ザ・グレート・展開予測ショー

自殺者の幽霊(1)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/ 9/28)

横島と依頼人の続き…
 …そこにはおよそ人であるまじき形相と苦悶の二つの顔があった。
 俺は今までさまざまな霊を見てきた。悪魔や神の類も見た…、がそのどれよりも強烈な印象がある写真だった。
 「マンションの二階、203号室、そこに彼らは出没します。はい」
 「実害はどのようなものがあったんすか?例えばポルターガイストとか、誰か憑かれたとか」
「いえ、そのような話は聞きませんよ、はい。だたそこに立っているだけらしいです。はい。ただ我々一般人にはそこに存在されていると云う事実だけで身の毛のよだつ思いがするわけでして、ほら、話しているだけでも手が震えてるでしょ」
「…自縛霊になってるわけか…」
自殺者が自縛霊になってしまうことは非常に多い話だ。死んでしまっても結局現世に強い思い入れが残ってしまう。もういやだって云う思いも、現世への執着の一つなのかもしれない。 
 俺はふとルシオラのことを思い出した。彼女は俺を助けるため自らの意思で俺に霊気を分け与え死んでいった。それは自殺と一緒なのだろうか。誰かを救うためでも、自ら命を絶つことは自殺と同じじゃないのか…。救ってもらっておいてなんだけど、時折無性に腹立たしくなる時がある。なぜ俺なんかのために死を選んだんだ、折角生きるチャンスをもらったのに…。
「横島さん、どうなされました?」
臣志さんの呼びかけに俺ははと顔を上げた。何秒間か考え込んでしまったらしい。
「あ、すいません、どこまでお話しましたっけ?」
「自縛霊の話ですよ。それでですね横島さん」
「はい」
「その幽霊を除霊していただきたいわけですよ。ギャラはたっぷりと、思い切って一億支払いますので、ハイ」
「一億?」
さすがは天下の有明不動産だ。たかだか何もしない自縛霊の除霊に一億出すとは。美神さん、喜ぶだろうな。ま、中には更にもう一桁上払う馬鹿な大金持ちもいるけど、そんなのは一年に一回あるかないかだ。
「はい。成功報酬で一億です。その代わりできるだけ早く仕事を済ましてください。できれば今日、明日中にも、はい」
「分かりました。じゃあ、これから行ってぱっぱと済ましてきちゃいますんで。お金の方は、スイス銀行日本支店の美神令子の口座に納めてください」
「承知しました。ではよろしくお願いします」
「任せてください」
俺は胸を張っていった。臣志さんは安心したように頷く。
「さすが日本最高ランクのGSさんだ。これでようやく契約が進められますよ」
臣志さんは現場までの地図と写真のコピーを俺に渡すと、もう一度深々とお辞儀をして事務所に戻っていった。
「けっこういい人そうだけど、なんか引っかかるんだよなぁ…」
俺は臣志さんが事務所に入ったのを確認してから、おキヌちゃんに話し掛ける。
「そうですか?でもなんか嫌な雰囲気は感じますよね。まるで何かが違うような…」
 そう、何かが違うような雰囲気があった…。何かが違う…。どこかで何かを狂わされたような。ここに入って来た時の霊的な違和感といい…。
「…思い違いかな、やっぱり」
おキヌちゃんが呟く。
「なにが?」
「いや、あの人、誰かに似てるような気がしたから。ずうっと前、横島さんと会って暫らくした頃、会ったことがあるような気がするんです…」
「そう、かな」
俺は思いをめぐらせてみた。が、あんな貧弱そうな知り合いは思い浮かばない。
「気のせいだろ、気にし過ぎだよおキヌちゃんは」
「そうですよね。最近なんか疑り深くなったような気がします」
「とにかくさっさと仕事を済ましてこよう。今回はおキヌちゃんに頼ることになりそうだけど」
「ええ、幽霊さんの説得なら、任せてください」
おキヌちゃんが元気一杯に言う。最近は学校に私生活に、随分と楽しそうだ。きっと今、幸せだと思っているに違いない。幽霊だったときの分まで、きっと。
 そして俺達は一路地図に示させたマンションへと向かったのだった。

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