ザ・グレート・展開予測ショー

ピート再び(中)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 9/24)

アウムドラは、雲の中を出て、高度をとった。
山岳地帯に入ったという安心感があった。
十数機のノモとMK-U、十式とディアスが並び、少し離れてドダイの改造タイプが数機置かれていたが、広大なMSデッキは、それでも隙間の方が多かった。
ケネディで使ったクレーン車が少ないのが、整備に時間がかかる最大の原因であった。
本来ならば、MSのパーツの備品があってしかるべきなのだが、ない。
三機のノモをぶっ潰して、不足の部品、弾薬の補給、エネルギーパックの補充をした。
MK-Uの機体も、調べてみるとかなり被弾していた。
「結構ボロボロだな・・・・・」
横島は、アーギャマのメカニックマンたちの存在がいかに重要で、パイロットの命をささえているかを痛感させられた。
「横島!ディアスのギアを交換する。手を貸してくれ!」
Gメンのメカニックマンは、ディアスのメンテナンスには手を焼いているようだった。
「了解ッス・・・・・」
メカニックマンたちは、ドダイ改とMSのバランス調整をしていた。
MSは、重力のある地球上では飛べない。
そのために、ドダイ改といったマシーンを借りなければ、飛行はできないのである。
その操縦系とのコンビネーションは、調整しておかないとMSが乗ることはできなかった。
いつ敵が出てくるか分からないからだ。
ビーッビーッ!!
突如デッキに設置されている警報ランプが鳴りだした。
「なんだ!?」
横島は、あわててディアスのコックピットから飛び出した。
「所属不明機発見!総員、警戒体制!」
鬼道館長の声である。
「左右のハッチ開け!」
「MS隊、警戒っ!」
ブリッジでは、前方に民間機を発見していたのだ。
「輸送機か・・・・・?」
MSデッキで必要とされている人が、その民間機を見ていた。
「軍用機ではない・・・・・無防備に接近しすぎますから・・・・・」
政樹は、警戒警報を解除しようかと思った。
「・・・・・まさかな・・・・・」
「機体番号確認!コジャク航空の輸送機です。軍の仕事を受けている輸送会社です。」
一瞬、ブリッジには安堵の声が満ちた。
西条は、その輸送機が、まっしぐらに飛んでいる感覚に気がひかれた。
「元気の良い輸送機だな・・・・・」
「地球を利用して自分達の企業の利益しか考えていないですよ。あの連中は・・・・・」
西条は、そんな政樹を見て、本当に生真面目だなと思う。
「理屈ではそうなんだが・・・・あれは、違うな・・・・・」
西条は、ブリッジの前方、千メートルほどの高度差を持って接近してくる輸送機を見つめた。
正午に近い太陽を背に受けて飛ぶそれは、その機体の性能一杯で飛んでいると見えた。
「捕獲してみるか?MSの部品ぐらい手に入るかもしれない・・・・・・」
「時間の無駄だ。敵を呼ぶことにもなる。」
「今ならばまだ間に合う・・・・・」
西条は、正面にいるパイロットに、
「追うんや・・・・・!」
「館長・・・・・?」
「無理しないで追いつけるのなら・・・・・時間は五分や。それで駄目ならヒッコリーに向かう。」
政樹は、アウムドラを上昇させた。
周囲の索敵の状況も安全であろうと言う判断であった。が、アウムドラは巨大である。
こちらよりも、敵の方から見つける方が早いのは自明の理である。
アウムドラに発見された輸送機のパイロットは、ピートであった。
地球連邦軍の直属の航空機であるガルーダのシルエットを発見した時から、避けたいと思っていた。
「上昇をかけてきた!」
ジークは緊張した。
「ガルーダがあんな低空を飛ぶのが分からないな・・・・・」
ピートは操縦桿を操作しながら、ガルーダが低空を飛ぶ可能性を考えてみた。
戦闘状況、もしくは逃亡としか考えられなかった。
「ジーク、Gメンがガルーダを捕獲したという話はないのか?」
「Gメンのガルーダっていうことですか?」
「ああ・・・・・」
「義父上は、ジブローにはバルキリーを使っていくって言ってましたけど・・・・・・」
ピートは、そのジークの言葉を聞いているうちに、そのガルーダがこの輸送機の変事を知って接触しようとしているのではないか、と思った。
「接触してみるか?」
「え?・・・・・アウムドラにですか?」
「よく知っているな。」
「機体の色でわかります。」
「・・・・・ん・・・・・」
ピートは、ジークに拳銃を用意しておけ、と命じた。
「むしろ、銃を持っているのを知られて殺されることもある。使う時や敵に見せる時は、用心するんだ。」
「はい・・・・・」
ピートは輸送機を降下させた。
「凄い・・・・・」
ピートは、その巨大な機体に絶句した。
山が目の前に迫ってくるのに似た圧迫感があった。
「積荷を教えてもらいたい。」
緊張した声が、レシーバーに飛びこんで来た。
「・・・・・・・?」
ピートは、妙なことを聞くと思った。
「場合によっては軍で緊急に買い上げたいものがある。教えられたし!」
「義父上の声に似ている・・・・・?」
「・・・・政樹か・・・・・?」
ピートは、ジークの言うことが本当だと感じた。
経過とか事情を考えると信じたくないことだ。
が、目の前にある事実から受ける感覚だけを信じた時、それは政樹であると簡単に信じられる。
「鬼道政樹か・・・・?」
ピートは、用心深くマイクに呼びかけた。
もうアウムドラのブリッジのディテールが識別つくまでに迫っていた。
「・・・・・キャプテンの姓名を!」
「ピエトロ・ド・ブラドーだ・・・・・」
その瞬間、二機の飛行機は、すれ違っていた。
ピートは、アウムドラの上を掠め、改めてその巨体に絶句した。
「間違いない!政樹だ!」
「義父上!ジークです!ピートさんと来ました!」
アウムドラのブリッジで、西条と政樹は、顔を見合わせた。
「ピート?」


アウムドラは、輸送機を背負う形で飛行をしていた。
「すまなかった。飛行機は返す。」
ピートは、輸送機のパイロットを解放して言った。
「わが社の請求書はどこに回したらいいんだ。慰謝料も含めて請求させてもらいたいな」
「僕の口座に請求していい。これがコードナンバーだ。」
「倍返しさせてもらうぜ。」
「好きにしてくれ。」
ピートは、ジークと共にハッチにとりついて、アウムドラを見た。
銀色のMSが、アウムドラの背中に立ち、上昇を始めた。
それは。MK-Uに似た形であったが、より洗練された形をしていた。
「掴まれ!」
銀色の顔が、喋ったように聞こえた。
そして、そのMSは、ホバリングしながらマニュピレーターを輸送機のハッチに固定したのである。
ピートは、地球上でこうも巧みにMSを使ってみせるパイロットはいないだろうと思った。
『ジャスティス以外は・・・・・』
ピートは。ジークをその手の上に乗せて、続いて自分も乗り込んだ。
ゴーゴーと風が体に突き刺さり、力を抜くと吹き飛ばされそうになった。
銀色のMSの手が、ピートとジークの体をもう一方の手で覆うと、降下し始めた。
一息で、アウムドラの背中に着艦する。
その上で、西条の十式の手は。アウムドラのハッチにピートとジークの体を押し込んでいった。
「ジーク・・・・!ピートも・・・・・」
そこには、政樹の姿があった。
「義父上!!」
ジークは政樹に飛びついていった。
ピートは、狭い天窓の床に身を寄せるようにして立って、政樹の健康そうな顔を見た。
「政樹・・・・なぜ・・・・・?」
「いろいろ訳ありなんやけど、深刻でもあるんや・・・・」
「だろうな・・・・・」
「母さんたちは?」
「日本に行きました。今朝の便で・・・・!」
「そうか・・・・よかった。」
「・・・・冥子さんに来させたのは、政樹か?」
「迷惑だったか・・・・?」
「いや・・・・・」
「・・・・・ピートの処へやってよかったよ。フフ・・・・思った通りジークを連れ出してくれた。」
「!?・・・・・どういうことだ?」
「こいつは、地球の生活から抜け出したくて仕方なかったんや。しかし、冥子は嫌がっとった。」
「冥子さんが・・・・?」
「子供を戦場へ行かせたい母親なんているはずないやろ・・・・でも、子供は親の気持ちなんておかまいなしに行動する。」
「お前にジークを鍛えてもらおうと思って送り込んだってこともある・・・・。」
「・・・・・それは逆だろ?僕を鍛え直したかったんじゃないのか?」
「ハハハ・・・・・事情は、落ち着いてから話そう。MSデッキに降りるぞ。」
政樹は、嬉しそうにジークの肩を叩いてタラップに降りろと手で示した。
「しかし、事情はどうあれ、あのパイロットがいれば安心じゃないか。」
「ああ・・・・・」
政樹は、ジークに続いてタラップを降りながら、それ以上のことは言わなかった。
どの道、合えば分かることなのだ。

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