ザ・グレート・展開予測ショー

シャトル防戦


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/10/12)

「ようこそ、ヒッコリーへ。急いでMSをシャトルへっ!」
十式とMK-Uの前にクレーン車で寄ってきた男は、アシモトと名乗った。
「急いでください。十式は、ICPOの新鋭機です!それだけは、なんとしても宇宙に戻さなければならないというアーギャマからの命令です。」
アシモトは、コックピットから乗り出した西条に怒鳴った。
「時間通りか?」
「勿論です。衛星軌道上で待機してくれています!」
「了解だっ!」
西条は、十式をドダイ改から下ろして、シャトルの方に歩ませていった。それを見守っていた横島は、さすがにディアスの到着が遅いのが気になった。
ハッチを開いて、横島は上空を見回した。
「・・・・ピートさん、MSを扱うのは久しぶりだからな・・・・・」
横島は嫌な憶測をした。
エミのコメットの航空標識灯も霧に隠れて見えなかった。
「敵か・・・・?」
その間だけ、爆発音も、ビームのきらめきもなかったにすぎない。
西条の十式が、シャトルのハッチに入った。
「・・・・・・!」
横島は、コックピットに戻るとモニターを全開して、最大望遠で索敵をしようとした時に戦闘音をキャッチした。
「やっぱり!?」
横島は、モニターの中に敵の影を追った。
「うわっ!」
ジークが、モニターの上に転がった。降下をするディアスのドダイ改と激突する物体があった。
「くっ!」
ピートは、ドダイをディアスごと横にあおるように滑らせた。ベース・ジャバーがぶつかり、その上のザックが跳ね飛んだ。
「・・・・・ピートさんっ!アウムドラはっ!?」
「ヒッコリーから離れてくれてる!さすが政樹だっ!」
西条の十式がシャトルに乗り終わり、機体が固定されていった。その時、一機のザックがヒッコリーの滑走路に落ちてきた。
「このっ!」
横島は、MK-Uの乗ったドダイを上昇させつつ反転させた。
十式のコックピットから出た西条は、そのMK-Uの動きを見て、コックピットに戻ろうとした。
「ジョイントを外せっ!私も出るっ!」
「駄目です!十式だけでも、宇宙に上げます。」
アシモトが、西条にシャトルのコックピットに行けと命令口調で言った。
MK-Uは、ザックにビームの雨を降らせた。
「カウント・ダウンはっ!」
「あと二分です!」
アシモトは、西条の腕を取ってシャトルのコックピットに繋がるタラップに押しやった。
その背後にディアスを乗せたドダイが降下してきた。
ピートは、かすかに自分が意固地になりすぎているのを知っていた。
が、MK-Uが戦闘に加わったことで、多少の時間は稼げると踏んだのだ。
「ジーク!降りろっ!大尉が待っている!」
「ピートさん・・・・・・」
ジークは、ピートがこんなことで時間を潰す時ではないと言いたかった。
「政樹たちは僕が守るし、ここもシャトルが出るまでは守ってみせる!」
ピートは、ディアスのコックピットを開いて、ディアスの手、マニピュレーターにジークを追いやった。
「受け取れっ!」
ピートは、ノーマルスーツの足のホルダーから拳銃を抜き、放り投げた。
「餞別だ。大尉はまだ迷っている。大尉をシャトルに乗せるのに使うんだ!」
ディアスの手が、ジークを西条の前に降ろしていった。
ジークは、アシモトの背後に飛び降りた。
「大尉は、宇宙へ戻るんだっ!」
「ピート君!」
西条は、アシモトの手を払いながらディアスを見上げた。アシモトはそれを見て、自分の車に走っていった。
ジークは、西条に拳銃を向けて、
「討論をする時間はありません。ディアスには、シャトルの防戦をやってもらいます!」
「ジーク君!どういうつもりだ!?」
その間に、ディアスは、ドダイと共に再度上昇していた。
「何があっても宇宙へ行けってピートさんが言ったでしょ!」
ジークの声は震えていた。
「無理はよしたまえ。分かったよ。」
西条は、ジークの前に背中をみせて、シャトルのコックピットに繋がるタラップを昇っていった。
「秒読みに入ります!」
シャトルのハッチから、コ・パイが顔を覗かせた。
「分かった!この子も行くぞっ!」
ジークは、拳銃を持つ手が震えているのを止めたいと思ったができなかった。
「MSは出られないのか!!」
政樹は、左右の対空機銃の弾幕が薄いのを気にしながら怒鳴った。
「いま、二機出ます。」
「使えんノモもドダイに乗せて出せ!ダミーにはなる。」
政樹は、言いながら、使えるアイデアだと思った。
「ここは任せるぞ!」
「どこへ行かれるんです?」
「MSデッキや!」
政樹は、キャプテンシートを飛び出していた。
絶対的に人手が不足しているのである。
厚い雲のお陰でヌル隊は、思い出したようにしか攻撃をしてこない。しかし、防御の火線は、いい目標になった。確実にザックの攻撃の間が短くなっていた。それをアウムドラの両舷でノモが狙い撃ちにした。
政樹は、格納庫に駆け降りて、無人のドダイを前に出させた。
「ザックにぶつけろ!一機でも落とせれば安いもんや!」
その作戦で、無人のドダイは、二機のザックを乗せたベースジャバーを大破させる僥倖に出会ったが、一機のザックを落とし、もう一機のザックは、そのベースジャバーを巧妙に操っているアウムドラに迫った。
その下で、エミのコメットが、落ちるザックと交差した。
「あっ・・・・・!」
エミは、意外と近い距離にアウムドラの機体を見た。
「アウムドラが攻撃を受けているのか?」
シャトルのコックピットに座った西条は、前の席に座るパイロットに聞いた。
「たいした数ではありません。この霧ですし・・・・・」
「焚き火が消えていないのが気になるな。」
下の方で、兵士がドラム缶に毛布を被せているのが見えるのが、まどろっこしく悲しい行為に見えた。
「怖いか?」
西条は、ジークを振り向いた。
「い、いえ・・・・・」
「私は怖い。動いている方が怖くなくていい。」
そう言いながらジークがまだ拳銃を自分に向けているのに気づいて、
「その拳銃は、ピート君の餞別なのだろう?大事にしなければいけない・・・・・しまっておけ。」
「は、はい・・・・・」
「・・・・それに、安全弁を外さないと拳銃は撃てないぞ。」
ジークは、拳銃を膝の上に置いて、両手でしっかりと押さえた。
「三十秒前です。」
パイロットの声に西条は、息を大きく吸った。ジークもそれに倣った。


MK-Uは、ザックの攻撃をドダイを盾にしてかわしたが横島は、被弾したドダイを捨て、敵のザックのどれかに取りつこうとした。
が、MK-Uを狙うベースジャバーに乗った一機のザックは機動性が抜群だった。ヌルのザックだ。
「ここまでだなっ!MK-U!」
降下するMK-Uをそのザックが追おうとしたが、降下していたはずのMK-Uの機体が、パッと横に流れて雲の中に隠れた。
MK-Uの機体をピートのディアスが乗るドダイが受けたのである。
「バズーカだっ!正面!」
「えっ!」
横島は、ピートに言われて初めてMK*Uのバズーカを発射させた。雲の中の敵は見えなかったが、ベースジャバーが爆発する光が、雲を背後から明るく浮き立たせた。
ヌルのザックは、その爆発から逃れて、降下に入った。
横島は、ピートが見えないものを見る力があるのではないかと思った。
「・・・・・・・!」
「エミさんだ!」
翼をふるエミのコメットが雲の山の間に見えた。が、降下するヌルのザックが、火線をコメットにあびせた。
ピーとの行動は早かった。ザックの姿を見る前に、ドダイを飛び出して、そのバルカンの火線をディアスの手で防御したのだ。
横島は、ピートのディアスがいつドダイを離れたのかも分からなかった。
それほどにピートの発進のタイミングが速かったのだ。
「なんで地上に降りてなかった!」
ピートは、エミを叱った。
そのディアスに別のザックがライフルを撃ち込もうと迫った。
ピートのディアスのサーベルはザックの背後に回りこんで、背中のランドセルを斬った。
「ピートさん!?」
横島は、トリガーにかかっていた指をとめて、落下に任せるディアスの下にドダイを滑り込ませていた。
ピートに叩き落されたザックが、雲の中に消えていった。
「エンジンだけを・・・・!?」
「ああ。あれならばパイロットは生き延びられるチャンスがある。」
横島は、接触会話で聞くピーとの言葉に息をのんでいた。
そこまで考えているのか、と・・・・・。
「・・・・・来るぞっ!」
またピートだ。
ディアスが、ドダイを急角度に上に向けた。そのちょっとしたタイミングの差が命を救うのだ。その背後の雲の中に光の柱が通った。
「・・・・・厄介な敵だぞ!」
横島にもようやく分かった。変形MSが来るのだ。
それは、雲の障害をなんとも思っていないスピードで、見えて、消えた。
今の攻撃で、ディアスとMK-Uを同時に撃破する予定だったのだろう。それが回避されたのである。
敵のパイロットの動揺が、そのMSの飛行の仕方に見えたような気がした。
「あれは、落としておかないと・・・・・」
ピートの言うことは正しい。
MK-Uとディアスの乗ったドダイが降下する。雲が切れた。
海面があった。その黒い面が迫った。
その海面に白い尾がのびていた。
「・・・・・・!?」
横島とピートは、その三角形のシルエットが、しぶきの尾の少し前にあるのを黙視した。ディアスのライフルとMK-Uのバズーカが連射された。
空戦の描写などはこんなものだ。横島は、当たったと分かった。

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