ザ・グレート・展開予測ショー

バースデイ(6)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/11/22)

 「で、あんたら一体なんなんだ?いきなり来るなり火をつけたり蹴りくれたり・・・」
研究員は桐斗にヒーリングをしてもらいながら、恨めしそうにヒノメと螢を見る。
「だからねおっちゃん、この子について何かしらないかって聞きに来たのよ」
螢はばつが悪そうな顔をしつつも説明をした。
「いいのよ螢、こんなやつ」
誤解とは言え胸をまさぐられたことを根に持っているのか、怒りと苛立たしさで顔をしかめながらヒノメがいう。
「だからそれは悪かったって。しかしあんたも悪いんだぜ?」
「何で?」
「こんな場でノックもせずにドア開けたら誤解されるに決まってるだろ?」
「そんなのあんたの勝手じゃないの。第一一応霊能者でしょ、人と幽霊の区別ぐらいつけなさいよ」
「38時間寝てないと霊感も鈍るんだよ。俺だっていっぱしの研究者にしてGS免許取得者だ」
研究員は桐斗をやんわりと押しのけると奥のデスクの引出しから無造作に免許証を取り出すと、ヒノメに突きつける。
「新條鬼郎…変な名前」
「それは言わない約束だろ」
「いまどき鬼郎なんて何が悲しくてそんな名前を・・・」
「うちの一族の男は皆名に鬼の一文字がつく。弟も兄貴も鬼の一文字を冠してる」
免許証をポケットにしまいながら更に、
「俺の中には鬼の血が流れてるんだとさ」
と、大して気にもとめない風に言った。
「うちのママは前世が魔族って言ってたけど、同じようなものね」
「まぁ、確かに同じ様なものかもな。さてと、とりあえずなんか飲むか。話はそれからだ」
鬼郎は給湯室の方へ向かうと、缶ジュースを4本を持ってきた。
「こんなもんしかなかったが、ま贅沢いえる立場じゃあねえよな」
よく見ればけっこう真面目で冷徹そうで少しふけた顔をしているが意外に人懐こい笑みを浮かべる。
『私のがないですぅ』
ルーが悲しげな声で言うと、鬼郎は少し考えて、
「これでいいか。なあに大丈夫、ちゃんと消毒して洗ってある」
と実験台の上から小さな匙を持ってくる。
 それを先だけ残して無造作に折ると『ルー』に渡した。缶を開けるとスポイトですって匙へあける。
「これならいいだろ?」
『おじさん、見かけによらず優しいですぅ』
「俺まだ27なんだけどなぁ。やっぱおじさんか」
うなじを掻きながら、ぼやく。
「助平なおっさんじゃない」
ヒノメが悪びれもせずに言う。
「そんなこといったらヒノメサンだっておばさんって事になってしまいますよ」
聞こえるか聞こえないかぐらいで言う桐斗。
「桐斗君、何か言ったかしら?」
「いえ、べつにぃ」
ニコニコ笑いながら桐斗を見るヒノメ。桐斗は何事も無かったようにその視線を受け流す。
「さて。話はこの『精霊』事だったな。残念ながら俺はよく知らない。俺はここに入社してからほとんどこの部屋に入り浸って霊能用具の研究開発にいそしんでいたからね」
ほとんど、というところをわざと強調して言う鬼郎。その顔には僅かに期待を誘うような笑みが浮かんでいる。
「もったいぶる人は嫌い」
不快そうなヒノメ。まあまあ、と桐斗とがたしなめる。
「俺ははっきり言ってまだ入社半年の下っ端なんだよ。だから表の仕事についてはしっていても裏については知らされていない・・・」
「うら?」
「あのねぇ、こんな霊能研究所が表の、破魔札とかの研究販売とかの仕事だけで食っていけると思うのか?確かに国とかGS本部からとかの助成金もある。が、そんなもん諸経費で一瞬で消し飛ぶような金だ。でも金は要る」
「で、裏の、ね。あんた、ほんとにそんなこと喋ってもいいの?」
「…言わなきゃいわんで何されるかわからないだろ」
いきなりぼこぼこにされたのが効いているらしい。
「で、聞いた話だと地下研究施設で、『ゴーレム』とか、んと、その『まの字』の研究が行われてるそうなんだわ」
「…それって」
ヒノメの顔ににわかに緊張感が走る。鬼郎は目線を走らせ、ヒノメを制する。
「・・・とにかく、ルーちゃんはそこでサンプルとして捕らえられた妖精である可能性があるって事だ。記憶を失ってすぐにこの場所に気付いたからここを家と勘違いしたんだろうな」
『そうですぅ?』
「とにかく記憶が戻るまでは養生することだな。それまでは彼女達が面倒見てくれるさ」
「ちょ、おっさん勝手なこと」
ヒノメが少し困った顔をする。するとルーはそれを敏感に感じ取ってか、手に取った匙をおくとフラフラっと飛び上がった。
「ルーちゃん?」
螢が声をかけると、ルーはさみしげに笑って、
『・・・地下室に・・・何かあるかもしれないのですぅ。私一人でいくですぅ』
と部屋を飛び出していってしまった。
「どこ行くの?」
慌てて追おうとする螢の肩を桐斗が掴む。
「大丈夫ですよ螢さん。待っていれば戻ってきますって」
笑って言う桐斗。ただその笑みにほんの少しだけぎこちなさがあるのを螢は見抜いた。
「はなしてよ」
強引にその手を離そうとする螢。
「まってろって。あの妖精は俺が何とか探して捕まえてやるから」
「私が行くの!」
嗜めようと鬼郎が肩に手をかけた瞬間、螢の姿が一瞬ぼやけたように見えた。
「え?」
気付いたときにはすでに部屋を出て行くところだった。
「幻術か」
鬼郎が舌打ちする。
「地下研究室に行く気だろう、すぐ追うぞ」
「地下はまだ人がいるみたいですね、その口ぶりだと」
「いる。捕まったら事だぞ」
焦げた白衣の上にジャケットを羽織る。
「あんたらが来なけりゃいい給料でのうのうと仕事が出来てたのに、ったく」
「そんなにヤバイの?」
「ああ、30年ぐらい前にぽしゃったある人工魔族兵器製造プロジェクトの生き残りがかかわってるらしいからな。侵入者が子供でも平気で殺すぞ」
桐斗の顔から血の気が音を立ててひいていく。
「大丈夫よあの子がそう簡単にやられるわけないわ」
ヒノメは言いながらデスクの上に乱雑に置いてある神通棍2本と破魔札をさささっとバックに詰めた。








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