ザ・グレート・展開予測ショー

プリンス・アンド・バタフライ2と1/22


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 1/18)

 大田舎。
 人間の姿をした二人が手をつないで空を飛んでいたら人々はどんな反応を示すのだろうか。
 佐藤権三郎じいは野良仕事の最中、たまたま空を見たとき二人の姿を見てこうつぶやいた。
「おお、子供が空をとんじょる。ずいぶんハイカラな時代になったのう・・・」
御年92歳。健康だけが取り柄の彼はまだまだ現役バリバリである(何が)。

「おお!街が見えてきたぞ」
下を見下ろしながら天竜童子が感嘆の声を漏らす。
「ここに来るのも久しぶりでちゅねー」
「考えてみたらこうやって街を見下ろしたのは初めてじゃ」
「私は何度かありまちゅけど、人間ってウサギ小屋やお墓が好きなんでちゅね」
見た目のみに着目した人外ならではの捉え方である。(ていうか死んだバーちゃんも同じ事いっとったな。高層ビル群が墓場に見えるって)
「そうじゃな。この星はこれだけ広いのになぜか人間は集まりたがるのじゃ」
「私たちと違って人間は弱いのでちゅよ。よく言うじゃありまちぇんか。弱いもの程よく群れるって」
「そんなものかの。しかし群れているだけに娯楽も山ほどある!」
「でもお金が無いでちゅ」
現実的な発言。
「ぬ、この小判ではだめなのか」
懐から小判を50枚ほど取り出す天竜童子。
「金でちゅか。それなら大丈夫じゃないんでちゅか?」
「いやまつのじゃ、横島は年寄りの顔の書かれた紙切れや銀銭や銅銭らしき物を払っておったぞ」
少し間会えたあと、ぽんと手を叩く。
「そういえばそうでちた。私お買い物なんてしたことないからわからなかったでちゅ」
「とにかく横島のところへ行こう。しかし美神に見つかると厄介じゃな」
「あの女、小竜姫にちくりそうでちゅものね」
話し込んでいるうちに街の上空まで飛んできていた二人。
「とりあえず美神令子の屋敷まで行くか?」
「ん〜、それは不味いでちょう。そうだ、ここなら私の眷族たちが使えまちゅ。連れて来させまちょう」
「そんなことが出来るのか?」
「当然でちゅ!集まれわが眷属たち!そしてヨコシマを見つけ連れてくるでちゅ!!」

そのころ横島は電車を降り一路事務所に向けて歩き始めたところだった。
「さあて、今日は時に仕事も無いし、事務所の中でのんびりとしてよう、ってどうせシロに散歩に連れまわされんだろうな。ったくあいつは加減てもんを知らんからな。ひまさえあれはどこまででも走っていくし、ったくだいぶ慣れたとはいえやっぱ勘弁してほしいよな」
ちらりと腕時計を見ながら、先を急ぐ。とそのとき自分の周りに何時の間にか蝶々が集まってきているのに気が付いた。
「あれ、いまどき蝶なんて珍しいな。・・・蝶と言えばパビリオどうしてるかな。あいつのことだから退屈で仕方ないんだろうな。今度暇なときにでも遊びに行ってやるか。
 ん?何打こいつ等だんだん集まってきてやがる」
もう一度見たときには既に数百匹の蝶が横島を中心に集まってきていた。
「おい、これってまさか・・・うわ、離れろ、あっち行けって、おい、」
瞬く間にその数が倍倍と膨れ上がり、気付いたときには横島の視界は完全に奪われている。
「だぁぁやめろ、ん俺をどこへ連れて行くつもりだおまえら!!パビリオおまえのしわざだな!やめろ、やめてくれぇ!!」
そして太陽の光で羽を輝かせる蝶の塊がゆっくりと空へと消えていく。
そして今まで横島がいたであろう所には何も無かった。
一部始終を見ていた通行人たちがあまりの出来事に一時絶句していたが、30秒もして沈黙が拍手に変わった。
「おおお、すげぇ、蝶々に囲まれてたと思ったら人が消えたぞ!!」
「どんなトリック使ったのかしら!」
「きっとどこかのイリュージョンの宣伝か何かだったんだぜ!」
「どこでやるのかしら、見に行きたいわぁ!」
完全に手品か何かと勘違いをしている。あれが蝶ではなく蛾とかゴキブリだったらきっとまったく違った反応を示したに違いない。

パビリオと天竜童子の二人は、公園のブランコに座って蝶が戻ってくるのを待っていた。
「そろそろもでって来るころだと思いまちゅけど」
「横島のことじゃ、すぐに見つかる!」
「その自信の根拠はよくわかんないでちゅけど、ま、そろそろ来るでちょう」
「お、あれか、パビリオ!」
天竜童子が何かを見つけて指差す。
「そうでちゅ!みんなよくやったでちゅ」
蝶の群れはゆっくりと公園へ降り立ち、そのまま飛び去っていった。
「久しぶりだな、横島!」
「元気でやってまちたか、ポチ!」
「元気もくそもねぇ、どういうつもりだパビリオ、ん、あ、王子様じゃねぇか、また脱走か」
「そうじゃ!また余の家臣として働いてもらうぞ!」
「なんでおまえらの世話なんかせにゃならんのだ、俺は仕事でそがしいの」
「家臣が逆らうでない!」
「元ペットのくせして生意気でちゅ!」
「やかましい、とにかく俺は行くぞ。暇なときにでも遊びに連れてってやるから」
苛立たしげに言って、さっさとその場を立ち去ろうとする横島。
「機嫌悪いでちゅねぇ」
「まあまて。そんなときのためにこれがあるのじゃ。横島よ、そういえば約束のもの、忘れておった。今はこれしかないが取らせて使わすぞ」
天竜童子が小判をちらつかせると、横島は急に笑顔を取り戻し片膝を立ててかしずく。
「犬と呼んでください!」
「つくづく邪なやつよのう」
「一時でもこいつを見直した私が馬鹿でちた。ルシオラちゃんが泣いてまちゅよ」
「うっ、それを言わないで、しかし目先の欲望のほうが大切なのだ、さあ、小判をください、殿下!」
横島が手を差し出すとそれをぴしゃりと叩く天竜童子。
「金は事が成ってからじゃ!さ、参るぞ、あないせよ!」
「とりあえずはデジャブーランドでちゅか?」
「そうじゃ!では参ろうかパビリオ。そうだ横島、当座の金はおまえが工面せい」
「なんで俺が!」
「あとで何倍にもなるのだからよいであろう!」
「・・・当座の金もないんだよ。とりあえず小判一枚よこせ。厄珍のところで換金できるから」
「おまえ、相変わらず大変そうだのう」
「がきに言われたくないわ」

ちょうどそのとき美神邸では。
「えぇ!またあの王子逃げたしたの??」
「はい。それもパビリオといっしょに。頼れるのは美神さんしかいないものですから・・・」
「先生はどうしたのよ」
「栄養失調で倒れられたらしくって。ピートさんじゃ殿下の顔知らないし」
「せんせい、また?しょうがないわねあれほど依頼料はちゃんと貰えと言っておいたのに。わかったわ。そろそろ横島君も来るころだし、行きそうなところ一通りあたってみましょうか」
「ありがとうございます」
「いいのよ、気にしないで。困ったときはお互い様っていうでしょ」
(あ〜あ、断れるわけ無いじゃないの、神様のお願いなんか)
「あ、美神さん、ひょっとして怒ってます?」
申し訳なさそうに言う小竜姫。
「いーえぜんぜんおこてないですよ」
令子は明らかに作り笑いである。
本当は一文にもならないがき探しなんて真っ平ごめんだ。
「だって美神さんが人を助けるような事いうなんて、なんか悪いことの前兆かな、なんて」
「あんたねぇ私を何だと思ってるの、神様でも終いにゃ怒るわよ?」
「ごめんなさい」
神様にしては気の弱いところのある小竜姫。美神ににらまれてたじろいでいる。
(この人はある意味上層部の方々より怖いから)
「ほら、そんな顔しないで。ちゃんと手伝ってあげるから。おキヌチャン、タマモとシロよんどいて」
「あ、タマモちゃんは遊びに行っちゃいましたよ」
「タマモって、あの玉藻の前ですか?」
「そうそう、あれの転生なのよ、って小竜姫様会ったことあるの」
「ありますよ、800年ぐらい前に一度。おしとやかな人でした」
「・・・それほんとに本人?」
「ええ、間違いありませんよ、心覗かせてもらいましたから、って、安心してください、めったにそんな真似はしませんから」
「そ、そりゃそうよ。しょっちゅうそんなことするような相手信用できないし」
(そんな力もあったの彼女・・・、めったなこと考えられないわね)
「そうですよね。しかし横島さんは来ないですね」
「なにやってるのかしらあの馬鹿は、あと一分してこなかったら減給ね」
「美神さん、そんなにひいたら横島さんお給料なくなっちゃいますよ」
おキヌちゃんが心配そうに言う。
「いいのよ、あんな馬鹿。・・・ああもう待ってらんないわ、行きましょう小竜姫様。おキヌちゃんも」
「あ、はい、シロ呼んですぐ行きますね」
着々と天竜、パビリオ捜索隊の準備が進む。

「ああ、これ混ぜ物あるよ。金の含有量が30パーセント無いあるね。これならいいとこ一枚1万ね」
厄珍は小判を一目見るなり言い放つ。
「なんだよもっと高くなんないのか?骨董価値とかもつくだろ」
「これ、江戸後期から末期に作られたものあるよ。そんなには価値がないある。これでも高く買ってるある、知り合いじゃなきゃせいぜい三千円ね」
「む、じゃあそれでいいよがきども遊び行かせるぐらいなら足りるだろ」
「何か都合あるみたいね、知り合いでもあるしそれじゃ少し色つけて一万5千にしてやるある」
「ほんとか、助かるよ厄珍のおっさん」
「いいあるいいある、その代わり今度新製品の実験台になるあるよ」
「それは勘弁してくれ」
「冗談ある。はい一万と五千円」
おもむろにレジから金を取り出し、横島に渡す。
「サンキュ〜」
横島はそれでもまあ納得したのか、それなりに満足した顔で店を後にした。

「ばかねあの男。あっさりだまされてるある。本とはこの小判、一枚15万あるよ、くっくっく」
厄珍は後姿を見ながら思わずほくそえんでいた。・・・そんな商売してるといつか後ろから刺されるぞ!
「ほっとくある。物の価値なんて見る目のある人間にしかわからないのだから。くっくっく」
 続く。





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