ザ・グレート・展開予測ショー

バースデイ(9)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/12/21)

 ヒノメたちは螢を探していた。
 「おかしい、どこにもいないわよ」
一階のロビーから二階の鬼郎に叫ぶヒノメ。
「外に出た形跡もないし、こんな短い時間で一体どこへいったんだろ?」
「受付の奥の廊下に非常口があるはずだ。そこからおそらく地下へと通じているはずなんだが」
階段を下りながら鬼郎が答える。
「外から見たときは非常口なんかなかっったと思いますが」
「隠し部屋になってるんだよ。大概こういう研究所にはいくつか隠し部屋があるんだ。あ、そこだよヒノメさん」
「鍵かかってるじゃないの、全然開かないわ」
「…参ったな、中から鍵をかけられたらしい。ここの研究所の所長はなかなか用心深い人らしくてね、俺達一般の研究員にすら姿を見せたことがないんだ。そういう人だからおそらく俺達の行動に気付いてるんじゃないのだろうか…」
「気付いたってことはまだその所長さんはここにいると言うことでしょうか」
「そういうことだな。かなり研究熱心な人らしいから。いい意味でも悪い意味でも」
「そういう手合いがいちばんやっかになのよね。なまじ頭ばっかりでかくなったようなやつが一番ね」
「まったくだ」
「あんただって人の事言える立場じゃないでしょ、こんな遅くまで」
「俺はそんなにいい人じゃないよ。黙ってPCネットワークにアクセスさせてもらってただけなんだから。それよりどうやって地下に降りるか考えなくては」
「簡単よ。私に任せて」
ヒノメは無造作に鉄の扉に触れると、手に意識を集中させる。
「二人とも、少し離れてて」
「ヒノメさんは念導発火能力者(パイロキネシスト)なんですよ」
「ほう、パイロキネシスを使いこなすたぁ、どっこいなかなかの能力者じゃないの。おっぱいだけじゃなかったんだな」
「そうです。スタイルと凶暴性だけじゃないんですよ」
うんうんと頷く二人。
「なんか言った??」
二人のの言葉に敏感に反応するヒノメ。
「んや、なにも」
「気のせいですよヒノメさん、ははは」
とぼける二人。再びヒノメが集中しだすと顔を見合わせて肩をすくめた。
「ンンン・・・・・・、はぁぁぁぁぁ!!!」
気合を発した瞬間膨大な熱量が鉄扉を真っ赤に染め上げ、そして飴細工のように溶かす。
「スプリンクラーが回ると厄介だな」
「大丈夫よ。私はこれでも真面目に修行している方だから・・・こんな芸当もできるのよ」
次の瞬間、今度は一気にあたりが冷却されていくのがわかった。瞬く間に水蒸気がダイアモンドダストを作り出す。
「へ?へっきしっ」
「はな出てますよ」
「あ、すまん。しかしコリャまるで雪女だぜ」
「パイロキネシスの応用なのよ。これも」
「何でです、まったく対極に位置する力じゃないですか?」
「その対極ってのが味噌だな。どちらも同じ体内の霊力を温度として変換する能力だからな」
「ま、簡単に言えばね。もっとも小竜姫様に修行してもらわなかったら出来なかったろうけど」
「だれだい、その小竜姫ってのは」
「あきれた、そんなことも知らないの?それでもGS免許取得者なの?」
「俺は真面目に人の話を聞かないので有名だったからな。どっかで聞いたかもしれんが右から左へ聞き流したんだろうよ」
「GSの常識も知らないなんて・・・あなた誰かのもとで修行したことは?」
「まったくもってない。ま、しいて言えばテレビでやってた特番の出演者かな。やつらのやってること真似したら出来たんでGS免許の試験行ったら受かった」
あっけらかんとした顔で言う。しかしだれの推薦もなく受けに行って合格したのだから、並大抵の力ではないのだろうが。
「あっきれた。いるのねそんな人って」
心底呆れ顔のひのめ。そういう自分も師匠らしい師匠は持っていない。中学生の頃から姉の事務所に入り浸っては仕事に付いて行ったりしていたので、実績は十分だったが。
「俺が天才ってだけだろ。それよりほら、扉は開いたんだし、先行こうや」
「そうですよ。もしかしたら螢さんもいるかも知れませんし、ルーの事も気になります」
「そうね」
「お、そうだ、この先何があっても俺は知らないよ。とりあえずそれだけ言っておくわ」
「知らないよって、なんて無責任な」
「俺の座右の銘は、ま、みんな楽しく楽して幸せになろうよ、だからな」
「・・・・無責任な考え方ですね、ホント」
「じゃなきゃこんなクソ怪しい研究所で研究員なんかしてないよ。もっとも嘘の履歴書書いたやつ使う方も使う方だけど」
「どんな嘘書いたの?なんかすっごく気になるわ」
「T大理工学部、霊能研究科主席卒業」
「・・・そんな一発でばれる嘘見抜けないここの人事課の人間っていったい・・・」
「とっても真面目そうな人だったよ。あとで嘘でしたっていったら半泣きしてたけど実績は残してるからね、クビにはならんかった」
「この霊能グッズね」
どれも斬新奇抜なアイデアを盛り込んだ(と言うよりだれも考えそうもない実に単純な発想な)代物である。
「ホントにこれでパワーアップしてるの?」
「言霊ってのは使い方によってはあんたらが考えてるより遥かに応用性があるって事さ。特に古代文字なんてのはな」
「とり、はね、こんどる、ほんだな・・・??」
「古代エジプトの形象文字だよ。まさか霊力増幅とか何とか刻んだだけで威力が上がるとは思っても見なかったけど」
「偶然の産物ってわけね・・・」
「そのとーり。よく出来ました。といっても古代文字に霊力を左右される力があるかもしれないってのはピラミットとかの研究で多少は明らかになってたんだけどな」
「意外と博識なんですね、新條さんは」
「いやー、ガキの頃暗号で手紙をやり取りするのが好きな変なガキだったのよ」
またうなじを掻きながら、笑って答える鬼郎。
「っと、話はいい加減にしておかないと」
ポケットからライターを取り出すと小さな炎であたりを照らす。すると四畳半の部屋の真ん中に下へと続いているであろう穴がある。
「けっこう深そうだ」
「お先に」
行ってるそばからヒノメが穴の中へ消えた。
「ばか、下がどうなってるかわからないんだぞ」
慌てて手を伸ばす鬼郎。しかしもう姿はなく、直後にどすんという音がした。
「おーい、生きてるかぁ??」
穴に向かって叫ぶが、返事はない。
「ぼくも行きます!!」
桐斗が覚悟を決めた顔で続けざまに飛び降りる。
「あ、ばか、・・・ったく何を考えてるんだあいつらは・・・。分かったよ、俺も行くよ。神様仏様、どうかこのばか者が死なないように祈ってやってください。・・・ああもうやけくそだぁ!!」
最後に鬼郎も飛び降りた。
三人が飛び降りるとそこは再び元の闇と静寂を取り戻した。

(10)へ続く。



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