ザ・グレート・展開予測ショー

雪之丞の背後


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/11/23)

「・・・・カオス閣下は、地球の重力に引かれている人々(地球から離れたくない人々)を根絶やしにするために地球連邦軍をカオス教にする予定でいるのだ。」
「えっ・・・・・?」
「戦争を起こして地球経済を徹底的に窮乏に追い込めば地球上の人間は餓死だな。そうすれば、ICPOの言う通りに地球から人々はいなくなり、地球は自然の手に戻るだろう。」
「そのために戦争?カオス教とICPOは同じ目的で戦っているとおっしゃるのですか?」
「表面的には、だ。問題はその後だ。」
「分からねえな。」
さすがに雪之丞が弓の後から口を挟んだ。
アシュタロスは雪之丞に応えた。
「その後の覇権を誰が握るかで、地球圏はどうとでもなる。ICPOならば絶対民主政治に戻る。カオス教ならば軍事政治だ。宇宙戦争がしょっちゅう起こる世界だ。ともに良くないな。地球圏を治めるには新しい天才が必要だと思えんか?」
アシュタロスは、このような話を雪之丞と弓にする機会を待っていたのだろう。
確信を持った言い方をした。
雪之丞は勘が良い。ズイと前に出ると、
「その天才があんただってのか?」
「ク、クククク・・・・・」
アシュタロスは嬉しそうに笑った。ひどく口が歪む。
「私はそんなに傲慢に物を考える人間ではない・・・・・私は天才が至る道を開く立場の者だと思っている。戦争終結後の支配者は雪之丞中尉、君かもしれんが、弓かおり少尉、君かもしれない。私は女系政治が今後の世界のありようだと思っている。それを見届けたら私は恒星旅行にでも出るさ・・・・・・」
「・・・・・よく分かるお話ですが、なぜそんな話を私たちに?」
ベスパは、そのアシュタロスの最後の言葉にその場を外した。
『・・・・・戦争が終わるとアシュ様は行ってしまうのか・・・・・』
ベスパは微かな動揺を感じた。
アシュタロスはパイロットのチェック票を確認して立ち上がると、弓と雪之丞に笑って見せた。
「良く働いて貰うためには、私に気持ちを分かって欲しいからだ。ガスプレーは、我がMS隊の中核である。ジブロー以来、雪之丞中尉の戦歴を見て気になってな。中尉は運が良いパイロットだ。度々の戦闘にに必ず新しい敵と遭遇をしている。敗北もやむを得ない。しかし、生き延びてきた経歴は大切にして欲しいものだ。弓少尉は、よく補佐をしてな。」
「ハッ!」
アシュタロスは頷いて、その場を後にした。
雪之丞は、口でこそ自分が傲慢ではないと言うアシュタロスの態度に、きな臭いものを感じた。
「・・・・・弓は信じるか?奴の言葉・・・・・・」
「やり方でしょ?初めて指揮をとる若者の意気がりよ。心意気としては分かるけど・・・ああ・・・あの態度が嫌いなのね?」
「アシュタロス奴・・・・・俺たちを働かせるための当てつけさ。」
「雪之丞、私がジブローであなたを助けた勘を裏切らないで欲しいわ。」
二人はノーマルスーツルームに向かった。
「現実は奴の言うような大風呂敷の話だけでは何も動かん。俺たちはドボルザークの能力を最大限に利用して打倒アーギャマを目指せばいい。そうすれば厄珍だって使える立場に立てるさ。」
「そうね。期待しているわ・・・・・雪之丞。」
「勿論だ・・・・・」
それから半日と経ってはいなかった。
ドボルザークのブリッジからガスプレー隊の発進が命令されていた。
「なぜでありますか?敵の艦影はキャッチしておりません。」
索敵仕官の問いにアシュタロスは短く答えた。
「右前方にプレッシャーを感じたからだ。不服か?」
「いえ・・・・・プレッシャーと言いますと?」
「口では説明しづらい・・・・・。敵らしい・・・・・・」
雪之丞の乗るガスプレーは可変MSである。
ドボルザークから発進したガスプレーは、MA型で飛行していた。MSのままでいるよりは現在の地球圏では安全であった。
一年戦争以来、地球近くの宇宙はゴミが多いのだ。MAにすることによって装甲を厚くすることができ、それだけ安全性が高くなったのである。
雪之丞の周囲のモニターでは宇宙が左右上下に流れていた。
雪之丞は、後方に追尾する弓のガスプレーの動きが良好なのを自分のことのように嬉しく感じていた。
それにつけてもアシュタロスは気に入らなかった。
「口では何とでも言えるんだ。アシュタロウさんよ・・・・・戦争が終わったところで、自分だけいい思いしようってんだろ?俺にとっちゃ。お前さんも蹴落とす敵だな・・・」
と、スクリーンの一角がキラリと光るものがあった。
「?」
モニターの一部を拡大する。アーギャマであった。
「・・・・俺は、ついている。・・・・・運も実力のうちだというのを信じる。そういった人間についている別の力を信じなけりゃ、アシュタロスには勝てねえ・・・・・!」
雪之丞は操縦桿を倒した。
が、もともとこの索敵行動が、アシュタロスの勘の良さで発令されていることを雪之丞は忘れていた。
「雪之丞機、敵を捕捉!」
「よし!第十三ザック隊、発進用意のまま待機だ。」
「ハッ!」
「ガスプレー二機の手並みを見せて貰うのが目的だ・・・・・。本艦は危険のない程度に戦闘空域に接近する。」
アシュタロスはガスプレー二機のパイロットの顔を思い浮かべて一人ほくそ笑んだ。
「あの女、弓といったか・・・・いいパイロットになれる素質はあるようだが、あの女、私と雪之丞を比べる素振りがみえる・・・・・」
アシュタロスのなかのサディスティックな感覚がキリッと鳴った。
アシュタロスは自分のそのような気性が十分に分かっていた。


「総員、戦闘配置!」
アーギャマの艦内放送が、ヒャクメの声をヒステリックに響かせた。
横島は物もいわずにノーマルスーツを着込んだが、小竜姫の方が早かった。彼女は、お先にと声を掛けて、ノーマルスーツルームを飛び出していた。
「・・・・・・・!」
横島も一息遅れて走り出しながらヘルメットを被った。
小竜姫は、まだ横島を甘ちゃんだと思っていると今の言い方でも分かった。
MSデッキからカタパルトデッキに向かって移動する甲板の上には小竜姫のディアスが移動していた。
他に、ノモが三機、反対のカタパルトデッキに出ようとしていた。
横島は体を流してMK-Uのコックピットに流れていった。
「小竜機、カタパルト装備っ!」
その声が横島のヘッドホンにも飛び込んできた。
「敵はMS一機の模様!全周囲、索敵っ!」
ブリッジのヒャクメの声だ。
「出ます!」
ドウッ!小竜姫のディアスが白いガスをカタパルトから噴出させて発進をしていった。
続いて数機のノモが出た。
ようやくMK-Uをカタパルトデッキに出す順番が回ってきた。
「俺が甘えてるって・・・・・俺は故郷の宇宙に甘えてるんだ。恋がどうの、おキヌちゃんがどうのなんて関係ねえっ!」
「MK-U!何してるんですっ!」
ヒャクメの声が横島の耳を打った。
「噴き上がりが悪いんス!敵は!」
「まだ二機のみです!」
「捜して下さいっ!そんなことはないはずです!MK-U、出るぞ!」
「了解!」
横島は自分の曖昧さを見破られるのを恐れて嘘を言った。そして、MK-Uを発進させた。
「変だな・・・・・?地球と同じパターンを踏んでいるような気がする・・・・・」
横島は、前方に展開する味方機の航跡を見守りながらも、宇宙が一面、奇妙な気配に満たされているような感覚に襲われていた。
そう、索敵をした時のように宇宙を感じるというのではないのだ。
新型が出てくる時の戦場の感覚、パターンといったら良いか?そんな鋭い気配を感じたのである。
絶えず新しい敵と遭遇した時の圧迫感に似ていた。そういった空気を感じるのだ。
宇宙に空気は無いが、それに代わる気配を感じ取れるのだ。
波動といったらよいだろうか?
「・・・・・・新型が出るな・・・・・」
横島はMK-Uの出力を上げると前方の小竜機に接近していった。
小竜姫の操縦するディアスにMK-Uの腕を伸ばして接触をする。
「小竜姫様!」
「・・・・・」
応答はなかった。
「小竜姫様!」
「何?」
「ただのMSじゃありません。注意してください!」
「了ー解!・・・・・男の人って戦争になると元気で頭も回るみたいね。」
「・・・・・!悪いっスか!」
横島は、あんたは俺の姉さんじゃないんだろっと、怒鳴りたかった。
小竜姫は、まだ自分を子供だと思っているのだという不満がある。
が、横島も以前とは違っていた。
横島は、そんな自分にとらわれてはいけないという自覚も持っていたし、なによりも外界の気配を正確に感じ取れるセンサーが働いていた。
「来たっス!!」
横島は突然、怒鳴っていた。
同時に横島機と小竜機の間をビームが貫いていた。
横島が、感じ、二機を分けるように行動をしていなければ直撃を受けていただろう。
と、動きが遅かった小竜機を選ぶようにして、MA型の雪之丞機のガスプレーが接近してきた。
その時は、小竜姫もまた拡大モニターにガスプレーの姿をとらえていた。
「・・・・・!・・・・・横島君の言った通りっ!?見たことのないMS!?」
「・・・・・・・!?」
横島は雪之丞機が小竜機を追うのを見て、MK-Uのライフルを撃った。
雪之丞機はパッとかわすや間近に迫り、小竜機を見た。
ライフルを撃つ間合いではない。
「くそっ!」
雪之丞はガスプレーを瞬時に変形させるや、小竜機の頭をガスプレーの足で蹴っていた。
小竜機の頭部のバルカンが発射されようとした時であった。
バルカンが吹き飛び、それがディアスの後方で爆発した。
その時はガスプレーはかなり離れ小竜姫のディアスはよろけるようにMK-Uの前に出た。
「くっ!」
小竜姫はバーニアを噴かして態勢を立て直した。
その一瞬にガスプレーはMA型に戻って迫り、MK-Uの牽制攻撃をかわし、ビームを撃って反撃をしていた。
早い。
小竜姫のディアスの肩が撃ち抜かれた。
「あ・・・くっ・・・・!」
ドウッ!
ディアスの背中が爆発した。

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