ザ・グレート・展開予測ショー

エピローグ


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/10/31)

 臣志はただ虚ろな目で天を見上げていた。全ては終わった…のだろう。
 俺はただ胸の中にこみ上げるむなしさを、漠然と受け止めることしか出来なかった。
 俺はただの人殺しだ。臣志と言う男が、100%間違っているとだれがいえるのだろうか。彼は俺やおキヌちゃんと同じ、人だ。彼は生まれてからのさまざまな環境のせいで、歪んでしまっただけだったのではないのか…。本当は心のどこかに優しさや愛情を持っていたのではないか。
 死に際のあの安らかな、まるでそうなることを望んでいたかのような顔は、一体なんだったのだろうか。おキヌちゃんの一言を、『きっとそれが彼の最後の良心だったんです』という言葉を俺は胸の中で噛締めていた。
 彼の心はもはや死ぬことでしか、救われなかったのだろう…、と勝手に解釈することにする。
 あれから数分もしないうちにオカルトGメンの調査員達がやってきて事の後始末をしてくれた。あとの全てを任せることを条件に。上のほうに申請すれば賞金を頂けたらしいが、俺は丁重に辞退した。たぶん美神さんは怒るだろうが人殺しの代償に金をもらいたいとは思えない。
 有明不動産の面々は、数ヶ月のリハビリを要するものの、完治する事ができるらしい。
 とにかくこの事件のは世に出ることなくただICPOの機密書類の一つとして、闇から闇へと葬り去られることだろう。

 マンションは一部修繕を施して競売にかけられるらしい。事の真相はGメンの連中の裏工作でもみ消されるはずだ。
 
 もう、一週間も経つのか…。
 ベッドの上で天井を見上げながら、俺は溜め息を漏らした。
 洗濯物が散乱し、コンビに弁当の残骸が部屋の片隅で山になっている。
 時折美神さんかららしくもない励ましの電話がかかってきたりするが、俺の気持ちは沈んだままだった。
 仕方なかったの一言で済ますつもりは、到底ない。
 ゴンゴン
ドアをノックする音。おキヌちゃんあたりがお見舞いにでも来てくれたのだろうか…。
「ふぁぁぁい」
気の抜けた返事とともにゆっくりと腰を浮かす。
どんどんどん、どんどどん
ドアを叩く音がどんどん激しくなる。
「ハイハイ今あけますよ」
俺はTシャツにパンツ一丁という、何とも情けない姿のまま覗き穴から外の様子を見た。
「こら横島!!早く出てきなさいよ!!仕事がたまってるわよ!!」
そこにいたのは、怒髪天を突くほど怒り猛った美神さんの姿だった。
「すんません、今そんな気分になれないんで…」
俺はドア越しに言った。
「あんたねぇいつまでうだうだしてる気なのよ」
「……」
俺は沈黙した。俺だって如何したら良いかわからないんだよ!!
そう叫びたいのをぐっとこらえて、
「すいません」
一言だけ答える。
「……ああもう!!あけないなら打ち破る!!」
げっ!!もしかしたらとおもっとたが、そんなことされたらこんな安アパート崩壊してしまう!!
「わかりましたよ、あけますから、今あけますから」
「もうおそーい!!」
俺がドアを開けるのと同時に美神さんが神通棍を振り下ろすのが見えた。
「わぁぁぁぁ!!」
ゴケキョ!バチバチバチ!
「ギャァァァァァァア!!!」
全身に電撃が走り抜けるような衝撃が走る!!
「あ」
美神さんが一瞬戸惑いの色を見せるが、すぐに気を取り直して、
「横島君がいきなり空けるのが悪いのよ!!それよりほら、早く着替えて準備しなさい!!」
「会って早々ぶん殴られるとは思っても見なかったですよ」
俺はまだぴりぴりする体を無理矢理奮い立たせて部屋の奥へと下がっていく。
「まったく俺の事を何だと思ってるんだあの女は…」
「下僕!ペット!部下!セミオート盾!パシリ!………でパートナーよ(ぼそっ)」
「はいはいわかりましたよ。行きましょうか、美神さん!!」
なんか元気が出てきたような気がする。ったくあの人も素直じゃないことと強欲さと寝起きの悪さに関してはギネス級だからなぁ・・・。
 あんな美神さんを見てると、ついつい前世の事を思い出す。ったくあんなに可愛げがあったのに何でまたこうなってしまったのやら…。
「なんか言った?」
「いえ、別に」
勘の鋭さも世界一だ。
「ほら、早くしなさい!!」
もたもた靴を履いているとぐいっと腕を引っ張られる。
美神さんはそのまま黙って腕を組み引き摺っていく。
俺はどうにか靴を履き、そのまま隣に並ぶ。
…腕組むのなんて、何年ぶりだ考えてみたら…。
「で、美神さん、今日の仕事は???」
「遊園地で幽霊騒ぎよ。どうも敷地内にあった墓地をお払いしないまま移転させたらしくって、怨霊たちが山ほど沸いてるらしいわ。おキヌちゃんが修学旅行行っちゃって手が足りないのよ!!」
「てことは文殊の出番ですね?」
「頼りにしてるわよ!!」
へっ?美神さんらしくもない台詞だこと。
 そんなやり取りをしているうちに車に乗り込む。
「あ、それと横島君宛に手紙来てるわよ」
美神さんがダッシュボードから便箋を取り出し手渡された。
「だれからですか…」
俺は送り主の名を見て、正直びっくりした。
「あのおっさん…、生きてやがったのか…」
おっさん、いまやICPO直轄の国際刑務所のなかで一人寂しく空を眺めてるらしい。罪が罪だけに、たぶん一生でて来られないだろうが、ま、自業自得だ。
「死んでた方がよかった?」
「…まさか…ねぇ」
俺はうつむきながら自嘲気味に微笑む。
チラッと横を向くと、おいしそうな太ももが…。
「どこみてんのよ!!!」
ごきぃ!!
「ぐはぁぁ!!」
すぐさま美神さんの肘が飛んでくる。
「さぁ!!ぶっ飛ばすわよ!!」
美神さんが思い切りアクセルを踏み込む。
その顔は始めてあったあの頃とほとんど変わらない。ほとんど、変わらない。
俺は後頭部の痛みに耐えながら、ま、こんなもんかな、と思うのだった。
P・S。その時おキヌちゃんはバルム達に名前をつけていた。ただ素人目には同じ顔のバルムをどう見分け、どう名前を付けたのかは…定かではない。



                                   fin



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