ザ・グレート・展開予測ショー

バースデイ(4)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/11/ 6)

 夜の街は賑やかで、反面貪欲な人間の欲望が渦巻く。月明かりの夜は、特に。
 街を走り抜ける一台のスポーツカー。乗っているのは若い女と少年少女の三人組。
 目指すは『妖精』の家、と言ってもどこぞの会社の研究施設のようなものらしいが。
 記憶をなくした『妖精』を記憶を取り戻すために、車を走らす。
 「しかし妖精なんて初めてみたわ」
ハンドルを握るヒノメがちらりと助手席に座る螢の掌にちょこんと座る『妖精』を見る。
「しかも結界に体当たりなんて、一体何の目的でかしら」
「あたしに会いにきたのかな」
「なんで?螢ちゃん妖精に知り合いなんか居るの?」
「まぁ、一度会った事はあるけど」
言いながら『妖精』みて、
「こんな姿だったかしら。あんまりよく覚えてないわ」
「人間の記憶なんて曖昧な物だからね。それはしょうがないにしてもこの子、名前も分からないんでしょ?」
『わかんないですぅ』
「じゃあ名前、とりあえずの名前を付けてあげなくちゃ」
「名前、ねぇ」
しばし考えこむ螢。
後部座席から顔を乗り出した桐斗が、
「わかりやすい名前がいいですよね…。『ルー』なんてどうでしょう?」
「なんか違うような気もするけどぉ?」
『ルーですかぁ。いい名前ですぅ』
「ご本人は気にいった見たいだし、それでいいんじゃない?」
不満そうな螢をたしなめるようにヒノメ。
「ほんとの名前がわかれば、使わなくなる名前なんだから」
「それもそうね。じゃあ、あなたの名前は『ルー』に決定!」
『わぁいですぅ』
パタパタ飛び回って喜びを表す『ルー』。
「こんな狭い中で飛び回ってると怪我するわよ」
言ってるそばから窓ガラスにぶつかりそうになるルー。
『危なかったですぅ』
言いながら螢の掌に着地する。
「しかしこの研究所は一体なんなんでしょうかね、ヒノメさん」
「確か12、3年前に出来た除霊機具の開発会社だったと思うけど?」 
「…なんでそんな所が『お家』なんでしょうかね、彼女」
「さぁ。研究材料として飼われてたとか、そんな所じゃないの」
桐斗の疑問にヒノメがあっさりと答える。
「でも妖精って捕まえちゃいけないんでしょう?何とか条例とかで」
「表向きはね。でも裏じゃ何が有ったっておかしくはないわよ。厄珍さんの所に行けばいやでも分かるわ」
「あの人は例外だってママが言ってたけど」
「たしかにね。あれでも一応はプロだから」
露骨に嫌そう顔をするヒノメ。何か有ったのだろうか…。おそらくは暴利でアイテムを売りつけられたり、実験台にされたりしたのだろうが…。
「あんもう、また信号引っかかったわ!」
フピピピピ…。
ちょうどその時携帯電話の着信音がなる。
「仕事の話かしら、螢ちゃんちょっと出てくれる?」
胸のポケットから携帯を取り出すと螢に手渡す。
「もしもし」
『ケーイ、今何時だと思ってるんだぁ!!帰ってこーい!!桐斗そこに居るんだろう!?帰ってきたらぶっ殺すと…』
ぴっ
「だれから??」
「パパ」
「なんて言ってらっしゃったんです?」
「桐斗ぶっ殺すって言ってた」
「…今夜はかへりたくない…」
「大丈夫よ。心配しなくてもあたしがちゃんとかばってあげるから。どうせ逃げてもすぐにつかまるだけだし、運が悪かったと思って諦めるしかないわね」
「義兄さんだってそんな無茶はしないわよ」
「上空3000mから落とされたことが…」
「マジ?」
「よく生きてたわねぇ」
「ギリギリで助けてくれましたから」
「パパ、あとでお説教ね。ついでにママに浮気のことばらしちゃる」
『すさんでるですぅ…』
こんな家の身内に生まれなくてよかったとつくづく思う『ルー』であった。

 暗闇の中にそびえる研究所。研究所の入り口は以外にも開け放たれており、すんなりと中にはいる事ができた。
中の電気はほぼ全て消えており、緑色の光が廊下に反射して不気味に中を照らし出している。
 内部には特に変わった様子はない。普通の建物のように見える。あえて言えば空調ダクトの量が多いぐらいか。換気には気を使っているようである。
『ここがお家ですぅ?』
玄関前をパタパタと飛びながら呟くルー。どうもピンと来ないらしい。
「何か覚えてないの、ルー?」
「どんな些細なことでもいいのです、ルーさん」
交互に話し掛ける螢と桐斗の声にも答えず、じっとそこを見つめる『ルー』。
「いきなりはムリよ。とりあえず裏のほうも見てみましょう」
ヒノメに促されて裏手に回る3人と一匹(でいいんだろうな、たぶん)。
そこに『ルー』の記憶に関する物があるのだろうか、期待と不安に駆られる螢であった。






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