ザ・グレート・展開予測ショー

マリオネット・ルシオラ(2)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/11/ 4)

「・・・・・昔の記憶がないのに、ここの記憶がいったい何になるの!」
ルシオラはサイコを一歩前進させると、その拡散ビーム砲を直撃させた。
コーラルオリエンタル号の船首一帯が一瞬のうちに爆炎と閃光に包まれた。
「・・・・・・!?」
横島は、その瞬間にサイコに乗るパイロットがルシオラと分かった。
サイコと接触した時の感覚と重ね合わせると、そう考えるしかなかった。
わざわざ攻撃をする対象があの桟橋には無いのに、敵の巨大MSは桟橋を攻撃したのだ。
「・・・・ルシオラ・・・・」
横島は口の中でその名前を呼んだ。
『施設に収容されてさ、いつの間にかルシオラって言う名前つけられたんだ・・・・』
「ルシオラかっ!・・・・・ルシオラだったら!」
横島はMK-Uをジャンプさせてサイコの背後に取りついた。機動性は小型のMK-Uの方が格段に勝れていた。
「やめろっ!俺と宇宙に行こうっ!」
横島は接触回線を開いた。
「おまえがいけないのよっ!」
接触回線を通してルシオラの声が横島の耳を打った。
「・・・・ルシオラ!?」
「おまえは私を混乱させるっ!」
「そこを離れれば混乱はなくなるっ!」
「私の使命はMK-Uを倒すことよっ!それでいいっ!」
「ウソだ!・・・・お前は戦う人間じゃねえ!」
「そうしないと私の記憶が戻らないんだからっ!」
ルシオラの悲鳴だ。サイコの片手がMK-Uの腕を掴むや、放り投げた。
横島は思わずライフルを連射して、その腕を破壊しようとしたが、ビームの航跡はサイコの近くで歪み四散した。
MK-Uはバーニアを噴射して態勢を整えながら着地した。
ドドウッ!サイコの周辺に着弾の閃光が膨れ上がった。ピートのディアスが堪えきれずに攻撃をかけたのだった。
サイコの巨体がよろけて海の方に傾いた。
「ピートさん、やめてくれ!ルシオラなんだっ!」
横島はMK-Uをホバーリング走行でサイコに接近させた。
コーラルオリエンタル号に火が回ったようだ。
ドワワッ!サイコは、さすがに集中攻撃の中で機能低下を起こしたらしかった。
海に落ちた。
横島は、そのサイコの巨体の上にMK-Uをジャンプさせてサイコの肩に乗った。
「横島君っ!」
ピートは上空からMK-Uの不審な行動に攻撃を続けることができなかった。
巨体な機体を持つサイコは上半身を海面に出して鎮座していた。
横島はMK-Uを滑らせて、コックピットをサイコの顔の位置に固定した。
横島はハッチを開いた。サイコの肩の装甲に飛び乗りながらもサイコの攻撃など考えなかった。
「ルシオラ、聞こえるか。話がしたい。出てきてくれ、ルシオラ!」
横島はサイコの頭部の前で胸の方を覗き込むようにした。
と、横島の背後でサイコの頭部にあるハッチが開いた。
横島は意表をつかれて振り向いた。
「ルシオラ!?」
ルシオラは桟橋で会った時のままの服装だ。それは横島も同じだった。
「ルシオラ・・・・」
ルシオラは瞳に涙を溜めていた。
「・・・・・私は記憶が欲しいのよ。自分のことをもっと知りたいのよ・・・・・」
「だったらそんな処にいちゃだめだっ!」
横島はコックピットの正面のハッチまで歩み寄った。
「・・・・・MK-Uを倒せば、研究所は私の記憶を戻してくれると言ってた!」
「研究所なんて・・・・あてになるかよ!」
「自分のことを知りたいのがなぜいけないの!」
「ルシオラ・・・・・宇宙に行かないか?」
「宇宙・・・・・?」
「ICPOの技術ならお前の記憶を取り戻せるはずだ。一緒に宇宙に行こう。」
「・・・・無駄よ!・・・・ドグラ研究所でなければ、私の記憶はないのよ!」
「記憶ってそんなもんじゃねえっ!」
「私は記憶をドグラ研究所に取られているのよ。取られた処に行かなくっちゃ取り戻せないじゃないっ!」
サイコがルシオラの苛立ちを示すように動き出した。
横島は足を滑らせてMK-Uの方に滑った。
「おまえの顔は記憶を取り戻してから見るのよ!」
ルシオラは絶叫した。横島の体が転がり、辛うじてMK-Uのコックピットに滑り込んだ。
「・・・・・・!」
またルシオラと叫んだつもりだったが、声にならなかった。
サイコの機体が、いったん水中に没して再び姿を現した時には、それは四角な物体に戻っていた。
ドドッ!海面を揺する圧力が水面下で起こり、黒い塊が上昇を始めた。
横島はMK-Uの機体を破壊された桟橋側に寄せながら、呆然とそれを見守るだけだった。
サイコは海面を離れると巨大なテールノズルの閃光をMK-Uに浴びせて上昇していった。
MK-Uの背後から侵攻したピートのディアスが、そのサイコの機体に向けて数条のビーム砲を発射したが弾かれてしまった。
「横島君・・・・・」
ピートは、横島の奇妙な行動が気になって、それ以上の攻撃を続けるわけにはいかなかった。
MK-Uをなんとかしないと、全ての計画が実行不能になる。
「ルシオラ!」
ピートはヘッドフォン越しに横島の声を聞いて、その意味が分かった。
「・・・・横島君・・・・君もマリンに会ったのか?・・・・・」
ピートにも八年前の一年戦争で敵の女性パイロットに恋をしたことがある。その少女の名はマリン。
西条もといジャスティスとピートの間にいたニュータイプである。
あの時、ピートがマリンのMAを撃破した時に、ピートはマリンの絶叫を聞いた。
幻聴ではない。そう信じている・・・・・。
その時のマリンの絶叫と横島の若い命の叫びは同じであった。
「・・・・・今の横島君は、僕と同じなのか・・・・・・?」


ザックに収容されたヌルは後退するスードラに収容された。
「サイコが戻ってくる?MK-Uを落としたのか?」
「確認していません!勝手に後退するようです!」
ヌルがその報告を聞いている間に犬飼が降りてきた。
「どういうことです?」
「分からん。大尉がルシオラに会った時の状況を聞かせて欲しい・・・・・」
「はい・・・・しかし、ルシオラは戦闘的でありましたが・・・・・?」
「そうか・・・・・・・ミズ・リョウコ。」
犬飼は駆け寄るリョウコにどういうことかと聞いた。
「分かりません。本人に会うまでは・・・・・」
リョウコは眼鏡を外して上着の裾で拭うことに専念をした。
スードラはルシオラを待つために高度を低くとった。

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