Gメンの少女、小笠原エミ(前)
投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 9/27)
MSの陰で、ワゴンから夜食の包みを受け取った横島は、西条が来る向こうで、背を向けるピートの姿を見つけていた。
「西条大尉!」
「もらおう・・・・」
西条も、夜食の包みを取り、
「ピート君にも!」
「はい!」
横島は、夜食をもうひとり分掴むと、ピートを追いかけた。
「ピートさん!」
一階下の降りるタラップで横島は、ピートに声をかけた。
「夜食っス。」
「あ、ありがとう・・・・・」
「俺、ピートさんに会いたいと思ってました。」
「・・・・・・・?」
「一年戦争の英雄・・・・・。そんなアンタに憧れて、俺もMSに乗りたいって思ったんです。」
ピートは、横島の強い視線を避けるようにタラップを降りて、通路に出た。
「アンタ一体何やってんスか!?今のアンタはピエトロ・ド・ブラドーじゃない!!」
ピートは、黙ったまま自分の部屋のドアを開くと、厳しい目を横島に向けた。
「僕が初めてMSで戦ったのも、丁度、君と同じくらいの年頃の時だった。あの頃は夢中だった・・・・・」
「・・・・・・・?」
「・・・・ジークは僕のことを何て言ってる?」
「え・・・・・?」
「何か言ったと思うんだが・・・・・」
横島は、急にカッとなると、
「だったら、ジークに直接聞けばいいだろっ!」
「横島君・・・・・」
「失礼!」
横島は、走りながら、やっぱりだと思った。
その後ろ姿をピートは、ただ見送るだけだった。
「僕は・・・・・いったい何をやってるんだ・・・・・」
ドアのノブに体重をかけながら、ピートはフラッと部屋の中に入った。
アウムドラの天窓で寝ないで張り番をしていたジークも、さすがに朝の光を見るころには何度も大あくびを繰り返していた。
ショボショボとした目で、それでも、周囲を観察する意思だけはあった。
「・・・・・・・?」
その目が、カッと見開かれた。
手が本能的にインターカムに伸びた。
地平線から姿を見せたばかりの朝日の中を、こちらへ上昇する影が見えたのだ。
「飛行機・・・・・?」
双眼鏡を片手に取って、確認をする。
「・・・・・複葉機?」
ビーチクラフト17型のレプリカである。バンクをして、接近をしようとする。
「綺麗だな・・・・・」
迂闊に見とれてしまったジークは、あわててインターカムのボタンを押して、マイクを取った。
「飛行機だっ!二時の時間の方向、下っ!」
その頃になるとビーチクラフト機は、発光信号を出して、Gメンの一員だという信号を送ってきた。
ジークは天窓から頭を引っ込めると、タラップを滑るようにMSデッキに降りていった。
アウムドラのブリッジのシートで仮眠をとっていた政樹たちも起き出して、そのレプリカのビーチクラフト機の出迎えの準備を始めた。
アウムドラの高度をさげて、最大減速をする。
軽快にターンをしてアウムドラの後方につけるビーチクラフト17型機は、さすがに巨大なアウムドラが起こす乱気流にあおられて、大きくピッチングをする。
が、ビーチクラフト17型機は、遠慮会釈せずに、かなりのスピードでアウムドラに突っ込んできた。
そして、一気にMSデッキの後部ハッチから飛びこんで来た。
車輪が、甲板を打ち、ドッと走り込む。
相対速度を合わせたからと言ってゼロのできるものではない。
小さな車輪がキャンキャンと悲鳴を上げて、ドダイ改のテール・ノズルにぶつかる寸前で停止した。
「うわっ!」
さすがに、ジークは目を閉じたものだった。
そのビーチクラフト17型機の着艦の音で横島は目を覚ました。甲板の下の部屋で、着たきりすずめでうたた寝をしていたのだ。
「デッキか・・・・?」
横島は起き上がるや、上着を引っ掛けて飛び出していた。
ピートの部屋では、椅子に眠り込んだピートが、より深い眠りの中にいた。
着艦したビーチクラフト17型機から降り立ったパイロットを見て、ジークは、あんぐりと口を開けていた。
オールディな飛行服を身にまとったパイロットは、まだ少女だったからだ。
ジークの顔が面白かったのだろう。
そのパイロットは、ニッコリ笑い、
「よろしく。Gメンの小笠原エミです。」
と、自己紹介をした。
政樹は、差し出される手を握り返して、
「見事な腕と言いたいが、無茶はせっかくの美貌を駄目にしますよ?」
「早く死ぬということなら心配しないで。それでいいと思っているから・・・・・」
「おやおや・・・・・」
政樹が苦笑するのを無視して、エミは、ジークの顔を覗き込んで、
「そちらが、ジーク君ね?」
と、言った。
「え?あ、はい・・・・・」
ジークは、慌てて手を出して、胸を張ってエミと握手をした。
「よろしく。かわいい子ね!」
ムッとはしたものの、ジークは笑ってみせた。
そこへ上着を着込みながら飛び込んできた横島が、エミの飛行機を見て、
「なんて飛行機だ・・・・・!?」
エミは、その横島の声に笑いかけた。
「素敵でしょ?私の飛行機、コメットって呼んで!」
「はあ・・・・・・いいレプリカっスね。」
横島は、エミとビーチクラフト機を見較べた。
「あれ?」
横島は、その時、いつもと違う自分にふと気づいた。
目の前に美女がいるのに全然関心が湧いてこないのだ。
「どうしたんだ・・・・・俺・・・・・?」
横島は、なんとなしにその理由を考えてみた。
そして、すぐにそれらしい出来事につき当たった。
『そうか・・・・・・シロが死んでから俺・・・・・変わったんだな・・・・・・・』
横島は、少し痛む胸を手で押さえながら、口の中で小さく呟いた・・・・・。
「
今までの
コメント:
- エミさんにはご存知、ベルトー〇カをやってもらうことにしました。
少し年が若返ってます(笑)
次で一区切りなのでもう一踏ん張り・・・・・。 (NEWTYPE[改])
- 横島が美女を目の前にして飛びつかないなんて・・・(絶句)
いくら目の前でシロが死んだからと言ってあの横島の煩悩がなくなってしまうのか?
横島のパワーの源である煩悩がなくなってしまったとしたならば、果たして彼は横島なのだろうか? (JIANG)
- う・・・・・また、ボディーブローをくらってしまいました(苦笑)
でも、読んでくれてありがとうございます、JIANGさん。
私も、当初の予定では、横島は、まんまでいいだろうと思ってました。
でも、よく考えたらこの話、横島は、戦いの最中、身近な人たちがどんどん目の前で死んでいくのを目撃していくことになります。
一応戦争ですからね。
なので、それを忘れて「ねーちゃん!ねーちゃん!」叫んでもらうのは、はっきり言って困るんです。
これじゃ、漫画と一緒ですからね・・・・・。
・・・・・あ、すみません。失礼なこと書いて・・・・・。
そういうわけで・・・・・どうしよう・・・・・困りました・・・・・・・(苦笑)
(NEWTYPE[改])
- ピートに対する忸怩たる思いの余りエミにかまけている余裕が無かった、もしくはコメットの威容に心を奪われていた……てのはダメ? (Iholi)
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