ザ・グレート・展開予測ショー

太平洋上


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/10/14)

白いしぶきの輪が広がり、黒い煙と赤い炎の塊が海面上にひろがった。
「直撃!?」
マリアのギャップランが爆発したのだ。
急降下するドダイは、海面に機体を叩きつけ、ディアスが落ちた。
「・・・・・・・」
横島は、ドダイの機体を海面上に滑らせながら水柱が数本上がっている海上を見やった。
「・・・・・・!」
ケネディ以来の厄介な可変MSは、その瞬間に姿を消したのだと思いたかった。
「・・・・なんだ・・・・?」
横島は、黒い煙の塊が上がるなかに、女性のイメージを見た。
ディアスもバーニアの推力を利用して浮上し、
「女・・・・!?」
ピートも横島と同じように、女性のイメージが爆光の中に走るのを見たのだ。それは、漆黒の髪をしていて、青いノーマルスーツを着ていた。大きな瞳をした女性・・・・・。
横島もピートもその名前は知らない。
マリアである。
彼女は、脱出シートを利用して、海上に落下していった。
強化人間は、通常の数倍のGに耐えるのを二人は知らなかった。
アウムドラの格納庫で、政樹はインターカムに取りついた。
「本艦から敵MSが離れていきます。」
「よ、よし!」
「進路はどうしますか?・・・・エミ機が誘導してくれますが。」
「誘導に従え。わいもそっちへ戻る。」
政樹は駆け出していた。上空は雲が薄くなり、下には海が見え始めた。


「・・・・横島さん、もう間に合いませんね。」
ジークは西条に言った。
もう顔は動かせなかった。いきなりかかるGのことを思うと、怖くて顔を動かせないのだ。
「ああ。・・・・心配はない。彼は必ず宇宙へ戻ってくるよ。」
シャトルの周囲の霧が四方に押しやられて、パッと閃光がシャトルの機体を包んだ。
そして、周囲の池の水が蒸気になって沸き立った。
シャトル、ダルマサンが上昇を始めた。ふるい機体である。現在のシャトルのように緩やかな上昇をしない。急激にダルマサンの機体は、雲の中に突入をして、雲の上に出た。
そのシャトルのテールノズルの閃光が、雲の内と外を照らし出し、あたかも重力の井戸の底から脱出するのを喜んでいるかのように見えた。
海上に浮かんでいるドダイからも、ギャップランの水柱の上を行くシャトルの閃光を見ることができた。
「ピートさん!」
「行ったな・・・・!」
横島は、シャトルの航跡を追うようにドダイを発進させて上昇をした。
ノイズの多いレーダー映像ではあるが、アウムドラの進行方向は読むことができた。


太平洋上に低空飛行をするアウムドラに、ディアスとMK-Uの乗ったドダイが着艦していった。
横島が、コックピットのハッチを開いた時、先に降りていたピートに駆け寄るエミの姿が見えた。
「ピート!!」
エミは、腕一杯にピートの首筋に抱きついていた。ピートもまたそのエミを抱いていた。
横島は、コックピットから出た。
「・・・・・もとニュータイプか・・・・・」
横島は、今の戦いでピートの復活を感じながらも、あのエミという女性がからんでいることを嫌悪する自分を知っていた。
激しいロータリーの音に振り向くと、ディアスの機体の向こうに滑り込むGメンの小型のヘリコプターがあった。
政樹が駆け寄っていた。Gメンの若い隊員、ノーマンが降りてきた。
「ここはすぐに出発したほうがいいでしょう。カオス教の動きも活発になるという情報があります。」ノーマンは、上着のポケットから一通の手紙を差し出した。
「私たちの処へ、あなた宛の手紙が届いていました。」
「部下からか・・・・?」
封を見て、政樹は微かに首をかしげた。
「ニューギニアにカオス教の拠点あり、だと?」
「らしいですね。それとこれが、ニューホンコンのルオ商会への紹介状です。補給をやってくれるはずです。」
ノーマンは気さくに言い、政樹に背を向けた。
横島は抱擁を続けるピートとエミの脇を通り抜けながら、ふっとおキヌのことを思った。
「おキヌちゃん、元気でやってんのかな・・・・・」


「スードラは、ハワイ経由で日本に向かう。」
「ハッ!」
ヌルは、犬飼の前で体を小さくしていた。
「ハワイから光ファイバーで日本のドグラ研究所に打電して、戦力を回して貰う。気にするな、ヌル大尉。ザックでは、MK-Uとディアスにはかなわんよ・・・・・それが良く分かった。」
「ありがとうございます。そう言っていただければ、自分も肩の荷が下りるというものです。」
「ニュータイプだよ。敵は・・・・・。マリアでさえ落とされたのだ・・・・・ドグラ研究所で面白いMSを開発しているという話を聞いている。ニューギニアの連中に捕捉させる前に落としてみせるさ。」
「では、日本に着くまでに、自分はMS隊の再編成の指揮をとります。」
「頼む。・・・・・あ、マリアの回収は、うまくいったそうだ。」
「それは・・・・!彼女の損傷は?」
「再使用には耐えられるということだ。」
「そうでありますか・・・・・」
「良かったな・・・・・大尉。」
犬飼は、ヌルの受け答えから、大尉がマリアの寝物語を聞いてやる任務をもった仕官であることを思い出していた。


一方、アウムドラは、全ての航空標識灯を消して、闇に溶け込んでいた。
そのキャプテンルームでは、政樹から渡された手紙を読んでいたエミが、手紙から目を離して、政樹、ピート、横島と見回した。
「この情報を頭から信用するのは危険なワケ。」
「わいの部下にいい加減なことを言う男はおらん。」
「そうではなくて、拠点のひとつということは、他のもあるってことよ。ジブローのように撤退してるかもしれないワケ。」
「いや、エミさん。この情報を信じて、ニューギニアのカオス教基地を叩こう。」
「アウムドラで?」
「そりゃ無茶っスよ。」
さすがに横島は、反論しようとしたが、ピートが制した。
「ジブロー侵攻作戦だって地球のどれだけの人が知っているか・・・・・もっとICPOの存在をアピールしないと、僕らはゲリラ以上には評価されない。・・・・組織そのものにも弾みをつけなければならない・・・・・。これはジークが言ってたことなんだが、引っ越したばかりの拠点は装備も不十分、叩くには絶好のチャンスだ。こっちの態勢を整えてからなんて言ってたら、それこそカオス教の思うつぼだってね。」
「ジークがそんなことを・・・・・」
「君の教育が良かったせいさ。」
横島は、そんなピートを見つめて、信じて良いのかと思った。
「でも、アウムドラの戦力では・・・・・ルオ商会だってどれほどの補給をしてくれるか分かってないワケ!」
「横島君、君はどう思う?」
ピートは、エミの言葉を無視して横島に聞いた。
「えっ!?はあ・・・・・でも、実行するにしてもドダイ改を手に入れないと・・・・」
「そうだな・・・・・」
「信用できるのか、ルオ・ウーミンという男は。」
「信義に厚い男と聞いている。ICPO寄りだという話だし。」
「よし、ニューホンコンに直進しよう。」
エミは、ひとり取り残された感じがした。
ピートが変わったのは、MSを見たからだし、それに横島のような戦闘的な子供がいるからではないかと思った。
それからしばらくして、エミは、格納庫に降りていった。
MK-Uに取りつくクレーンの上で横島の姿を見つけたのだ。
「随分熱心ね。」
「何か用スか?」
コックピットの奥にしゃがみ込んだ横島が言った。
「用事がなければ話しかけちゃダメ?」
「忙しいスから・・・・・」
「これ、いい機体のようね?」
「・・・・・・え?」
横島は、コックピットのハッチから覗くエミを見た。
「何が言いたいんスか?」
エミは、ムッとして緑髪をゆすり、横島を見下ろした。
「・・・・率直に言うワケ。ピートにこのMK-Uを譲らない?」
「・・・・・!?」
「あの人の方がMK-Uを有効に扱えるワケ。」
「ピートさんがそう言えと言ったんスか?」
「まさか。でも、このタイプのMSに乗らないピエトロ・ド・ブラドーなんて変だと思わない?ピートは一年戦争の英雄なワケ。英雄には英雄にふさわしい処遇ってものがあるはずよ。」
「・・・・・まだ譲るわけにはいかないっスね。俺は、カオス教のヤツラに借りがあるんだ。」
「おたくのことを問題にしてるんじゃないワケ!」
エミは殺気立っていた。
「おたく、ピートが嫌いなワケ?これはピートのためになることなの。分かるでしょう」
横島は、エミがこんなことを言い出した原因が自分にあるとは思わなかった。
ピートを殺したくないばかりに、強そうなMSにピート乗せようとするのだと思ったのだ。
「エミさん・・・・そんな自分本位の考えじゃ、いつかピートさんを殺しますよ。」
横島の精一杯の脅しだった。
「・・・・・!」
エミは、カッとしたが、横島を口説きたい思いがあって堪えた。
その間に横島が、言葉を継いだ。
「俺が言うのもなんですけどね、ピートさんは、あんたが思っているほどもろい人じゃないっスよ。ディアスで戦える人です。それは俺が保証します。」
「私の考えがピートを殺すというの?どういうことっ!」
エミは大きな声を出した。
「自分本位の考えで、ピートさんを守りたいと思うあんたがいると、周囲の者までが、そうしたあんたがついている事を許すピートさんを、嫌いになるんだ。そしたらパイロットは危険なんだよ。いいか?今は、アウムドラのクルー全員がピートさんに死んでもらっちゃ困ると思ってるんだ。あんただけじゃない!」

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