ザ・グレート・展開予測ショー

おキヌちゃんの力(1)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/10/17)

 対峙する臣志と俺達。
 孤立した空間。
 正直な所、おキヌちゃんが居ることは足手まとい以外の何者でもなかったりする。
 彼女の能力はネクロマンサー、簡単に言えば人や人外の類の精神を操る能力、もっぱら悪霊を成仏させたり、他者の操る式神や持ち霊、即ち使い魔やキョンシーの類を説得し、味方につけるのに使われる。
 がその能力も臣志の管理下に置かれていると思われるあの自縛霊の集合体には通用しなかった。
 おそらくは奴の術で強引に精神を押さえつけられているからだろうと思われる。
 その代わりに制約として単純な命令にしか聞けなかったり、このビルから放れる事が出来なかったりするようだ。
 現に臣志のそばにあの悪霊の姿は無い。
「随分と余裕ですね」
俺は言いながら奴の表情を見た。何らかの答えが得られればそれもよし、えられなくとも動揺を誘うぐらいはできるはずだ。
「まぁ、こちらの有利には変わりはありませんよ、はい。
 横島さんはこの日本ではたしかに有数のGSだ。ですが」
臣志の手には札が束で握られている。
「この空間からは逃げられない。そして私のこの術からも」
臣志の手から札が舞うその数20枚以上。
「オン!」
裂ぱくの気合とともに札に封じられていた物の怪の類が一斉に姿を露にし、襲い掛かってきた。
「下がれおキヌちゃん」
俺は無意識の内におキヌちゃんを後ろに突き飛ばして、霊波刀を構える。
犬猫のようなそれは魔界に住む下等生物のようだ。ジークの奴に聞いたことがある。
 たまに人間界に現れては些細ないたずらをしていく彼らだが、臣志に捕らえられ使役されている今は魔物の本能のみを露にしていた。
「食い尽くせ!!」
臣志が悪鬼のような表情で怒鳴る。
鋭い犬歯を露にして、一斉に飛び掛ってくる魔物たち。
「畜生が!!このやろこのやろ!!」
俺は片っ端から魔物を叩き切っていくが、早くもいくつか傷を負っている。
まずい、このままではおキヌちゃんもやられる!!
「逃げろ!逃げてくれ!」
叫ぶうちにも魔物は俺の皮膚を傷つけ、牙を突き立てる。
とうに捨てたはずの恐怖心が再び頭をもたげ、心の中で悲鳴をあげる。
「諦めてください、横島さん、はい。私の式神達を破ったものはいない」
「それはどうでしょう?」
ぴぃぃぃぃーーーーきぃぃぃ〜〜〜。
笛の音が響く。魔物たちの手が緩む。
「惑うな!従え!!」
臣志が厳しい顔になって、式を操られまいと気合を入れなおす。
「私も、変わったんですよ、横島さん」
おキヌちゃんの力強い声。
更に見たこともない札を怯んだ魔物に投げつけるおキヌちゃん。
札はまるで意思があるように魔物の額に取り付いた。
俺に取り付いていた魔物たちも攻撃を止め、地面に立ち尽くす。」
どっかで見たぞこの感じは。
「そんなものが通用するものですか!!行け、式達よ!」
が、魔物たちは呆けたようにその場に立ち尽くしていた。
「無駄ですよ。臣志さん」
おキヌちゃんがもう一度笛を取る。
ぴっぴっぴ。ぴぃーっぴ。
おキヌちゃんの笛の音に合わせて札を貼られた魔物たちがおキヌちゃんの下に集結する。
しかも邪悪さが失せ、おキヌちゃんに完全になついているようだ。これでは番犬も勤まらない。
「みんな、お利巧ね。どうです横島さん?」
どうといわれても。
「なんなんだ、それは!!」
臣志が理不尽さに胸を高ぶらせながら、叫ぶ。
「俺に言われても」
「厄珍さんにもらったんです。どんな邪悪なものでも大人しくさせるお札だそうです」
あのおっさん、おキヌちゃんの事えらく気に入ってるものなぁ。ほかにもいろいろと面倒見てもらってるらしい。強欲な厄珍もおキヌちゃんには形無しって事かな。
しかし正直驚いたとしか言い様が無い。しかしこれでおキヌちゃんは世界最強のネクロマンサーだろう。人間から悪魔まで、全てを従わせる事ができるかもしれない…。
おキヌちゃんがいい人でよかった。
おキヌちゃんになつく魔物を見て、臣志は悔しそうにギっと唇を噛むと、再びマンションの中へ駆け入っていく。
「あ、やろう!」
俺はその後を追った。
「みんな、行くよ」
おキヌちゃんとばうばう言ってる魔物たちが俺に続く。よく見ると確かに可愛げもあるが、こいつら見てるとなんか緊張感が無くなる。 
(続く)


 
 

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