿なにも見えない人物からすると・・
変以外のなにものでもない。
「へ?」
とおきぬ。
横島は自分の傘をおきぬに持たせておきぬの傘をとると看板の上に・・というか幽霊のうえ(いる場所)におく。
そしてその幽霊とおきぬと同じように視線を合わせうーんせめてあと五年・・もったいないなあと呟いた。
その言葉には同情やら哀れみといった感情はふくまれて無い。
ただ純粋に惜しんでるといったかんじだ。
おきぬは横島の言葉に苦笑する。
横島はそう呟くと立ち上がりおきぬに
「帰ろう」
と言った。
おきぬは・・うれしそうに頷いた。
雨はまだやまない・・だけどさっきより少しだけ温かくおきぬは感じた。
その10事務所への帰り道。
「本当にいいんですか?」
とおきぬ。
「ん?別にいいよおれ雨に濡れんの嫌いじゃねーし」
と横島。
おきぬの傘は看板前に置いてきた。
この二人には横島の傘一つしかない=あいあい傘だとおもわれるだそうが、横島の傘はどうやっても人一人分はいるかと言うくらいであいあい傘なんぞした日には二人とも濡れる=横島は自分の傘をおきぬに貸し出しているのだ。
そしておきぬは人の好意は素直に受け取る人間なので今こうなっているわけである。
事実横島には霧のように柔らかい雨は不快ではなく心地が良かった。
おきぬはしばらく無言でくるくると傘の柄の部分をくるくる回していたがぴたりとその動きを止めそして意を決したように
「あのさっきはすいませんでした・・」
いった。
「なにが?」
と横島。
ちなみにとぼけている訳では無い。
本当に謝られる理由がわからないのだ。
どちらかというと日ごろの行いからも横島のほうが謝らないとだろう。
「・・さっき・・あのコのことで我侭いって」
とおきぬ。
「本当にだめですね。ちゃんとわかってたのに困らせるって」
傘のせいで顔が見えない。
横島は無言でおきぬの傘を少しだけ後ろにずらす。
「え?」
とおきぬ。
おきぬの前には横島の顔がある。
ぽたりと前髪から雨粒がおちた。
「そんなんいったら美神さんなんか俺やおきぬちゃんに何回メーワクかけてるか数えるだけでも恐ろしいってなのに謝りもしないぞあの女。」
と横島。
「そんなっそんなことないです。美神さんがそーいってくれるの私なんか嬉しいです」
とものすごい勢いでおきぬ。
「んじゃ美神さんもそーやろ」
「へ?」
「じゃあ美神さんもそーおもってるだろ」
といって横島は笑った。
滅多にみせない・・優しい顔で。
そしてなにごともないかのように前をまた歩く。
じわりと目頭がさっきとは別の意味で熱くなる。
たぶん横島はなにも深く考えてるわけでは無い。
ただその時そうおもったから言っただけだ。
慰めようとか、ごまかそうとか思わずにそんな風におもってくれた事が嬉しい。
(・・・・・・大好き。)
「そーいや美神さんがすきやき食べたいってあつかんつきで」
と思い出したように横島。
「すきやき?ですか?」
とおきぬ。
「で、作ってくれたらできる限りはするってさ・・って俺がおきぬちゃん捜しにいく前にすでにどっかに連絡してたけどなー」
素直じゃねーよなと横島。
ぱしゃっとできたばかりの水溜りをよけながら横島はその時のことをおもいだしてるのか肩を震わせわらっていた。
そしておきぬはもうこれ以上ないくらい嬉しそうな顔でとびきりのすきやきの作り方を思案していた。
つづく
・・・おきぬちゃんどころか横島まで偽者か・・・
・・・・・・・・・・・・・ふう(とおい目)。
今回すこし明るい?
今までの
コメント:
- 四季さん
いやーもうコメントありがとうございます♪
ってしみじみ・・・じみじみでは無く?いや今回・・・なんかみんな変でこまってます
うー・・やっぱいろいろやってみようとか思うからいけんのだろうか自分? (hazuki)
- トシさん
こんな行動でした。
所詮この程度しかかけません。
大好きあたりでもう自分死んでました(笑)。
・・・もうちょっと修行しなおします (hazuki)
- AJ−MAXさん
コメントありがとうございます
なんかそういってもらえると嬉しいです。
の割には・・いいんだろうかこんな続き・・あう。
いや、AJ−MAXさんの頭(?)まじほしいよおお。
・・・・・だれかくれ(なにをじゃ) (hazuki)
- 極上のチョコレートを堪能している気分です。
(あたしは、今お酒を呑めないから食べ物で)
さっぱりとしているけど、味の濃いやつで。
それはそうと、すき焼きたべたいなー。 (トンプソン)
- 変ちゃいますってー(w
横島もおキヌちゃんも自然体で、傘のドミノ倒し(?)なんか笑っちゃいました(にこにこ
なんて言うんでしょう、家族的な関係?
一つ一つの台詞があったかかったり、相手のことよく見てなきゃ言えない台詞ばっかりで。すっごい好きです。
あと、「雨はまだやまない・・だけどさっきより少しだけ温かくおきぬは感じた。」
とか「そしておきぬはもうこれ以上ないくらい嬉しそうな顔でとびきりのすきやきの作り方を思案していた。」とか,印象的なフレーズ多かったです、今回は特に。
もう、本当にこのお話大好きです。
がんがん色々やっちゃってみてください。何事も突撃あるのみ、なんちて(笑
ではー。 (四季)
- Ihoilさん
コメントありがとおございます♪
ふふふふ(怪)
じつはにでものとはまっちょだんでぃだったんです
・・・ファスナーの中にはまっっちょだんでぃ(笑)。
あ・もう描写とか考えるのは自分の実力じゃむりだなあと思う今日この頃 (hazuki)
- いやいや、いーですよっ。
シチュエーションとキャラの心情がマッチしていていいカンジじゃないですか。
お互いほとんど完璧に相手の心を理解していないとこの雰囲気は出ないでしょうね。
「我侭言って〜」のセリフから(……大好き。)にいたるまでの個所について特にそう思います。
うーん、こいつら分かり合ってるなー。 (AJ−MAX)
- 実に自然体で、何処までもいつも通りのスタンスを崩さずに、それでも滅多に見せない笑顔を向ける横島。
また、そんな横島を、そんな横島だから素直に好きと思えるキヌ。ごく自然に。ごく当たり前のように。たとえ、横島がこの思いに気が付かなくても、やっぱり私は……。
うーん、男性からみても実に魅力的ですね、彼女。もう横島の鈍さがが憎たらしくなるくらい(笑)。はっ、そういえば今hazukiさんの皮を被っているのはまっちょ……はうっ!(以下、通信断絶) (Iholi)
- ええじゃないですか!!
おキヌと横島・・・
そういえば俺の作品ってそんなんばっかし? (トシ)
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