ザ・グレート・展開予測ショー

不死二人-Drカオス&玉藻-その2


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(01/ 1/18)

---先ずは「その1」の時に消した冒頭を改良してから入ります。---
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前日の雨で今宵の満月は格別の趣で、梅雨前のとても過ごしやすい1日であった。
「ふぃ、これでマリアのメンテナンスはおわりじゃ」
ようやくおわったと軽く伸びをするのはヨーロッパの魔王とよばれたDr・カオスだ。
一服したから小さな工房・・とも言えぬ部屋を片付ける。と急に寂しさを感じた。
今のワシは何をやっているのだ。自分で問いかけを始める。もう何度目の事か。
(何を今更、ワシは望んで不死性を求めたではないか)
最早妖怪に近い存在の彼だが、ベースは人間なのだ。
そして、老人特有の寂しい笑みを浮かべた。
「さて、寝るかな。おと、その前に用をとしておこう」
トイレに向かう廊下の窓にその満月は映った。
「ほぉ、綺麗な月じゃな」
カオスは不意に頭痛を感じた。
「はて・・頭が・・」
それはこの日が見事に月の魔力を中心に気候や気脈が一致した瞬間だった。
「そうか、いまはそう言う事か」
身体に変化は無かったが、目の輝きだけは若者の持つそれに近い状態だ。
思い出す事も多くあるDr・カオスに過去がはっきりするだけでも嬉しいのだ。
「ふむ・・天気もいい事だ。散歩でもするか」
何時もの外套を纏い、闇の中に身を委ねたのであった。
あても無くフラフラと市街地を歩いた。思い起こすは淡い思いだ。
「少なくともあのボーズよりかは持てたな」と。
そして高級住宅街に位置する小さな時計を有した小さな公園に至った。
「おや?だれだ、家出少女か?」
いや、それは同じく過去を思い出したタマモだったのだ。誰だ?と言う問いに、
「長生き組みのお仲間のようじゃな」
精々の見栄だあった。そして話は、過去に遡る。

「タマーニャちゃん御客様だよ」
「あ、はーい、で誰が来たの?」
もうメディチ家入りがほとんど決まっていた状態なので当主か、と思ったのだが、
「初めての御客さんだよ」
そういって入ってきたのは結構背の高いタマモからみればなかなかの男子であった。
「君がこの店の売れっ子、見たところかなり遠い国から・・」
「はぁい、ずーと東に行った唐土ってとこで産まれたの」
「へぇ、じゃこんな所に来るとは思ってもみなかったでしょ?」
「そりゃそうだけど、あたしはこの体があればどこでも大丈夫なのさ」
「ふーん」
「ねぇえ、お話しだけにきたの?」
「おやおや、東洋人はせっかちなのかな?」
「いいえ、殿方にあわせますわ」
「それじゃあ先ずは乾杯といこうじゃないか」
その客はグラスを用意させ持参のワインを注いだ。
「さて、我々の出会いに乾杯」
この客ちょっとギザね。と思うも、タマモとて酒は嫌いではない。
そして客はタマモが口に含む姿をじっと見ている。そして
「げ、ゲホォ・・ゲホゲホな、なぁに?これ」
あまりの不味さに吐き出すタマモだ。
今までにやけてた客の目がすっ、と細くなる。
「いやねぇ、お客さん、これ腐ってるわよ」
「いや、こいつは極上の酒だ。なにせ原水にキリストの血を混ぜてるからな」
タマモはその客の視線が女を買いに来たものではなかったと漸く悟った。
「だが、コイツを呑んで喉が焼けた、てぇ事は矢張り貴様、悪鬼の類だな」
「・・・・流石ね、油断したわ、あんた誰なの」
そう言いながらタマモは自分の毛に魔力を込めて針にしていく、
「俺かい?おれはな」
「いや、いいや。死んで」
言い切ると同時に何百本という針が客に目掛けてやってくる。
「やったな」
何かが倒れる感覚はあったが、それは部屋にあった人形である。
「何処にいった?」
「ここさ、右にいるぜ」
高速でよけたのだ。余裕を見せるのか攻撃をせずに壁に凭れ掛かり腕組みをしている。
「き、貴様何者だ??」
「ビサンチン帝国最高の錬金術師にして、今はヨーロッパの魔王Dr・カオスだ」
そう言って組んでいた腕をほぐし胸元に仕込んだ銀の短剣を出す。
「何の恨みも無いが、メディチ家のご隠居の依頼でな、今度の妾を見て来いってな」
「そうかい、であんた一人なのかい?」
「あぁ、万一悪鬼だったら普通の人などひとたまりもないからな」
「じゃぁ、あんたを殺せば万事OKじゃない、もう油断はないわよ」
「それはどうかな?」
この会話のなかでもタマモはある魔法を詠唱していた、炎を出す魔法だ。
「・・・・・焼け死ね!!」
魔法が発動するはずだが、なにも起こらないのだ。大声をだしただけだ。赤面する。
「魔法は封じたぜ、下を見てな」
なんと、娼舘全域に円陣がかかれているのだ。
「い、いつのまに」
「ふ、俺は用意は良いほうでな、こっちに来る前にね」
「やるねぇ」
「そうだな。で、あんたはこれでお終いだな」
『・・・まさかここで本性を出す事になるたぁねぇ』
「その前に片をつけ・・・うわぁ!」
タマモは眩いばかりの閃光を発した。原型に戻ると言う事は魔法封じは意味をなさない。
攻撃に備え最高の防御形の中で見た物は巨大化するタマモと壊れ行く館である。
『ふう、なかなかね、私に本性をださせるなんて』
これこそが白面金毛九尾狐の本性だ、身の丈は10mはあろう。
「ば、化け物め」
さすがのカオスも顔が青い。
『ふ、貴様みたいなのが人間にいるとはな』
「人間といえるかねぇ、俺はこう見えても150歳なんだ」
『成る程、殷国の斉天大聖と同じような事か!!』
たしかにカオスと仙人は似てる存在やもしらん。ちなみに斉天大聖とは孫悟空の事だ。
戦いは始まった、一応は術を封じているので力での勝負だ。
『この体格さよ、締め上げる事ができたらわらわの勝ちぞえ』
「あぁ、そうだな」
カオスはチョコマカと動き回るだけだ。彼の攻撃も対して効いていない。
丸で蝿がたかっているようなものだ。
しかし、彼はある合図を送っていたのだ、聖騎士、助けを求む、と
カオスはチャンスを待ったのだ、比較的格闘が苦手なタマモは少々息を切らしている。
だが、カオス一人では只走り回るだけで、決定打は与えられない。
むしろ分が悪いのはカオスだ、封印の力が段々弱まってきたのだ。
タマモにもそれはわかった
《くく、あとちょっとでわらわの力はふっかつするぞえ》と。ほくそえんでいた。
ちょっとした膠着状態が解けたのは大狐は後頭部に衝撃を感じた時だ!
『なっ何だ?』
「おお、ホーリーナイツ(聖騎士)団、来てくれたか!」
『御久しぶりです。Dr・カオスご健在でしたか!!』
割合年長の騎士が挨拶をする。
「おお、今はメディチ家に邪魔しとるわ」
「そうでしたか、して、こいつはいったい・・?」
「さぁ、貴様なんて名前だ?」
『そうよな、わらわは名乗ってなかったわぇ。東洋最高の妖狐白面金毛九尾じゃ』
「だそうだ、団長殿」
そんな無駄話の中、カオスの呪文封じの効果は消滅した。
『おお、力が戻った』
目に閃光が走る。石化を促す光線だ。
「みんな見るな!!」
カオスの一言も効を見せたが餌食は騎士団の若いの一人だけだった。
『ちぃ・・』
「貴様は主に刃向かう輩、我ら軍団が創る円陣の前に臥すが良い」
すぐさま聖騎士団は人で結界を作り始めた。聖なる結界をすぐさま形成する
『ぎゃああああ』
悲鳴をあげるが、くたばる程ではなかった、大狐はチャンスを待ったのだ。
「カオス様、・・・・」
「うむ、解った、ハッタリが聞く相手ならいいがな」
そういってカオスはある建物の屋根に登って話しかける。
「白面金毛の、ぬしの体力大した物だ、もしかしたら、生き延びるやもな」
『ふ・・ぐふ、そのようじゃな、威力がおちとるわ』
「そして俺を殺すだろう、だがないくらお前でも欧州全部の化け物は相手できまい?」
『貴様、自分の身を消す事で物の怪を呼ぶつもりか?』
「取引だ、ここで攻撃を止めさせる代わりに欧州から出て行け」
『本気か?』
目は笑っていなかった。体は震えていなかった。堂々としていた。
『解った』
「欧州から出て行け、東へ向かうんだ」
この言葉におとなしく従った大狐、もといタマモであった。

後少しで12時を指すところであった。
「ねぇ、当時欧州の東へ向かえって事は殺す気だったんでしょ?」
「ふふ。そうじゃな。あの頃は地球は丸いとはおもっとらんかったからな」
「そうよ、ずっと東進して倭国に付くとは思ってもみなかったわ」
「わしもそうじゃよ」
そして、時計のはりがぴったりと重なった。
「おや、時間じゃ、記憶が砂のように消えてぞい」
ちょっと寂しげな表情のカオスだが、タマモは対照的に明るかった。
「明日があるじゃない」
「そうじゃな。さて帰るとするか、お前も嬢ちゃんが心配する前に帰れよ」
満月に小さな雲が漂っていた    --完--

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