ザ・グレート・展開予測ショー

危機一髪


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/11/25)

「くっ、横島君の言う通りだった!」
小竜姫は迷わずに頭部を開いて、脱出ポッドを射出させていた。
「小竜姫様!!」
が、横島が構っている暇はなかった。
後方から迫るガスプレーは、接近するや変形をしてMK-Uにサーベルを振るった。
バァーン!NK-Uの背中の二本のバーニアが吹っ飛んだ。
「やろうっ!」
MK-Uがガスプレーの腕を掴む。
「何っ!?この声っ!横島かっ!」
ガガッ!ガスプレーが変形をする。
その勢いでMK-Uは手を離してしまい、態勢を立て直す前にガスプレーは見えなくなっていた。
「なんて奴だ!」
MK-Uのライフルの銃口が宙に迷った。
「ここまでだな!フハハハ・・・・・MK-Uが帰っていようとは思わなかった!弓、来なくていいぞっ!」
「アシュタロスが見ているわ!殲滅しないと!」
「分かっている!」
「うっ!?」
ビッビッ!!ビームが束になって迫った。
二機の無線の電波を探知されたのだ。
ガスプレーは退避行動に移りつつ、敵の中核が別の空域にあると想定した。
理由はなかった。
弓はビームが迫る空域からわずかに下、黄道面に対して南に向かって機体を降下させた。
MK-Uは、漂流する小竜姫の脱出ポッドをMK-Uの手で掴もうとした瞬間、下からビームが迫った。
MK-Uは反転しつつ脱出ポッドをノモの方に押しやった。
「小竜姫様を頼むぞっ!」
同時に左右からビームが走った。強力である。かなり距離をとらないと装甲を焼いてしまう。
「うわっ!」
被弾した。
激震を無視して横島は視線をモニターに走らせる。
眼前にはMS型の弓のpガスプレーがあったが、横島にはその識別はつかない。
「雪之丞っ!」
MK-Uは左の腕が動かなかった。急速に後退する。
モニターに戦闘の様子が映されていても、それは小さな光の点滅にしか見えない。
「敵はアーギャマらしいです!対艦隊戦用意を!」
「任せる・・・・・」
モニターを凝視するアシュタロスは、艦長に言う。
「やはり違うな・・・・・・」
と独り言を言った。
「・・・・・木星を感じさせるな、あのアーギャマとかいう船は・・・・・」
アシュタロスは木星でヘリウムの採集をしてきた男である。常に足下に広がる木星のジリジリとする威圧感を思い出したのである。
アシュタロスの傍らに立って観戦をするベスパは、アシュタロスが苛立ったのを気にして見上げた。
木星は、その重力で近くにあるものを引き込んでいるはずなのに、まるで下から押し上げられるような感覚をアシュタロスに与えたのである。
アーギャマは、それと同じなのである。
アーギャマは人の作った物である。なのに木星に似た力で人を引きつけ、撥ねつける威圧を示しているのである。
「嫌いだな・・・・あれは・・・・・」
ベスパは、アシュタロスの手がギリッと肘掛けを握りしめる異常な力を見た。
アシュタロスは視線をモニターから移して、
「索敵用テレビ・アイの三分の二をガスプレーに向けろ。戦闘記録を万全にする。」
「しかし、それでは周囲の索敵が・・・・・」
「この空域にそうそうICPOがいてたまるか!」
「了解。」
「雪之丞、弓、手並みは見ておかんでは指揮ができん・・・ベスパも見ておくんだぞ。」
ベスパは、椅子の肘掛けを握りしめる力を示したアシュタロスが、それを忘れたかのようにベスパに穏やかに言ってくれたのが嬉しかった。
「はい!」
ベスパは快活に答えざるを得なかった。


「敵艦は一隻?妙ですねー。他にも艦隊がいるはずです!索敵っ!」
ブリッジではヒャクメがマイクにかじりついていた。
「どうしたのっ!」
美智恵は、さすがに怒鳴った。
「データにはありません!前にある艦は新型艦です!」
「・・・・新型?・・・・対艦隊戦の用意っ!なに?」
「ブルーノアの新型艦ではないでしょうか?」
「あり得るわね。大きいの?」
「アレキサンドリャーなんてものじゃありません!」
美智恵は、その報告にゾッとした。
「ラーデッシュはどうなっているの?近くにいるはずだけど!?」
「キャッチできません。輸送艦が移動中であるのを三時間前にキャッチしてますが、それも隕石流に隠されてしまって!」
美智恵は、アーギャマを後退させたい衝動に駆られたが、MS隊を発進させてしまった今となってはそれもできなかった。
キャプテンシートに座っているしかないのだ。
横島は、正面のガスプレーが長いビームランチャーをアーギャマに向けようとしているのを阻止しようとして追尾していた。
が、左からもう一機、同じ型のMAが迫ったのを知って愕然とした。
「二機いるのか!?」
MK-Uに比べて、火力も機動性も明らかに上の機体であった。
しかも、既にMK-Uの左腕は被弾していた。ナパームを投げることもできないのだ。シールドを支えているだけである。
「やべえな・・・・」
そうはいいながらも、横島はMK-Uの機体の回転運動の慣性を利用して、スリップタイムマイン(時差時限空雷)をばら撒いた。
アーギャマを狙撃しようというガスプレーを牽制するためだ。それは、多少の時間差をもって爆発する空雷である。
「こなくそっ!」
雪之丞のガスプレーの肩のビームがMK-Uの頭部に当たり、バルカンポッドが自動的に放出されたものの、MK-Uの後頭部に損傷を受けた。
コックピットのモニターが半分死んだ。
「くそ・・・・・!」
雪之丞は、MK-Uの動きを止めたほうが弓の支援になると判断して変形をするや、MK-Uに組みついて腹部を締めつけた。
その背後ではスリップタイムマインが次々と華を咲かせていた。
「う、嘘だろっ!?」
「タイガーの仇は討つ!・・・・・うおっ!?」
雪之丞のガスプレーの背後で閃光が膨れた。ガスプレーの機体の装甲が砕け散った。
「邪魔だとっ!?」
雪之丞のコックピットのモニターも半分死んでしまう。
「く、くそが・・・・・!」
その敵の動揺を横島は感知した。
MK-Uの利き腕が雪之丞機を押しやった。が、ガスプレーはMK-Uのシールドを掴んで離さない。
横島はライフルを構えさせて当てずっぽうに発射した。しかしガスプレーもまた、MK-Uのコックピットのハッチを蹴り上げていた。
ビームも使ったらしい。
横島は正面のハッチが赤く焼けるのを見た。
「あっ!?」
震動が静まりながらも、横島はモニターが完全に死んだのに危険を感じた。真っ暗なのである。
それは宇宙の感覚ではない。
「開けっ!」
横島は手探りで足の下のハッチを排除させるレバーを引いた。
ドッ!白い煙がコックピットを満たし、横島は焼け爛れたハッチが星々の中に吸い込まれていくのを見た。
シートの後ろからバーニアを取り出すと、腰につける間もなく脱出した。
動かなくなったMSにいることは一番危険なのである。敵は、必ずトドメを刺しにくるからだ。
横島は宇宙を漂いだした。
体を三百六十度回転させて、戦況を観察した。まだ救助信号を出す時ではない。
月と宇宙の間の空間ではビームが交錯していた。
かすかにアーギャマの光らしいものが見えた気がしたが、漂う視覚で視認できるものではなかった。
人ひとりの大きさなどは、宇宙ではないに等しかったが、横島は宇宙でおぼれる感覚を持たない自分の慣性に感謝はした。
しかし、横島は救助されない時のことだけは考えないようにした。
MK-Uの機体が以外に近い距離に流れていた。
ガスプレーの姿は見えなかった。
「・・・・・!?誰か俺を呼んでる・・・・・?」
横島はゾッとした。
まだ失神もしていないし、パニックにも襲われていない筈なのに、そう感じたからだ。
「MK-U、聞こえますか!MK-U!」
そう聞こえるのだ。
「油断した・・・・・新型はきつい敵だって分かってたのに・・・・・これも甘えだってのか?男は戦場でしか役に立たないって言った小竜姫様の言う通りにもなんないで、俺もおふくろ達の処に行くのかよ。・・・・・・いやじゃーっ!!真面目腐ったまま死にたくねーっ!!・・・・・まだ・・・・・死ねねえ・・・・・・くそ・・・・・。」
横島は自分がまだ思考できることを試しながら半分観念していた。
「MK-U!応答してください!」
「・・・・・おキヌちゃん、迷惑ばっかりかけてごめんな・・・・・・」
「横島さん!帰ってきているんでしょ!」
「・・・・・おキヌちゃん・・・・・・?」
横島は思考をやめて周囲を観察した。
ヘッドホンからおキヌの声が聞こえたのは確かだと思った。
バアッ!そのビームの直撃で、雪之丞のガスプレーの脚が吹き飛んだ。
そして、その後、ビームが来た方向からは、ひとつの機体が出現した。
それが二機のガスプレーを掠めて急速にターンをする。
「なんだっ!?」
雪之丞は半分死んだモニターに、その機体を見た。
雪之丞機は、機能が生きている右の手で弓のガスプレーに掴まっていたのだ。
そこを直撃された。
雪之丞は、煙が吹き上がっているコックピットで怪我をした足に止血手当てをしていたのだ。
「援軍かっ!」
さらに強力なビームの火線がくる。
それは過去のMSのものではない。
「戦艦の大砲を持ってきたのかっ!」
「アーギャマに、こんな運動性はないはずよっ!」
弓は雪之丞を救出する方を選びたかった。しかし、新たな敵がこのまま後退させてくれるとは思えなかった。
「・・・・・・?」
横島も見慣れない機体が旋回するのを見た。
それが、ふたつの機体に分かれたように見えた。
そのひとつが横島の方向に迫った。
横島は救助信号を上げた。スーツ・キャリアーが接近をしてきた。

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