ザ・グレート・展開予測ショー

プリンス・アンド・バタフライ その1と1/2


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(01/ 1/16)

 追いかけっこも一段落ついて。
 神殿内の居間に戻ったパビリオと天竜童子は直径1メートルの丸テーブルに向かい合って、じいっとにらみ合っている。
追いかけっこは結局決着は付かず終いで終わり、今はちょうど昼食の時間である。
「ほら、殿下、お気持ちはわかりますがそろそろお怒りをお静めになって、パビリオ、早くお詫び申し上げなさい」
「何で私が謝んなくっちゃなんないのでちゅか」
不快を露にするパビリオ。
「私だけが悪いみたいに言わないでくだちゃい」
「何でもくそもありません、あなたは目下のものなんですから・・」
「私はこいつの家臣じゃないでちゅ」
「そうじゃぞ小竜姫、余はこんな家臣なぞ要らん、・・・それに余も少し大人気なかった。700歳年上の年長者としてもっと寛容に接してやるべきであった」
幾ばくか反省した表情で茶をすする天竜童子。
「殿下、なんとご立派な。そのお考えすばらしく存じます」
「むっそうか、さすがは余じゃ、はっはっは」
いい気になって高笑いをする天竜童子にパビリオがボソッと、
「ちょっとおだてられたぐらいで調子に乗るなんてまだまだガキでちゅ」
と突っ込みを入れる。
「何とでもいえ、おまえは余の家臣ではないんじゃ」
「ちび」
「なんじゃと、おまえだってちびではないか」
「私はまだ成長過程でちゅ。きっとあと何年かすれば小竜姫みたいになるでちゅ。でもすでに700年生きてるおまえは実は成長期が過ぎてるでちゅ。一生そのまんまなんでちゅ」
「・・・そうなのか?小竜姫」
「そんなことありませんよ、パビリオにからかわれているだけです」
「冗談を真に受けるとは、ひょっとして馬鹿でちゅか?」
「・・・ここは我慢じゃ、余は年長者として寛容に・・・」
「きっと脳みそがヨーグルトみたいにどろどろでちゅよ」
「・・・いいかげんにその口を閉じよ!成敗するぞ!!」
刀に手をかけ、片足をテーブルの上によっこらしょと掛ける。
「されないでちゅ」
パビリオは平静を保ち、涼しい顔で受け流した。
「ぬ、じゃあだめではないか」
あっさりと引き下がる天竜童子。やはりお子様脳である。
「しかしこのままではきりがないの・・・そうじゃ、家臣がだめなら余の友となれ、それなら文句あるまい」
(考えてみたら余は生まれてからずっと友と呼べる友がおらん。ちょうどいい機会じゃ)
「殿下、いくらなんでもそれでは他のものに示しが付きません、お考え直しを」
「黙れ小竜姫、誰を友とするかは余の決めることである!」
「は、はは」
大喝されて、思わず平伏する小竜姫。平伏したあと、竜神王の姿を思い浮かべ、内心天竜童子の成長に感激を覚えた。
(殿下、成長なされているのですね、この小竜姫、感激に言葉もありません)
伏したまま、涙をこらえる。
「おまえがわが友となることに文句を言うやつはおらん、どうじゃ友となってはくれんか」
「そうでちゅね」
(神族の大物を連れにしておけば将来きっと有利な事があるでちゅ) 
「わかりまちた。お友達になりまちゅ。友達のなったからには大口をたたくのはやめてくだちゃい」
「大口もたたくなといわれても余は生来このしゃべり方しか知らぬ。それでは友になれぬのか」
「しょうがないでちゅね、じゃあそのままでいいでちゅが、出来るだけ努力はするでちゅ」
パビリオと天竜童子は思惑は違えど会心の笑みを浮かべる。
「では友情を記念して乾杯といこう」
「そうでちゅね」
二人は茶碗を手にとると茶碗を重ねる。がちんと鈍い音がする。
「聖も魔も関係ない!たった今から死ぬまで、余とパビリオの友情は永遠じゃ」
「ずっと友達でちゅ!!」
小竜姫はその姿をみて思った。殿下はなんと寛大なお心の持ち主なのだと。
 だが。

「パビリオよ、余は下界に降りたいのじゃ」
「私も修行はあきまちた。遊びに行きたいでちゅ」
小竜姫が小用で部屋を空けた瞬間から、善からぬ企みをはじめたのであった。
「横島たちも会いたいし、デジャブーランドにも遊びに行きたいのじゃ」
「ヨコシマでちゅか、私も会いたいでちゅ」
「そうか、パビリオも横島と知り合いだったな」
「あれは元ペットでちゅ」
「家臣みたいなものか?」
「まあそういうことでちゅね。あいつなら下界での世話もしてくれる筈でちゅ」
「そうだな、で問題はここをどう脱出するかじゃ。前回のことを踏まえてか、結界が二重三重にも張られておるし・・・」
「結界ごとぶっとなせないんでちゅか?」
「出来なくはないが、それでは追っ手がかかろうし、パビリオに余計な手がかかってはいかん」
「心配してくれるんでちゅか?」
「友ならば当然のことじゃ」
いいながら照れている天竜童子。
「いかに速やかに、確実に脱出するかが鍵じゃ」
「・・・いい手があるでちゅ」
パビリオは手短に天竜童子に作戦を伝える。
「ほう、しかしそんなにうまくいくものか?」
「大丈夫でちゅ、まかちてくだちゃい」

「どれ、見せてみよ」
「これでちゅ」
小竜姫が小用から戻ってくると、天竜童子たちが床に座って何かを眺めていた。
「あれ、何を見てらっしゃるのですか殿下」
「あ、だめじゃだめじゃ、小竜姫には見せてやらん。しかしきれいだのう」
振り返らずに答える天竜童子。
「そうでちゅね、天ちゃん」
「こらパビリオ、ちゃんと陛下と御呼びしなさい」
「よいのだ、この者はわが友だぞ、友に殿下と呼ばれる筋合いはない」
「まあ、殿下がそこまでおっしゃられるのでしたら」
「しかしいつまで見ていてもでもあきぬ」
「ほんとでちゅ」
「私にも見せてくださいよ、殿下」
小竜姫はどうせ他愛もないものだろうと高をくくって、二人の間にあるそれを覗き込む。
そのとき!

ぼわん・・・

「こ、これは・・・いったい・・・ふ、不覚・・・Zzzzz」
黄色い粉が小竜姫の顔を覆い、それと同時に強烈な眠気が小竜姫を襲った。
「・・・こんな手にこうもあっさり引っかかるとは・・・」
小竜姫にかけられた粉は、パビリオの眷族の持つ催眠と忘却効果のある粉である。これを大量に吸い込むと神といえど数分から数時間寝込みしかも眠る前数分の記憶が飛ぶというすさまじいものである。
 いかに神剣の達人小竜姫といえど、完全部防備の状態でそんなものを直接浴びせられたらひとたまりもない。パビリオは寝室から毛布を持ってくるとそっと小竜姫の体にかけてやった。
「しっかりしているようで結構単純なところがあるんでちゅよ」
二人は粉を吸い込まないようしっかりと防毒マスクをかぶっている。

小竜姫を起こさぬよう慎重に部屋を出、出口の鬼門の前に立つ。
「あとはこの鬼門の二人じゃ」
「もっと簡単でちゅよ」
パビリオは軽く答えると、天竜童子に人差し指を唇に当て黙ってろ、とジェスチャーする。そして懐から長さ20センチ程度のつっかえ棒を取り出すとおもむろに鬼門を叩いた。
「どうしたのじゃ、パビリオ」
「もう一度掃除をするよういわれたでちゅ」
「うむ、では今あけるぞ」
鬼門右は何の疑問も持たずに門をパビリオが通れる程度開ける。
パビリオはその瞬間すばやくかつばれないようにつっかえ棒をかう。
「門が開いておる!!」
その瞬間まず天竜童子が跳び出そうと動く。
「む、殿下、逃がしません・・あれ、しまらん何か挟まってるぞ!!」
とっさに閉めようとした鬼門右であったがつっかえ棒のせいで門が閉められない。
「やったぞ、脱出じゃ!!!」
「あ、殿下、だめでちゅよぉ〜〜〜」
わざとらしい叫び声を上げて天竜童子を追うパビリオ。
「む、頼むパビリオ、殿下を捕まえてくれ!」
「任せるでちゅ!!」
パタパタと手を振って天竜童子を追いかけるパビリオ。
「ここまでおいでーじゃ!!」
「待つでちゅぅーー!!」
その後を追いかけていくパビリオ。
「は、早く小竜姫様にお伝えせねば、警報、警報じゃ」
 
ぶぃーーんぶぃぃん

「・・・あう、殿下りっぱになられて小竜姫、うれしゅうございまぁ・・・」
警報の音にもめげず、眠りを享受する小竜姫。ちなみにパワー切れとは違うので寝姿は角形態ではなく普段のままである。マニアが見たらないて喜ぶだろう。

妙神山を飛び降りていくパビリオと天竜童子。
「成功じゃな、パビリオ!」
「さすが私でちゅ!!」
「余の演技力もなかなかであろう!」
自慢げに言う天竜童子。
「そうでちゅね!」
「さぁまずは横島のところじゃ!!」
「今は多分学校でちゅ!!帰り道でつかまえまちょう!!」
「久方ぶりに会うが、相変わらず間抜け面してるかな、やつめ」
「あはははは、とにかくれっつごうでちゅぅぅぅぅ!!」
二人はいつのまにか手を握り合って、久方ぶりの下界へと降臨していくのであった。

続く。

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