ザ・グレート・展開予測ショー

対峙、決戦


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/10/27)

 死霊たちが紳士の体にまとわりついて、蠢き、うめいてる。
 一つ一つの顔が悲しげなうめきをあげる。
 俺は嫌悪感から吐き気を覚えた。
 ただ働きさせられてるんじゃねぇの、と。
 いやいやそうじゃなくて。
 俺は呼吸を整えながら頭の中に美神さんの入浴シーンを思い浮かべる。
 いかに格好つけようと、俺の霊力の根源は煩悩である。
 覗く、ばれる、殴られる、の三段活用が終了した所で右手に意識を集中、極限まで集中させるとぽぽむ、と文殊が出来た。今回は二つ。調子がいいときは三ついけるが今日はこの辺が限界だろう。そしてそのうちの一つを使う。
『癒』
の文字が浮かぶと体の疲れや傷が回復する。さすがに霊力はあまり回復しないが、これでそこそこは渡り合えるはずだ。
「さてと、最後に言い残すことは有りませんか、横島さん」
臣志が俺に歩み寄りながら口を開く。
「ないね。ここでやられる予定はないから」
霊波刀を発現させながら答える。
風が流れる。ぬれたコンクリートが日の光を反射し、綺麗に輝く。
 赤黒い死霊の鎧を纏った臣志の歩く姿が、一層無気味に見えた。
「…横島さん、あなたは面白い人だ。そしてお強い。最後に一つお聞きします。私と組んでみる気は有りませんか。あなたと私が組めば裏世界を牛耳ることも夢ではなくなる…」
「だれが自分より弱い奴と組みたがる?それに俺にはもうパートナーがいるんでね。少々わがままで強欲で人使い荒くて朝が弱くてじゃじゃ馬だけどね」
「…実に惜しい。残念でなりません」
「それに、俺は外道は嫌いだ!!」
俺は叫びながら一気に間合いを詰め、臣志の胴を狙って霊波刀を突き出す。
「ふん」
臣志はそれを鼻で笑うと、霊波刀を右手であっさり受け止めた。手にも死霊が纏われている。
「そんなもの効かん」
受け止められるのは読んでいた。俺はそれと同時に内ポケットから破魔札を取り出すと10枚一気に投げつけ、飛び退る。
ボバン、バンバンバン。
札から破魔の力が一気に爆発する。
「ざまぁみろ!!」
決まった。と思いきや。
 煙のはれたその先にはむにむにと鎧を回復させている臣志の姿。
「無駄ですよ。この死霊結縛鎧装術は無限に回復する!!」
更に両手から触手のような物がいきなり10本以上にゅるりと生えてくるとまるで一本一本意志をもつかのように蠢きながら俺に襲い掛かってくる。
「っう、気持ちわるぅ」
俺はこみ上げる吐き気を押さえ込みながら霊波刀を構えなおし、襲い来る触手を叩く。
 たたき切ると触手は2、3度びくんと痙攣すると、バラバラに砕け、元の霊体へと戻っていく。
 が触手の断面は次々と再生し、再び襲ってくる。
「はぁっっはっはっはっはっ!!いい加減諦めたらどうです!!横島さん!!」
「ふざけろ!!化け物が!!」
「化け物とは心外な。これぞもっとも攻撃性に優れ、最もすばらしい残虐美を持った最高の鎧ですよ!!」
狂気の笑みを浮かべ叫ぶ臣志。
完全に狂ってやがる!!
その間も触手は俺の体を叩き潰し貫こうと次々と襲ってくる。
「このやろう!!」
躍起になって触手を潰しても何の意味もない。単純な攻撃だけに避けがたく、しかもその超回復力のせいで切り飛ばしても叩き潰しても気が抜けない。
そうこうしている内に俺の息も上がってくる。
ぎゅるり、ぎちちぃ。
「しまった!!」
襲い来る触手に気を取られすぎた。下から来た触手にいきなり両足を絡めとられる。俺はすかさずそれを断ち切ろうとするが、その一瞬を突かれて首にも触手が巻きつき、そのまま逆さ釣りにされてしまった。
「かう、っふ」
完全に首を極められて息が出来ない。一気に意識が遠のき、目の前が真っ白になる。
{死んだかな、これは)
両手も拘束され、身動きが取れない。
「フィナーレだ!!」
臣志の終焉を告げる叫びが聞こえた。
「死ねぇ!!横島!!」
死にたくない!!!死にたくない!!!
美神さんの顔が浮かんでくる。すいません、もう一緒にいられそうにありません。
最後の意識が消え去ろうとしたその瞬間。
「横島さん!!!」
おキヌちゃんの声が聞こえた。そして美しく澄んだ笛の音。
「邪魔だ!!」
臣志が叫ぶ。その瞬間、全ての触手が外れた。床にたたきつけられ、同時に急激に頭に血が行き渡るのが分かる。
目の前に広がっていたのは臣志の意思に反して絡み合う触手の姿。
「止めろ!!」
臣志の意識が完全におキヌちゃんに向かっている。臣志は触手を切り離すとおキヌちゃんめがけて突進する。
「きゃぁ!!」
笛の音が止み、小さく悲鳴をあげるおキヌちゃん。
「おまえから先に仕留めてやる!!」
臣志が懇親の力を込めて殴りかかる。
『ばうう、ばうばう!!ばう!!』
拳かおキヌちゃんを捕らえようとしたその刹那、13匹のバルム達が一斉に臣志に体当たりを敢行し臣志を突き飛ばす。
「クソ犬がぁぁぁぁ!!」
臣志が飛ばされながら絶叫する。
今しかない!!
俺は文殊残り全てに気をたたき込む。
『呪縛』
まず二つ、こいつを臣志に向かって投げつける。
文殊は輝きながら周囲のコンクリートを変化させ臣志を絡めとる。
更に詰め寄りながらもう一文字。
『剣』
文殊でつく出だされた刃は霊波刀の何倍もの威力を誇る。
「だぁりゃぁぁぁ」
俺は裂ぱくの気合を込めて臣志に刃を振り下ろす。
ばしゅぅぅぅ一!
『剣』の刃と臣志の鎧がぶつかり合うとすさまじい衝撃と光が発生する。
これで終わった。俺の心の中には終わったという安堵感とは別に、なんともいえない息苦しさ、たぶんやってしまったという後悔の念が浮かぶ。 
光が収まるとそこにはすでに死霊結縛鎧装術が解け、そこの横たわる、そう見ても中年の痩せたおっさんにしか見えない臣志の姿があった。
(続く)


 





今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa