ザ・グレート・展開予測ショー

魔物の心。


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/10/20)

 再び四階。
 臣志の投げた手榴弾の爆風で一部ドアが吹き飛ばされ窓ガラスが衝撃波でこなごなに砕け散っている。
 爆発の中心は見事にえぐれ鉄筋がひしゃげていた。
 魔物はその先を更に駆けていく。
 このマンションの見取り図からしてこの先は屋上に続くはずだ。
 奴め、誘っているのか。
 有明不動産で感じたのと同じ気配、同じ匂いがする。
 おそらく護摩を焚いているのだろう。呪術を用いるときには護摩を焚き、願を込めるという。
 誘惑(テンプテーション)の術を用いれば人の精神を操るのはたやすい。
 しかしそれは一般人に対してで、GSにはほとんど通用しない。せいぜい幻覚を見せたり幻聴を聞かせたりする程度だ。俺も危うく引っかかる所だった。
「やはり屋上か」
魔物が階段を上がっていく。ほかの魔物たちもちょうど戻ってきた。若干増えている気もするが。
「ありがとう、みんな」
おキヌちゃんが一頭一頭のの頭を優しくなでる。傷ついたものにはヒーリングをかけ、治療をした。もはや札はついていない。完全におキヌちゃんに従っている。
「もう魔界におかえり」
全て傷を治し終えおキヌちゃんが言うのだが一頭も帰る気配を見せない。言われて逆にすがるように寂しそうに鳴いて見せる。
 彼らはおキヌちゃんの心を見抜き、その心に惹かれおキヌちゃんを主とすることを決めたらしい。
 魔界の獣も心を感じとる事ができるのだ。
「おキヌちゃんについていきたいんだろ」
「でも、こんなに飼えないでしょう?」
「なぁにかれらは餌はほとんど必要ないらしい。吸引札にでも入れておけば必要な時いつでも力になってくれるそうだ」
これはアシュタロスの知識の一部である。どうもこの魔物、向こうではポピュラーは種族らしく名をバムルというらしい。体つきは犬とほとんど変わらず、顔はケルベロスと般若面を足して2で割ったようなものだ。
特筆すべきはその知能の高さ。人語を解し、命令を忠実にこなす。時には自ら判断し行動することもできる。
臣志がバルムの事をきちんと理解していたら、おそらく俺はもっと苦戦しただろう。
バルム達はおキヌちゃんの心強い味方になることは間違いない。
「とにかく臣志が先だ。行こう、おキヌちゃん」
俺達は奴と雌雄を決すべく、屋上へと歩を進めた。
(続く)











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