ザ・グレート・展開予測ショー

コロニーの落ちる日(終)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/12/21)

「美神艦長・・・・・・」
艦砲射撃と回避運動の指揮をしていた美智恵は、傍らにボーッと立つジークの姿を見た。
ヘルメットは被ったままだった。
「すいません、でも、言っておきたいことがあって。」
「斉射よっ!」
美智恵は号令を掛けた。
「僕、捕虜を逃がしてしまいました・・・・・・」
「・・・・・・?」
美智恵は、ジークが何を言ったのか聞こえなかったと思いたかった。
「回避っ!・・・・・ジーク、今何て言ったの?」
「僕は、ベスパを逃がしたんです。」

横島は、ギャップランが地球で出会った機体とはまるで違う機体であるように思えた。
このギャップランは、たえず正面、正面に機体を向けようとしていた。
下の方に回り込まれるのが嫌なのだろうが、なによりも敵を正面にとらえて攻撃しないと気がすまないパイロットと見たのである。
「何をする気かしら・・・・ん?」
モニタースクリーンからGZの姿が消えたので、勘九朗はまたも正面から敵をとらえようとした。
しかし、横島はGZを変形させてMSの型にすつや、ギャップランのテールノズルを吹き飛ばしていた。
「あたしの死角を知っているのっ!!」
勘九朗は愕然とした。
同時にGZがギャップランと同じに変形したのを知って、しまったと思った。
そう感じた瞬間、勘九朗のようなタイプは自分の敗北を本能的に嗅ぎ分ける。
「とどめっ!」
追おうとする横島だったが勘九朗の逃亡は早かった。
その素早い動きに、横島は追撃を諦めると同時に小竜姫隊の動きが気になった。
「・・・!小竜姫様はっ?」
GZはコロニーの後部に回りこんだ。
MK-Uとノモが核エンジンの下で頑張っていた。
「小竜姫様っ!」
「大丈夫!おキヌちゃんがよく守ってくれたわ!核パルスが出るわ!」
小竜姫の声が終わるか終わらないうちに、ドウッ!という閃光が辺りを包んだ。
巨大な閃光が核エンジンから上がった。
その圧力で、コロニーはコースを僅かに変えたようだった。


ベルの鳴っている電話の受話器を取る加具夜姫を神無と朧が心配そうに見守った。
「なんです?」
「ムーンライト市の観測では、コロニーはコースを変えたようです。」
「・・・・・そうですか。」
加具夜姫は二人に目配せをした。
そこに居合わせた女性神達は、すくっと立ち上がって加具夜姫の受話器を見つめた。
「それで・・・はい・・・・そうですか・・・やってくれましたか・・・・・」
加具夜姫は最後に、「・・・・・ありがとう」と言った。
受話器を置き、天窓を仰いだ。
「皆さん、聞いた通りです・・・・・」
神無と朧を含む女性神達は安堵の息を吐き、お互いに顔を見合わせ、そして抱き合った。
なかには、天窓を見上げる者もいた。
「ふふふ、まだ当分落下する景色は見えませんよ・・・・少なくともここから西に百八十キロ離れたポイントに落ちるようですし・・・・・」
その加具夜姫の言葉は冗談のように聞こえ、女性神達はようやく声をだして笑いあった。


「このままいけば、ムーンサイドの西に落下します。付近に都市はありません!」
ヒャクメの声にアーギャマのブリッジ要員たちから喚声があがった。
「良くやってくれたわ、みんな。・・・・小竜姫中尉に繋いでくれる?」
「はい。」
美智恵は小竜姫の映像が映るウインドゥを見上げて、
「小竜姫中尉、作戦成功よ。」
「ありがとうございます。」
「月の引力圏に入る前に、核エンジンは全て回収するのよ。月を放射能で汚染させたくないわ。それにあそこは女性ばかりですものね。各機は敵の艦の動きを警戒しつつ小竜機の作業を支援しなさい!」
その美智恵の号令に、若いクルーは歓声をあげて各々の通信業務についた。
そんな中でジークは、ひとり取り残されていた。
「なんで言われた通りにしなかった!ベスパには近づくなってあれほど言っておいたじゃねえかっ!」
横島は泣き崩れるジークにも容赦しなかった。
五発目の鉄拳がジークの頬を打った。
「僕は・・・・軍律に背きました・・・・・銃殺刑にしてください・・・・・」
バキッ!
「ガキがきいたふうなこと言ってんじゃねえっ!・・・・・ったく、ひとつ間違ったらお前が殺されてたかもしれないんだぞ!なんで撃たなかった!!」
ジークは顔を上げて、
「撃てなかったんです、撃つ間がなかったんです。ザックに撃っても当たんなかったんですよ!」
その最後の言葉に横島は腕を上げるのを止めた。
「ジーク・・・・・・・」
おキヌも悲しそうにジークを見つめた。
ジークは体の芯が抜けたように崩れていった。
横島は自習室を出ると隣のラーデッシュを舷側の窓から見つめた。
「人間なんて信じられないってジークは思い込んじまうな・・・・・」
「・・・・・理想ですよ。横島さんは期待しすぎです・・・・・・人ってああいうものなんじゃないですか?」
「・・・・・割り切りすぎだよ、おキヌちゃん。・・・・それじゃいけない・・・・・」
横島はきつい感じで言った。
「・・・・分かってます・・・・・・」
おキヌは横島の言葉に合わせただけの返事であるのを知っていた。横島は別のことを伝えようとしているのだ。
だが、おキヌにはまだ良く分からなかった。


コロニーがムーンサイドの上空を通過する時、加具夜姫は極秘情報を手に入れていた。
Gメンのレーザー通信がムーンライト市に伝えた通信を受けたのである。
「斉天准将が死なれたのですか・・・・・!?」
加具夜姫は天窓にコロニーがゆったりと通過してゆくのを見た。
「ええ・・・西条大尉は無事なのですね?・・・・はい、回収を急がせます・・・・・アーギャマをそちらへ。カオスは?総会終了後、キリマンジャロに移動するのですね?」
ムーンサイドの市民達は、突然現れたコロニーの巨体に息を呑み、かつて人々が彗星の存在を知らなかったために驚き恐れたと同じように、唇を震わせて見上げるのだった。
さらにそれから数分の時間が経った。
コロニーは、月に落ちた。
そしてコロニーは自重と加速で潰れていった。
その中の何百万もの魂を失った肉体も砕けていった。
そして、その巨体のところどころから閃光が弾けて爆発を起こした。
残っていたガス、爆薬などが思い出したように目覚めたのだろう。
コロニーの巨体が静まるまで、数時間を要した。

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