ザ・グレート・展開予測ショー

幼なじみ


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/11/27)

「・・・・・?」
モニターを観察していたアシュタロスは、戦闘空域に異変が起きたとみた。
「なんだ!?」
「敵の高速飛行体が戦闘空域に入ったようです。」
「索敵班は何をやっていた!」
「作戦司令、この艦は正規の配備の三分の一の兵員です。」
ドボルザークの艦長が冷たく言った。
「分かっている!だからといって索敵が戦闘行動の基本であることには変わりがない!アポロ作戦の発令があるまでには練度を高めよ!」
「それはもう!」
艦長は、アシュタロスにそのあとを言わせなかった。


「ICPOも新型かっ!俺は新型を呼ぶ能力を持っているのかよ・・・・・」
雪之丞は、弓からICPOのスーツ・キャリアーから離脱した機体が新型と聞かされて自嘲的に言った。
スーツ・キャリアーから離脱したのは、タマモが操縦する新型MS『GZ』である。
タマモは、後退する弓と雪之丞のガスプレーを発見したが周囲の索敵に気をとられてその二機を見過ごした。
パイロットは、たえず戦闘を仕掛けてくる敵を重点的に見つけようとする。
「妙だわ。もう敵は後退したのかしら?」
タマモはアシュタロスの予定などは知らない。
アーギャマを仕掛けたMSが二機だけなどとは思いつかなかった。
新型のGZが来たので、後退をしたのだと思いたかった。
「ディアスが流れている・・・・・?」
タマモはアーギャマの位置をチェックしながらも、小竜姫が放棄したディアスに接近していった。
横島の眼前で接近してきたスーツ・キャリアーが速度を落とした。
「・・・・・!」
そのスーツ・キャリアーのキャノピーが横島の正面で開き、ノーマルスーツが立ち上がった。
そのノーマルスーツが手を上げた。
横島は腰のバーニアを噴かして体をスーツ・キャリアーに正対させた。
「横島さん!」
横島のヘルメットのヘッドホンにおキヌの明瞭な声が飛び込んできた。
「おキヌちゃん・・・・・・!」
「横島さん!掴まってください!」
そのノーマルスーツの手が伸びた。横島は接近するキャノピーに体を流して取りついた。
コックピットに立つノーマルスーツが横島のために体を後退させた。
横島はコックピットの上に体を流して覗き込んだ。
ノーマルスーツのヘルメットのバイザーの向こうには、おキヌの顔があった。
「おキヌちゃん・・・・!」
横島は、おキヌの肩に掴まってコックピットに足を突っ込んでいった。
「大丈夫ですか?怪我はしてませんか?」
「ああ、大丈夫だ。MK-Uを回収したいんだけど、分かるかな?」
「了解です!方向は掴んでいます!」
おキヌの自信あり気な返事に、横島は訳もなく心が躍った。
横島はバーニアを外してシートの背後に立った。
おキヌのノーマルスーツはシートに座り、おキヌはスーツ・キャリアーを操縦した。
スーツ・キャリアーはMS二機分ほどの装備と備品を運搬するための機体である。勿論、長距離を移動する時にMSを乗せられるだけのパワーがある。
それをおキヌが操縦しているのだ。
横島は宇宙の戦況がそれほどにも過酷になっていたのかと改めて思った。
「おきぬちゃん、小竜姫様のディアスの回収も確認してくれないか?」
「そんなにやられたんですか?」
「ああ、新型のMSだった。ほかにもやられている・・・・・」
「そうなんですか・・・・・・」
おキヌは言いながらも、てきぱきとアーギャマと無線連絡を開く用意をした。
「・・・・・ん!アーギャマ!」
おキヌは、いかにもパイロットのようにアーギャマに呼びかけるのだった。
「横島さん、聞こえますか!MK-U回収後、急ぎ帰投!この空域を脱出します!」
横島はようやく明瞭になったアーギャマとの通信を受信しながら、「どうしたんスか!」と聞いた。
「美智恵艦がいってます!厄介な敵がいるみたいです。そんな感じしませんか!」
ヒャクメがそういう言い方をした。
「そういう感じ?了解っ!おキヌちゃん、急いだ方がいい・・・・・!何かある空域なんだ。」
「新しいMS一機ぐらい持ってきても、歯が立たないらしいですね。」
「一機くらいじゃな・・・・・どういうMSなんだ?」
「横島さんが提案していたMSですよ。GZって名前も採用されました。」
「へー!あれが・・・・・?」
横島は、MK-Uを回収したGZの機体が接触してくるのを見つけて、その洗練された機体に見入った。
GZの目が横島に向かって輝いた。
タマモの挨拶である。


ドボルザークの医療室のドアを締めた弓は近づく人影に気づいた。
以外な人であった。
アシュタロスの白い上着が暗い通路に浮き上がり弓を認めて立ち止まったのである。
「司令・・・・・?」
「雪之丞中尉の具合はどうだ?」
「大丈夫です。すぐに戦線に復帰できます。」
「それは結構・・・・・・」
「なにか>?私に?」
「君の能力を認めたいと思ってな・・・・・。しかし、その君がなぜ自分より器の小さい男を気にするのだ?」
「・・・・・・?」
「君は野心家だと見たのだが、違うか?」
「私は雪之丞を一人前にしたいだけです。」
「クク・・・・・・残念だな。私は、君の欲望の全てを実現させられる男だと思っていたが、女に育てられたいとは思わんな・・・・・。どうだ?私の道具にならんか?少尉ならばもっといい女になれる。」
弓はカッとなった。
「司令!私は自分の気持ちを正確に申し上げました。なのにその言い方は無礼ですわ!」
「君は野心家だよ。君に野望がある限り、私に魅かれる君の気持ちは消えんよ。」
そのアシュタロスの一方的な言いように弓は呆然とした。
「破廉恥ですわっ!人に対してっ!」
弓はアシュタロスの背中に吐き捨てるように言ったが、当たっているとも感じていた。
ならば裏切ってやる。
アシュタロスという倣岸な男からそう指摘されたならば、それに反してみせるのも女性としての自尊心のありようだと思うのだ。
それが弓という女性の性であった。


「横島君、ありがとう。」
小竜姫がノーマルスーツで横島を待っていた。
「偶然です。GZが来なければ俺らやられてましたよ。」
「そうだけど・・・・・。あなたがいるから、私、生き延びていられるって思えるの。」
小竜姫は、ひどく女性らしいイントネーションで言った。
小竜姫の本性というのが、そんなところにあるのかと思うと、横島は嬉しかった。
「いや・・・・そんな・・・・・」
照れる横島のノーマルスーツのお尻を、小竜姫の手がポンと叩いた。
「ほら、そろそろおキヌちゃんの報告が終わる頃よ!」
「あ・・・・は、はいっ!」
横島は笑顔で敬礼するとフワッと浮いて勢いよく自室の方に流れていった。


着替えを済ませた横島は、艦長室の前の通路でおキヌを待った。
「・・・・・以上が西条大尉からのご伝言です。」
おキヌの声は横島にとって前部が快かった。
「ご苦労さま。さがってよろしい。」
美智恵の声に続いて、タマモの「失礼します」の声が聞こえた。
ドアが開き、おキヌとタマモが出てきた。
「横島、久しぶりね!あとでGZの整備教えるよ!」
「ああ・・・・・タマモ、元気そうだな?」
「うん・・・・・いつまでもシロのこと悲しんでらんないもん。あいつの分まで私が頑張んないと!」
タマモは元気にそう言うとエレベーターの方に向かった。
横島はタマモから目を戻すと、その視界の中におキヌの顔を一杯にした。
「へへ・・・・・久しぶりですね・・・・・・」
おキヌの鼻が動いたようだった。
「ああ・・・・・・」
横島はそれだけ言うとおキヌの腰に手を伸ばした。おキヌの体が、すうっと横島の方に流れた。
「お帰りなさい・・・・・・私、ずっと待ってました・・・・・・」
「ただいま・・・・・・」
横島の腕がおキヌを抱きしめると、おキヌの顔が横島の顔の横に流れてきた。
「おキヌちゃん・・・・・しばらくこうしてていいか。気持ちいい・・・・・・・・」
「んー・・・・・・!」
おキヌのやり場のなかった腕が横島の肩に回った。
二人の柔らかな抱擁が続いた。
と、ファイルに目を通しながらドアを開いた美智恵は、ドアの脇で抱擁を続ける二人を見つけて目をギロッとさせた。
その視線がおキヌの頭越しに見上げる横島の目とあった。
美智恵は、その哀願するような横島の瞳に黙ってブリッジの方に歩んでいった。
横島はおキヌの漆黒の髪に顔を埋めて聞いた。
「・・・・・MSに乗るのか・・・・・・?」
「いけませんか?」
「・・・・・好きじゃないけど・・・・・・・」
横島はそう言ったものの、まだ抱擁を解かなかった。
その向こうでエレベーターのランプがとまりドアが開いた。
だが、小竜姫はエレベーターから降りずに、またドアを閉じてしまった。

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