ザ・グレート・展開予測ショー

コロニーの落ちる日(4)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/12/21)

「どうなの!」
勘九郎の号令にザックが次々と接触回線を開いた。
「方位全て良好です!敵影は見えません!」
勘九郎は各機の報告をテープに収めた。これも厄珍の神経がさせる仕事なのである。
「厄珍が、あの木星帰りにへんな対抗意識を燃やさなければ、こんなにドタドタすることもなかったのよ。艦に帰投するわよっ!少しは休まないとお肌に悪いわ!」
艦九郎はギャップランを上昇させ、そのあとを十数機のザックが追尾してアレキサンドリャーに向かった。
「コロニーの近くに敵艦の影を確認!」
その声はラーデッシュのブリッジであがった。
「アーギャマに発光信号を!」
唐巣は怒鳴ると、コースを変更するために残された時間が十分でないことに気がついた。
「コロニーの速度は観測より速い!計測を急ぐんだ!」
「ハッ!」
唐巣は手元の艦内モニターを押しに行って小竜姫の姿を捜した。
「・・・・・・!」
小竜姫はノーマルスーツルームを出るところだった。そのキリッとした表情を見るにつけて、世が世ならば気の利いた秘書にでもなっていただろうにと思った。

アーギャマのノーマルスーツルームでは、おキヌとメドーサがノーマルスーツに着替え終わったところだった。
「先に行きますね、メドーサさん。」
飛び出そうとするおキヌにメドーサは振り向いた。
「おキヌ!」
「なんですか?」
「美智恵キャプテンが呼んでたよ!」
「えっ?」
「氷室軍曹っ!モニターへっ!何をしているの!」
「ほらね!」
メドーサはニッと白い歯を見せて笑った。その途端におキヌはメノスをメドーサに取られるのが分かった。
ICPOが、GZ以後の支援用MSとして開発した可変MSメノスは、まだアーギャマにも一機しかなかった。
となると、おキヌの任務は戦闘ということではなくなる。
おキヌは艦内モニターに取りついた。
「おキヌちゃんはノモでMK-Uと接触して!小竜姫中尉の核エンジンの作業を支援するの!浪人さんが用意した工具を持ってMK-Uと接触するのよ!コロニーの核エンジン取り付けデータが入ったわ!持っていって!」
「了解っ!」
「但し、予測データよ。現場に行ったMK-Uを支援してっ!」
そのヒャクメの言葉が終わらないうちに、艦内モニターの下のブリッジから一枚の紙が飛び出してきた。核エンジンの取り付け予測図であった。
「あの・・・当てになるんですか?」
「行って確かめるの!」
「りょ、了解!」
おキヌは、その紙をノーマルスーツ足のポケットにいれると、MSデッキに走った。
ラーデッシュのカタパルトデッキに出たMK-Uは腰に核エンジンを操作するのに必要な工具を設置して射出ポーズをとった。
「MK-U、発進します!」
小竜姫の凛とした声が唐巣には快かった。
「中尉、すまないな!死なずに帰って来るんだぞ!皆が不幸になる!」
「了解っ!行きますっ!」
MK-Uがサイド4のコロニーに向けて発進した。
それを合図のようにラーデッシュとアーギャマのカタパルトデッキから次々とMSが発進していった。
GZは変形して飛行形態のままMK-Uを追尾した。
背後には、輝く月がその人の行為を見守るだけだった。
アーギャマのベスパの監禁されている自習室に通じる通路をノーマルスーツを着たジークが片手にもうひとつのノーマルスーツを持ってリフトグリップで移動していた。
「頼みます!」
ジークの声に見張りの兵がキイでドアを開いた。
ジークはノーマルスーツを前にして部屋に入っていった。
「随分、外が騒がしいみたいだね。」
「君の情報のおかげで遅れずにMSの出撃が始まった。」
ジークが投げるノーマルスーツをベスパは受け取った。
「戦闘に入るから着ておくようにって命令だ。」
「サイズ、合うかな?」
「君の申告した身上調査のサイズが合っていれば合うよ。」
ベスパはノーマルスーツを着ながらジークの様子が元気がないように見えた。
「おまえはMSに乗らないのか?」
「・・・・乗りたくても乗るMSがないんだ。君のように才能もないしね。」
ジークは肩をすくめてみせた。
「そうは見えないけどな・・・」
「それじゃ。」
ジークがそう言ってドアに手を掛けた時、
「総員!対空監視についてくださいっ!」
艦内に総員戦闘配備の号令がかかった。
「ジーク!キイだっ!俺は監視につくっ!」
見張りの兵がジークにキイを渡して駆け出していった。
ジークはキイを受け取り、用心深くベスパに隠すように背中に回した。
「あたしのザックで出撃できないの?」
ノーマルスーツを着終わったベスパがジークに向いた。
「えっ!?それじゃ、敵味方の識別がつかなくなっちゃうだろ。国際法違反だよ。」
ベスパはフワッと流れてジークに近づいた。
「でも、おまえはICPOのために働きたいんだろ?私もジークがICPOのために活躍するのを見たいわ。」
「けど昔のザックなら分かるけど、今のは・・・・」
「操縦法なら私が教えてあげるんだけどな。」
「・・・・・」
「ね!ジーク!・・・・私を連行するふりしてさ、MSデッキまで連れていってくれれば、私、ジークの手伝いができると思うわ。」
「ベスパ・・・」
そんな大胆な計画を話すベスパにジークは体の芯が震えた。
自分と同じくらいの少女が、そんなことを言い出すのだ。
それはジークの中の自尊心を打ちのめすものでもあった。自分がこの少女よりも弱虫で何もできない思うのは堪らなかった。
ジークは頷いて、ピートからもらった銃をノーマルスーツのホルスターから取り出した。
そしてベスパを前に出した。
ベスパと銃を構えたジークがリフトグリップに掴まって流れていった。


その頃、地球上、ダカールの地球連邦政府の議事堂近くのホテルで斉天准将が暗殺された・・・・・。
カオス派の法案が議決される前の晩であった。
斉天の護衛という形でダカールに同行していた西条は、銃撃を受け、瀕死の重傷を負った斉天から最後の言葉を聞いていた。
「君の父上、アルベルト・ジャオンは独裁国家の国名にされるような方ではなかったのだ。彼の意思は新たな地球人の再生を語られた方だ。君が逃げ回るのは良いが、それではカオスのような男を跋扈させるだけだ。人の改革を示すには君はICPOの指導者になるしかない。君はパイロットで終わってはならん男だ・・・・・分かるか・・・・ジャスティス・ジャオン・・・・ジャオンの名を汚さないでくれ・・・・・」
西条は、その斉天の言葉に涙を湛え、ダカールを脱出しなければ自分もまた同じ運命になると予感していた。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa