ザ・グレート・展開予測ショー

NERVOUS BREAKDOWN!!(3)


投稿者名:ブタクリア
投稿日時:(01/ 1/17)

風の冷たい日は、どんな季節にも共通するニオイがある。
それはあくまで人の意識の奥底に存在する、脳で嗅ぐニオイである。
そんなニオイを意識する時間さえ圧縮してしまうかのような雑踏の街のシケたビルの一室。

『じゃあ、どちらでも良いから、私と依頼人のガードに、で、もう一人は身辺調査をしてもらいます』
朝から青い顔をした麻生は2人を前にそう言った。
『………俺が行こう』
『なら、あたしは調査ね』
『じゃあこれを』
麻生は勘九郎にファイルを渡す。
『………基本ね』
ファイルに目を通す勘九郎がつぶやく。
依頼人の家に向かう雪之丞は、サイドシートで今にも今朝飲んでいた大量の薬をリバースしそうになっている麻生に困惑したが、今にはじまった事ではないので運転になんら支障はきたさなかった。

喧騒の街に浮かんだ大邸宅。
部屋に通され、和風をベースにいたるところに中華を感じるのが妙に洒落て見えなくもないな、と雪之丞がどうでもいいことを考えていると、胡紅が部屋に入ってきて挨拶をする。
雪之丞は依頼人とのこうしたやりとりが苦手なので、いつもは麻生にまかせっきりだったが、今回は違った。
昨日の胡紅との会話のせいか、ぎこちなくだが言葉を交わす。
『……昨日は、悪かったな、最近、つまらん仕事ばかりでイライラしててよ……』
『いいえ、お気になさらずに』
胡紅は微笑んで言う。
うがぁ ぁあえぁ
突然、奇妙な呻き声が鈍く響いた。
しまった!!
雪之丞と麻生は、おそらく、手遅れと思われるもう一人のガード対象者のことよりも目の前のカード対象者の安全確保を優先しようとしたが、彼女は立ち上がり、弾かれた様に声のした方向へ向かった。
『あなたっ!?』
『あっ!徐さん!!』
『チッ!』
出遅れた2人は、胡紅に遅れること数秒、人体に詰め込まれた臓器が飛び散るように散乱した部屋に着いた。
『あ、なた……』
放心する胡紅。
『ウゥッ、オゥゲェェェェェ!!』
嘔吐する麻生。
雪之丞は人の気配を探った。
いや、探ってはいない、探る前にあからさまな人物が目に入ったのだ。
廊下の向こうの庭に赤黒い液体にまみれた女が立っていた。
彼女は手にした包丁に見入っていたが、雪之丞の視線に気づき、慌てて走り去った。
『うぎおじょう!こおはわあいにまぁぐぁぜえ!ウェゲェェ!あおひおをおっウェェ!!』
『吐きながら言うセリフかーーっ!!』
『雪之丞さん!私なら大丈夫ですから!』
雪之丞はチラッと胡紅の方に目をやると、女の逃げた方向に走った。
(………強いな)
胡紅の気丈な表情を思い出し、感心しながら、女を追う。


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