ザ・グレート・展開予測ショー

バースデイ


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/11/ 2)

 「お誕生日おめでとー!!」
美神霊能事務所のリビング。
 中央には大きなテーブルが置かれ、さまざまな料理が並べられている。
集まったのは事務所の面々の他に美神美智恵と娘のヒノメ、パビリオも来ている。
「ほら螢、ありがとうは?」
忠夫の膝の上にいる少女は螢といった。なにを隠そう横島忠夫と美神令子の長女である。「螢ちゃんももう2歳になるのね」
頭をなでているのは女子高生になったヒノメである。
 髪形をショートボブにしているのは姉の令子に後姿がそっくりだかららしい。伸ばしていた頃寝ぼけた忠夫に後ろから抱きつかれたのがそもそもの原因らしいが。
「私も早く子供が欲しいです」
「おキヌちゃんもようやく結婚かぁ。幸せになるのよ」
「はい」
おキヌちゃんはオカルトGメンに勤務する西園寺タケルと婚約中である。どうも横島が結婚を決意する寸前までチャンスをうかがっていたらしいが、案の定美神さんと結婚したため西条の紹介でお見合いをしたらしい。忠夫も美神も面識があるが、忠夫と違ってなかなかの好青年のようだ。
「ローソクに火をつけようか」
「そうね、横島君、電気消してきて」
「横島君はやめてくれって言っただろ?令子」
「あ、ごめんごめん」
美神は相変わらず忠夫を横島君と言ってしまう癖が抜けない。結婚前の付き合いが長すぎたのが原因だろうか。
「相変わらずでちゅねあの二人は」
パリリオがくすくすと笑う。彼女は相変わらず小竜姫の元で修行中だ。5年程前、天竜童子と組んで一悶着起こしたのだがそれは別のお話。
「螢ちゃんの行く先が心配でちゅ」
「大丈夫よパビリオ。私がついてるから」
美智恵がにこやかに言う。彼女ももう50代なのだが、見た目にはまだまだ若い。
どうもGSという職業は老化防止効果があるらしい。
会話の最中、ヒノメが指先から火を出して、ろうそくに点火していく。
「べんりねぇ、ほんと」
「こんなときしか役に立たないけどね」
「電気消すぞ〜〜」
電気が消えると、美神に抱かれた螢の顔がロウソクのやわらかい炎に照らされて浮かび上がる。
「ぱ〜ぱぁ」
「んもう、ほんとに螢はお父さん子なんだから、ほらパパ、呼んでるわよ」
「おー」
暗がりの中、螢を抱き上げる忠夫。
だれからともなく、パッピーバースデーの歌が始まる。
「螢。みんながおまえを愛してくれてるんだよ」
忠夫が優しい声で語り掛ける。螢の表情がにこやかに笑う。
歌が終わると同時に、螢がロウソクの火を吹き消す。
「ハッピィバースデイ、螢」
忠夫が螢の紙にキスをしたその時。
吹き消されたはずのロウソクの火が再び燃え上がる。
「ヒノメ!」
「私じゃないわよ!」
「じゃあだれが?」
炎は異常なほど大きく燃え上がり、その姿が徐々に人型なを成す。
『ミツケタゾ!!』
徐々に顔が形成されていく。その顔は今まで見たこともないような顔。
『魔族の生まれ変わり、異端の者…今はなにも知らずせいぜい幸せに浸るがいい、だが十五の夜、必ずやその魂、その体を貰い受ける!!』
「てめぇ何者だ!!」
『我が名はゾルベ、魔の者なり…』
それだけ言うと炎は何事もなかったように消えた。
一同、呆然と今まで炎のあったその虚空を見つめる。
「一体なんだったんだ…」
忠夫が呟く。令子がそっと忠夫の腕を掴む。
「脅しよただの、そうに決まってる」
言いながらその手はかすかに震えている。
その夜はそこで解散になった。後日、事の真相を究明するため、さまざまな調査をしたが結局はなにも見つからず、この一件は悪戯という事で片がついた…。

時は流れる。螢二歳の誕生日に起きたこの一件も、時の流れとともに記憶の奥底に押しやられ、もはや忘れ去られようとしていた。
 そして13年後のその日は訪れる。
                        続く


 
 

 
 

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