ザ・グレート・展開予測ショー

過去独白 (マーロウ美神親子を語る) その3


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 1/22)

嬢ちゃんと一緒に日本に帰ることになったのにはやっぱ公彦の病気のせいだ。
小さい時はパパ、パパと単純に甘えてただけだが、最近顔をしかめる事が多くなったな。
外は大雨だったんで、俺は嬢ちゃんの部屋にいた。嬢ちゃんのママは絵本を読んでたさ。
「・・で、王子様は素敵なお妃さまといつまでも、幸せにくらしたとさ オシマイ」
まぁ、なんていうかな。人間はあんな食えない物に夢中になるんだ、解らねぇんだよな。
物語とやらの力で嬢ちゃんはスヤスヤ夢の中さ。そンの中で、お妃様になってるのかね?
「あらら、もうねちゃってたのね。うふ、私に似て可愛いわね」
バカオとと、もとい、親ばかって奴だな。ママさんが出てから俺も一眠りさ。
俺はずっと雨だったんでたっぷりと昼寝をしてたんで、話し声に目を覚ましたんだ。
一度は無視して目をつぶったが、その話し声は蜜の味、秘密の話で興味を持た聞いてた。
「そうあの子の思考も解るようになったんだ」
「あぁ、そうだな」
「ホント子供の成長って早いわね。この前喋り始めたと喜んでたのに」
「あぁ、俺なんかつい昨日産まれたんだよな、って思っちまうよ」
「だが、あの子は自我を持ち始めてる・・・・」
公彦はイスに座って、ママさんはベットに胡座座りで話こんでな。今は沈黙の時だよ。
寝巻き姿で髪を梳いてる姿はやっぱ美人だなって俺も思うぜ。譲ちゃんも美人になるな。
「貴方。方法はないの?」
「あの子も大分物を考えるようになったからな」
「そう、あたし、あたし・・」
「我侭は言わない約束だぞ」
「せめて、同じ国に別居するとか」
「いや、あの子には日本で生活させるべきだ」
「でも・・・・・」
「これは、ずっと前、結婚する時に決めた事だ!!お前は令子を連れて日本に行け」
「・・・・・・・」
公彦は珍しく酒を呑んでいる。ママさんと違ってあいつは弱いのに。ウイスキーって奴。
酒好きのママさんはうつむいて前足・・、と人間用語『右手』の親指の爪を噛んでいた。
「解ったわ」
ガジガジになった爪をジッと見つめてたが、決然と言い放った。やっぱかっこいいね。
「ありがとう」
赤くなった顔に公彦の目には涙がポロポロ毀れて来た。ヤロウも脱腸の思いなんだな。

「ねぇ、マーロウ 令子ね、日本ってとこにかえゆんやて」
次の日俺は嬢ちゃんに散歩させていた。嬢ちゃんは俺を散歩させてると思ってるだろう。
まぁどちらも真実だ。そン時にポツリと俺に言ったのさ。
「令子ね、玲子のパパにきらわれてるのかなぁ」
な、何だと?嬢ちゃん、それは違う、断じて違う。あいつは病気なんだ!!
「ママはね、令子のパパが病気だから近寄ったら駄目っていゆの、でもパパ元気やし」
違う!断じて違う・・・あいつは病気なんだよ、解れよ、嬢ちゃんだかコン時の俺は
『ワンワン、ワンワン・・ワンワンワン・・・!!』
と吠えまくっちまったモンだから嬢ちゃん泣いちまってな。取り付く島もなんとやらさ。
だがよ、逆を返せば、心が整理されていない時、俺はひとつの賭に出た。
嬢ちゃんのおでこと俺のおでこをくっ付けて直接情報を伝えようとした。
まぁ、成功だったようだ。譲ちゃんは泣き止んだし、『そうにゃの』と呟いた。
「でもね、令子信じられないの、本当なの?パパは令子の事愛してくれてるの?」
俺は一言、いや、人間の言葉では一吠えか、『ワン』と発しただけだ。

結局嬢ちゃんはおびえていたんだよな、公彦パパから愛想が尽きたんじゃないかって。
そんな事はないさと精一杯俺は伝えた。今日の夜、俺のいる犬小屋に公彦が来たんだよ。
「やぁ、マーロウ、お前は霊力の有る犬なんだってな、そう聞いてたよ」
あぁ、というがやっぱ人間にはワンとしか聞こえねェんだろうな。
「今日、令子に日本に帰ること言ったら妙に聞き分けが良くてね。マーロウが、って」
俺が?どうかしたのか。
「マーロウが俺は病気だって言ったってな。だからちょっと離れるのね。だとさ」
あぁ、確かに嬢ちゃんにはそんなニュアンスで伝えたぜ。文句か?ウソじゃないだろ。
「感謝するよ、お前には本当は一緒に残そうかと思っていたんだが」
ちょっと言葉を詰まらせて空を見た。俺もつられて上を見る。綺麗な星空だ。
「もうちょっと、令子が大きくなるまで一緒に居てくれ。頼む、頼む」
願っても無い、俺も嬢ちゃんと一緒のほうがいいさ。次にママさんが庭に来た。
「マーロウ、あの子もきっと霊力を持ってます。だから、日本へ行けば又悪霊に・・」
解ってるさ、そいつらも含めて俺が守る、その決意は素晴らしい遠吠えで示したさ。
それから日本行きが決まってな、で忙しいのはママさんだけ、俺と嬢ちゃんは何時通り。
だが、飛行機での待遇は俺は不満があった。座席開いてるのに俺だけがコンテナなんだ?
やっぱ日本てのは人が多い所為か霊も多くてよ。中々大変だったぜ。

さて、もう俺は一眠りさせてもらうぜ。
今度は嬢ちゃんが霊能力をコントロールするようになった話をするぜ。
《どうぞ、ごゆっくり》
と、人工幽霊1号は玄関先の光をすべて落した。

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ちょっと話的には暗い印象が残ってしまいましたが、如何でしょうか。

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