ザ・グレート・展開予測ショー

二人の想い(前)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/12/12)

「おキヌちゃん・・・・・・そろそろ・・・・・・」
横島は腰に回した手を引っ込めながらおキヌを見下ろした。
「・・・・・・・」
「おキヌちゃん?」
「・・・・・あ・・・・すみま・・・・・・せん・・・・・・」
「・・・・・・!」
横島はこの時、初めておキヌの異変に気づいた。おキヌの顔が異常に火照って見える。
横島は慌てておキヌの額に手を当ててみた。
「・・・・・すごい熱だ・・・・・!!どうして・・・・・・!!」
「あれ・・・・・私・・・・・熱、あるんですか・・・・・・・でも、大丈・・・・・」
バタッ
おキヌの体が力なく横島の胸に凭れ掛かった。
「・・・・・ご・・・・ごめんな・・・・・・さい・・・・・・」
「と、とにかく医務室に行かないと!俺、おぶってやるよ!」
「・・・・すみま・・・・せん・・・・。会った早々・・・・迷惑かけて・・・・・・」
横島は意識が朦朧としているおキヌを背負うとバッと床を蹴って医務室へ流れていった。
「・・・・・・おキヌちゃんしっかりしろ!」
「(ぼそ)・・・・・・横島・・・・・さん・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・大好き・・・・・・・・」
「―――――!!おキヌちゃん、頭大丈夫かっ!?熱が相当あるな・・・・・・・・」
「・・・・・・もう・・・・・・・」
「え・・・・?」
「・・・・・・・・・・」
「うわごとだよな・・・・・・・・」


医務室――――――
「どうなんだ、おっさん!?」
「うむ、この時代の医学はかなり発達しとるな!」
「そうじゃねえだろ!おキヌちゃんの容態だよ!」
「ん?ああ、それなら心配いらん。ただの過労による風邪だ。二、三日安静にしていれば大丈夫だ。」
「そ、そっか・・・・」
ホッと胸を撫で下ろす横島。
「やれやれ・・・・・」
安西(勝手に命名)は横島のくずれた顔から目を離すと横のベッドで静かに寝息を立てているおキヌを優しく見つめた。
「・・・・・君が横島君だろ。」
「ああ、そうだけど・・・・?」
横島も安西に倣っておキヌを見た。
「氷室君は、君が地球に降りてる間、連日厳しいパイロットの訓練に励んでおったぞ。君が戻ってくるまでに正パイロットになって、前線をサポートするMSに乗りたんだと言っとった。何度か私のところに痛み止めを射ってもらいにきた時があってね、話を聞いたんだよ。」
「・・・・・おキヌちゃんはパイロットに向かねえよ。」
横島は厳しい表情で声を押し殺すようにして言った。
「本当にそう思うかね?」
「・・・・・・・・・・」
「彼女の操縦を見ただろう?今ではディアスやノモ程度のBクラス以下のMSならなんでも自在に操れるだろう。」
安西は静かに立ち上がるとおキヌの額の濡れタオルを洗い直してやった。
「私には分かる。・・・・・この娘にはパイロットの資質がある。もしかしたらニュータイプかもしれん・・・・・」
「―――――――!」
横島があまり聞きたくない言葉だ。
横島は俯いたまま頭の中で嫌な憶測をしていた。
ニュータイプは戦争の道具でしかない。
現に自分も周りからニュータイプと持て囃され、高性能のMK-Uを与えられて戦場の最前線を任されている。
もしもそこでおキヌも一緒に母艦の盾となって戦うことになったら・・・・・。
はっきり言って彼女を守れる自信はない。
シロの時ですらあっという間の出来事だったからだ。
「・・・・・・・・」
横島の苦悩が溜め息となって口から洩れた。
「まあ・・・・この娘がニュータイプかどうかは別にしてだな、短期間でそれだけ無茶をしたら誰でも体にガタがくるのは当然じゃわい。」
「おキヌちゃん・・・・・・」
横島は何ともいえない複雑な気持ちでおキヌの横顔を眺めた。
「・・・・・ふわぁ・・・・・それにしてもこんな時間に来おって、まったく。このところ徹夜続きで私は一睡もしとらんのだぞ。」
「んなこと俺が知るかよ。」
「だ、駄目だ・・・・。私はこれから30分程仮眠を取ってくるから、君がその間氷室君を見守っててやんなさい。・・・・・この娘もそれが一番嬉しいだろうから。」
「嬉しいって・・・・・・まあ・・・・・・分かった。」
「あ!そうそう、くれぐれも熱があるからといってこの娘を襲ってはならんぞ?」
「なっ!?」みるみる顔が紅潮してゆく横島。
「最近の若いのは病室でも平気でヤりおるからな。その歳になったら若さゆえの過ちでは済まんぞ。はっはっはぁ・・・・・・ね、眠い・・・・・・」
安西は中途半端に笑いながら重くなった瞼を擦り擦りゆっくりと仮眠室へ消えていった。
「・・・・あ、あんのエロ親父が!」
横島は内心ドキドキしながら安西の後ろ姿が見えなくなるのを待ってベッドの脇の小椅子に跨った。
「だ、だいたい俺がおキヌちゃんに手出すわけ・・・・・・・・んっ!?」
椅子に腰掛けた横島が、ふと顔を上げるとパジャマ姿のおキヌのなだらかな胸の曲線が目に入った。
布団は熱いらしく臍のあたりまで下ろされている。
ごくり・・・・
生唾を飲み込む横島。
「(・・・・・風邪ひいてるおキヌちゃんて何か色っぽいよな・・・・・・はっ!れ、冷静になれ、俺!・・・今なら俺がおキヌちゃんを襲っても少年Aですむ!だからもうちょっと大胆に!・・・・・・いかん、いかん!おキヌちゃんは幼なじみだぞ!お、俺はなんてことを・・・・・だ、だが、しかし!!)
頭を掻き毟りながら必死で煩悩を打ち消そうとする横島。
今まで冷えきっていたものがここにきて少しずつ溶け始めているようだ(笑)
と、その時―――――
「・・・・・横島さん・・・・・・・」
「わあっ!?」
思いっきり椅子から転げ落ちる横島。
「お、起きてたのか?」
「ごめんなさい・・・・・・。心配かけちゃって・・・・・・・」
仰向けで寝ていたおキヌが、ゆっくり目を開けながら顔だけをちょこんと横島の方に向けて微笑んでいた。

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