ザ・グレート・展開予測ショー

臣志その1


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/10/10)

 真上から聞こえる爆風。咄嗟に床を霊波刀でたたっきって下へ逃げた俺は臣志の行動に怒りを感じた。
「大丈夫ですか横島さん?」
いきなりの事で気が動転しているだろうおキヌちゃんが気丈に話し掛けてくる。
横になり呼吸が若干荒く、多少衣服は乱れているが、怪我は無いようだ。
俺は右手を上げて大丈夫なことをアピールすると、上の様子を観察した。
 大穴のあいた天井から煙と崩れたコンクリートがパラパラと落ちてくる。
「ここを放れよう」
とにかく外に出た方が安全だろう。何らかの理由で俺達二人を始末しようとした臣志。
 やつの目的はわからないが、少なくとも彼は「ここ」で俺たちを殺すことを目的としているらしい。
 ここにいれば更なる追撃も考えられるし、外に出てしまえばおそらく一旦は手をひくだろう。
 俺達二人を殺すだけが目的ならこんな回りくどいまねをせずとも、いくらでも手はある。
 あの自殺霊もおそらく彼が仕込んだものだ。
 縛り付けといたものなのか、それとも使役しているものなのか。
 使役しているとしたら相当の能力者ということになるがまずそれはありえないだろう。 今日本にいる最高ランクのネクロマンサーおキヌちゃんですら御し切れなかったものである。オカルトGメンに所属しているネクロマンサーも海外に出払っているし、今日本には彼女以上のネクロマンサーは存在しないはずだ…。
 表向きは。
「行こう」
俺は考えるのを止めて、おキヌちゃんを促した。おキヌちゃんはこくりと頷くと、服を正して、立ち上がる。 
「放れないで付いてきてね」
「はい」
たぶんもうさっきの階段はマークされてるだろう。
非常階段…。
 ちょうどさっきの階段の反対方向に非常階段のマークがある。
「あっちから行こう」
俺はそれを指差して先に歩き出す。
「逃がしませんよ、はい」
行こうとした瞬間、臣志があなから顔を出した。
「死んでいただかないと、このマンションの契約が進んでしまうんです」
鋭い殺気。
「行け!!」
俺はおキヌちゃんの手を引っ張って先に行かせようとする。
「でも」
「邪魔だ!!」
思わず口を付いて出た言葉に一瞬後悔を覚えたが引き摺る間は無い。おキヌちゃんが悲しそうな顔を下のが見えたが、気にするまもなく臣志がどこで手に入れたかサブマシンガンを構えている。
しまった!!銃口の狙いは俺じゃない!!
「間に合え!!」
俺は霊波刀を全力で発動した。これでも修行は怠ってない。
霊波刀は俺の意思通りに巨大な円状に変化し、銃口の向かう先を遮断する。
「やはりねそうすると思いましたよ。はい」
臣志はにやりと薄気味悪い笑みを浮かべると銃口を真下、俺に向けた。
「横島さんはそのさえない顔でフェミニストでいらっしゃるようで、はい」
「屑よりはましだよおっさん!!」
俺はちらりとおキヌちゃんを見る。よし、あの距離なら当たらない。
文殊はあと三個。ここで使うには数が少ない。
「なぁ、何でそんなにここにこだわるんだ、あんたは」
「あなたには関係ない」
「俺はもう限界だよ、どうせあんたに殺される。その前に少しぐらい聞かせてよ」
やべ、手が震えてきた。こわい。恐怖心でで声が震えるのを必死にこらえる。俺はあのアシュタロスも手玉に取ったんだ、出来ないはずが無い・・・。
俺は霊波刀を消してその場に座り込む。正直たっていたら震えに気付かれそうなほど、足が震えている。かっこつけるもんじゃないな…。
「情報とは違って、なかなか出来た男のようですね、あなたは」
「買いかぶりすぎだと思うぜ。俺はただの高卒のクソ餓鬼だ」
おキヌちゃんが非常口の扉を開けた音がした。
「いいのか?逃げられちまったぜ?」
「なぁに、外には仲間が張ってる。すぐに捕まえてくれますよ彼らが、はい」
「…」
嘘だ、と直感的に思った。仲間がいるとは思えない。いたとしても一人二人、しかも見張り役。
 いるならなぜ中に人の気配が無い?下の階に張ってる奴や非常階段を押さえている奴がいるはずだ。
 彼の目的はこの中で俺らを殺すこと、それなのに中に仲間がいないのは、見張りぐらいにしか使えないのか、居ないかのどちらかのみ。
「あれぇ、なに汗かいてるんですか?」
「え?」
俺の虚をついた言葉に、臣志が自分の額を手でぬぐう。まだまだですね臣志さん、こんな単純な引っ掛けに乗るなんて。
「汗なんかかいて…」
「くらえ!サイキック猫騙し!!」
ばちばちばちぃ
汗をぬぐい終えて視野が開けた瞬間、俺の両手がショートして烈光を放ち、臣志の目を焼いた。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
モロに見てしまったのだろう、目を押さえて汚い悲鳴をあげる臣志。
その間に俺は廊下を走り抜け、非常階段へと向かっている。
「クソ行け!!坐墓羅!!」
後ろから臣志の叫びが聞こえた。たぶんはの自殺霊のことだ。使役してるのか?
…もしかしたら奴は式神か?だとしたらおキヌちゃんの精神感応に耐えたとしても説明はつく。現に冥子さんの式神はおキヌちゃんの笛に反応しないし。
非常階段の扉を開けると同時に真後ろから巨大な何かが迫ってくるのが分かった。
「逃がすな!!」
臣志の声が聞こえる。
そういわれて逃げない奴はいないさ。おキヌちゃんはもう逃げ切ったようだ。
俺も非常階段を駆け足で降り始めた。




今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa