ツナさん
投稿者名:バースデイ(5)
投稿日時:(00/11/ 9)
裏手に回っても特に変わったところはなかった。
いたって普通の研究施設である。
「表の方は開いてたっけ?」
「いや、たぶんしまってましたよ。たしか三階に電気がついてたと思いますけど」
「裏口があるんじゃない?」
薄暗い中を見回すと、奥の方にスチールのドアがある。桐斗が螢に促されて鍵がかかってないかドアノブに手をかける。
「開いてます」
三人と一匹は向かい合って頷くと、ドアを開ける。
ドアを開けると中は表から見たとおり電気はついてない。
すぐ脇に受付らしき物があったが、だれも居なかった。
「これって不法侵入でしょうか?」
桐とが心配そうに尋ねると、ヒノメがさばさばと、
「捕まらなければ罪は成立しないって、あ、これ姉さんの口癖ね」
とと言い切ってずかずかと中へ入っていく。
「これも『ルー』の為なんだから。男だったら細かいこと気にしちゃだめよ」
螢に言われても、桐斗の罪の意識は拭われない。
「ああ、捕まったら刑務所に入れられてしまうのですね。父や母になんとお詫びを」
「あんたは14歳未満だから刑事罰には問われないでしょ?大丈夫よ」
「そういう問題じゃないでしょう、螢さん」
桐とにとっては正に冷や汗ものである。
「とりあえず3階に行ってみましょうか」
「そうね」
「ルーさん、何か思い出しませんか?」
『…よくわかんないですぅ』
「そうですか。やはり行ってみるしかないのですね」
「いまさらうだうだ迷ったってはじまらないでしょーが桐斗君!」
「そうよ、西園寺君」
「美神一族の人は怖い物知らずと言うか非常識と言うか…」
愚痴っている間に螢達二人は先にエレベーターへ乗り込む。
「ほらしまっちゃうよ」
「わぁまってください!!」
『あうぅ!!』
送れて飛び込む桐斗と『ルー』。
ドアが閉まると軽いGがかかるのが分かる。
『キャう』
「おっと危ない!」
飛んでいた『ルー』が床に叩き付けられそうになるが咄嗟にヒノメが受け止めた。
「大丈夫?ルーちゃん?」
『ありがとうですぅ、おねーちゃん!』
「思ったより早く動いてるのね、エレベータって」
ものの20秒で3階に着く。
「さすがに霊能研究所ね。ぷんぷん匂うわ」
「いやな感じですね」
「なんでだろ?」
「そりゃ、低級霊とか『飼ってる』からでしょ。ゴキブリの殺虫剤の会社がゴキブリ飼ってるみたいに」
「良いんですかね、そう言うのって」
「世の中、現世利益最優先の人が多いってよ。死んでからの事なんて考えてもしょうがないのは分かるけどさぁ、自分が死んでからこんな研究所の中でモルモルちゃんになることなんて想像つく?」
逆に尋ねられて桐斗は考えこむ。
「およびもつかないですね」
「でしょ?」
いちいち考える変わった人間は少ないだろう。ある意味人間なんてその程度である。だからどんな極悪な犯罪もできるのだろう。例えば殺人とか。
「ここの部屋ね」
話してるうちに電気のついていた部屋の前につく。
こんこん。
ドアをノックすると中から、
「あぁ、また来たのか。ったく」
とぼやく男の声がする。
「幽霊と間違えられてるみたいね」
ドアが開くといきなり20代前半のむさ苦しい研究員がそっぽを向いたままぬっと手をヒノメの胸に突き出す。指には破魔札らしきものが握られている。
「ほら、破魔札(五萬円)改造版だ。さっさと消えろ。…しかし随分暖かい霊だな」
ヒノメはこめかみをぴくぴくさせながらじっと研究員が気付くのを待つ。
「む!この感触はなかなか」
男はそのままの態勢で何食わぬ顔をして感触を楽しむ。
「…このセクハラ野郎ーーーーーー!!!!!!!!!」
プッツン。
ヒノメの頭の中で音を立てて何かが『切れた』。
その瞬間胸にあてがわれた手を払いのけ強引に胸ぐらを掴むと、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「燃えろ!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
炎はあっという間に研究員の白衣から上を包み込んだ。
「バカな男…」
螢がクールな表情で呟く。
「ヒノメさん、そのままではお亡くなりになられてしまいます!!」
「私の胸を只で触っておいて生き残ろうなんて一兆年はやい!!」
普段は比較的温厚な彼女も、やはりバリバリ美神一族のようだ…。普段温厚な分反動が大きい。
炎が消えると研究員はヘロヘロぺたんと座り込む。しかしすぐに気を取り直して、
「はぁはぁはあ、なんて悪霊だ!こうなったら対悪霊超強力札(当社費1.5倍)を使ってやる!!消え去れ悪霊!!」
どうして、見かけによらずなかなかタフな奴である。
「ど喧しい!!」
バシバシバシバシバシ…。
ヒノメはヘロヘロしている研究員に容赦なく平手を連発する。
「ごべんあざいごべんなざい、おっぎいおっぱいさん」
ぬっと伸ばした手が胸を挟み込む。
「胸に謝るな!!」
壮絶な平手にもめげない研究員にとどめの一撃とばかりに膝蹴りを叩き込むヒノメ。
「ごべば!!」
舌をかんだのか、奇怪な叫びをあげながら吹っ飛び、床に倒れる研究員。
倒れたあとも鼻を押さえながら何か喚いている。しぶとい男だ。
「この人、パパの遠い親戚かも…」
「確かに」
『心から他人でよかったと思うですぅ…』
なぜか納得する螢と桐斗。『ルー』は遠巻きにそれを眺めながら、しみじみと頷いていたのだった…。
続く。
今までの
コメント:
- ミスった…。題名と名前が逆だ……。何で気付かんかったんだろ…m(..)m。
今回の作品は「トーク」にこだわっていきたいと思ってます。ある程度個性が見えてくればなと。しかし美神一族二人が暴走しっぱなしになりそうで怖くなってきた・・・。 (ツナさん)
- 美神一族・・・・なんて恐ろしい響きなのでしょう(笑) (NEWTYPE[改])
- 研究員がつぼにはいってしまった(笑) (hazuki)
- 基本的に全員新キャラですから、この路線には賛成です。
確かに凄い奴だよ、この研究員(笑)。研究所の研究員と云う事は、当然白衣姿な訳で……ああ、登場するなり白衣が黒焦げにっ、血染めにっ!(合唱) (Iholi)
- ↑合唱してどうするよ(笑)。五右衛門シスターズもビックリ(しない)。 (Iholi)
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