ザ・グレート・展開予測ショー

臣志その2


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/10/16)

 外には人の気配が無かった。 
 人の気配が…。
 おキヌちゃんのことが心配だ。俺は自転車の所まで急いだ。もしかしたらそこで待っているかもしれない。
 駐車場は道をはさんで向こう側。表に回らなければ。
 車の音が聞こえない。
 まるでここだけが孤立した空間のように。俺は思い出した。
 生き人形達の空間…。
 そうッ、まるでここだけが完全に孤立しているような静寂…。
 走り行く車たち。だが明らかにこことそこは壁一枚で仕切られている。見えない壁がそこに存在している。
 「おキヌちゃん!!」
俺は無心に叫んだ。彼女の事が気がかりでならない。脱出できたのか。それとも。
 美神さんにも連絡をとらなくてはいけない。物陰に隠れていないか目を配りながら携帯電話をポケットから取り出す。良かった、壊れてない。
 電源を入れる。電波は来ているようだが…。
デジタル音が繰り返される。
『…もしもし、あたしり○ちゃん、お電話ありがとう!!』
…なんやねんこれはぁ!!
「なにが○かちゃんやねん!!」
ガシャン
思わず携帯を壁に叩きつける。…今月、買ったばっかりなのに。
「ははははは。横島さん、無駄ですよ…」
「嫌な笑いですね。改めて聞くと」
背後からの声に俺は露骨に嫌悪感を表す。
「結界ですか?」
「ええ。左道封結界、といいます。はい」
左道…。唐巣のおっさんに聞いたことがある。中世日本の祈祷、呪術師の一派、善を否定し己の欲のみに力を費やす者達…。
「横島さん!!」
おキヌちゃんがいきなり俺の横に現れる。
「あれ?」
おキヌちゃんが怪訝な顔をする。
空間を歪めたのだろうか?そんなこともできるのだろうか?
「中に入れてあげたんですよ。結界が完成したのはあなたが脱出した直後でね、はい。
 まさか戻ってくるとは思いませんでした。馬鹿な娘だ」
その笑みは残虐の色がある。俺はポケットに忍ばせた文殊を弄びながら、正直、まいった。
(続く)



 

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