ザ・グレート・展開予測ショー

奥の手


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/10/24)

 はっきり言ってこのままでは埒があかない。
 無限に出現する生首たち。
 片っ端から叩き落しても臣志が次々と召喚する。
 一つ一つには大した力もないただの低級霊のようなものなのだが下手な鉄砲数うちゃ当たるとはよく言ったもので、さすがに俺もバルム達もおキヌちゃんもへばってきた。
 はっきり言って奴を止める手はあるが…。これはかなり大技になってしまうので彼を殺っちゃいかねない。
 金のためなら何でもやってきた美神さんの下で働いてるとは言え、人死にを出すのは避けたい。
 徐々に左手の霊波刀が小さくなっていく。やはりなれないことはするもんじゃない。
 護摩の炎の中から次々湧き出る生首たち。
 「痛っ!」
一瞬考え込んだ瞬間生首の一つに肩に噛み付かれる。
「このやろう」
すぐに叩き落としたが上着もシャツも食いちぎられくっきりと歯型がついてしまった。めちゃ気持ち悪い。
「横島さん!!護摩壇を壊して!たぶんそれでこれ以上生首を出せないはずです!!」
そうか、あれを使ってるからこんなに大量に生首を。怪しい魔方陣と奴への苛立ちでそんな単純なことを見逃してたとは。俺もまだまだ情けない。
「O.K!すぐに炎ごとぶっ飛ばす!!」
あれを炎ごと消し去るには。俺は頭の中で大量の水を念じる
『水』
文殊に文字が浮かび上がるのと同時に護摩壇に向かって投げつける。
文殊は蒼い光を放って護摩に飛び込むといきなり大量の水蒸気と水が溢れ出し、書いてあった魔方陣ごと護摩壇を押し流す。
「ちぃ!!」
臣志が悔しそうに舌打ちをする。無数いにいた生首どもがいきなり攻撃をやめ四散すると同時に。
どうやらあの魔方陣は生首どもを制御するためのものだったらしい。
「チェックメイト、だな。臣志さん」
「確かに私の鬼霊召喚の陣は破られましたが、まだ切り札はある」
俺の言葉を否定するように言い返してくる臣志。しかしその言葉に余裕は感じられない。
しかもかなり力を裂いたであろう術が破られた動揺からか、視点がはっきりしていない。
「悪あがきはやめなよ。みっともない」
「今ならまだやり直せますよ臣志さん」
俺達が交互に声をかける。
「悪あがき?やり直せる?冗談じゃないですよ、はい」
臣志はその言葉に不適な笑みを浮かべる。
「私はこの生き方に満足している。だからこそ引き際もわきまえているつもりですよ。だがまだ、そのときでは断じてない!!」
臣志は叫ぶとポケットから数枚の札を出す。がその札にはなにも記されていない。
「白紙じゃねぇか」
「今はそうですが…」
臣志はやおら人差し指の腹を食いちぎると、にじみ出る血で札に文字を書き記す。その文字はどうも古典文字らしく、学のたりない俺には読み取ることが出来ない。
「臨、兵、闘、者、皆、陳、列、在、前」
臣志は文字を書き終えると矢継ぎ早に九字を切る。
「何をすき気だ?」
俺の問いには答えず臣志は無心に九字を切りつづけた。
「なに?霊が集まってる?」
おキヌちゃんの顔に明らかに恐怖が浮かぶ。奴がたちの悪い事を仕出かそうとしている事は明白だ。
「下がれ、おキヌちゃん」
危険を感じ取った俺はおキヌちゃんに言い放つ。
「私だって力になれます!!」
けなげに訴えるおキヌちゃんに俺は首を横に振る。
「私は足手まといですか!!」
「ああ。じゃま」
あくまで冷淡に、俺は言い放つ。
「何でですか!!私が美神さんのように強くないから?」
「おキヌちゃん、わがまま言わないでさっさと逃げてくれないか?気が散るんだ」
振り向かぬまま、言った。顔を見られたくない。
「いやです!!」
感情を高ぶらせるおキヌちゃんに俺はなおも感情を表に出さずに、あくまで冷徹に。
「おキヌちゃん、こんなときまでわがままが通じるとは思うなよ?」
「横島さん…?」
「もううんざりなんだよ。こんなときまで手を焼かすな」
「私、そんなつもりは…」
「もういい。バルムども!!おキヌちゃんを連れて行け!!」
バルム達は俺の意図をさしてか、おキヌちゃんを引き倒すと背中に乗せて屋上を飛び出していった。
「なかなかいい判断してるだろ?」
臣志に向かっていう。臣志は口も緒を僅かに緩ませた。
臣志に引き寄せられた霊たちが臣志の胸に着けた札を中心にまとわりついて外殻と成していく。
「雪之丞の魔装術に似てるな」
「死霊結縛鎧装術と言います。怨霊術師臣志鳴動、最高の技ですよ。この術を出したのは実に20年振りです。光栄に思ってください、はい」
「なんか格闘漫画家してないか?」
「作者がそういうの好きなんですよ」
と、とにかく、俺と臣志は最後の決着をつけるべく対峙したのだった…。
(続く)




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