ザ・グレート・展開予測ショー

シロ・閃光の中で・・・(後)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 9/10)

ズガガーーン!!!
「ギャンッ!!」
激しい揺れと凄まじい衝撃が同時にコックピットに襲いかかった。
「くっ・・・・参ったでござるな・・・・・直撃でござるか・・・・・・。早く脱出しないと・・・・・痛っ!?・・・腕が折れてる・・・・。」
ビーー!ビーー!
赤い警報ランプが鳴り響く中、シロは軽く動揺しながらも、脱出装置を作動させるべく何とか上体を起き上がらせた。
既にコックピットのあちこちで各部位がスパークを起こしており、あと数十秒もすれば機体が木っ端微塵に吹き飛ぶことはシロにも容易に想像できた。
シロは、上体を起こすと、モニター画面の下に設置されている脱出ポッドの作動スイッチを唯一まともに動く頭で無理やり押し込んだ。
「これで・・・・・と。・・・・・・・おかしいでござるな?作動しない・・・・・・」
焦ったシロは、頭で何度もスイッチを押してみたが、やはり結果は同じであった。
・・・先ほどの衝撃で既にスイッチは完全に機能を停止させていた。
もはやシロは、爆弾の中に閉じこめられているも同然となっていた。
「・・・・・・・」
シロは、愕然とした表情で、バタッと椅子に倒れこんだ。
目にはうっすらと涙が滲んでいた。
「こんな・・・こんなところで拙者は死ぬのでござるか・・・・・・」
シロは、間近に迫る死というものを、はっきりと認識していた。
と、その時、ノイズに入り混じって横島の無線がコックピットに響いてきた。
「シロ!お前なにやってんだ!?早く脱出しろ!敵は俺が押さえてるから!」
「・・・・・先生・・・・・」
横島の緊迫した声に、一瞬シロの表情が穏やかなものに変わった。
シロには、外の様子がほとんど分からなかったが、近くに横島がいるようで、そのことが嬉しかったのだろう。
「シロ!おい、聞こえてんのか!?」
「そんなに大声出さなくても・・・・・ちゃんと聞こえてるでござるよ、先生・・・・」
「シロ・・・・だ、だったらなんで脱出しねえんだ!?」
「・・・・装置が動かないのでござるよ。・・・・・もう、お手上げでござる・・・・」
「マジかよ・・・・。何とかコックピットこじ開けて外に出てこれないのか!?」
「駄目でござる・・・・。拙者の腕は両方ともさっきのでボロボロでござるし・・・・」
「・・・くそっ!!シロ、そこで待ってろ!今、俺が助けに行く!!」
「・・・・・先生、もう・・・・いいでござる・・・・・・。あと数秒で爆発するでござる・・・・・・。離れてて・・・・下さい・・・・」
シロは、目を真っ赤にしながら腹の底から必死で声を絞り出した。
シロには横島の気持ちが痛いほど分かっていたから・・・・・。
「バカ野郎っ!!お前は・・・お前は俺の弟子だぞっ!!こんなとこで死なせるかっ!!まだ教えてない事がたくさんあるんだぞっ!!それに、さっき約束したばっかだろっ!?宇宙に戻ったら俺とオセロやるんだって!!」
「・・・・・・・」
横島の悲痛な呼びかけに、シロはもう何も言えなくなっていた。
ただただ大粒の涙が頬を伝って雫となって膝に何度も滴り落ちていった。
「・・・・先生、短い間だったけど、拙者、先生やタマモと居られてすごく楽しかったでござる・・・・。拙者が死んだら、タマモのこと頼むでござる。アイツはいつも強がってるけど、本当はすごく寂しがり屋でござる・・・・。拙者が死んだらアイツ・・・・一人ぼっちでござるから・・・・・」
「シロ、お前何言って・・・・・」
「さよならでござる、先生・・・・。おキヌちゃんの事、大事にするでござるよ・・・」
「ちょっと待てよ、シロ!!・・・そんな死に方でお前満足なのかよ!?俺は、絶対そんなことは許さんっ!!」
「拙者だって・・・・本当はもっと先生達やタマモと一緒に居たい!!いっぱい、いっぱい、遊びたい!!でも・・・・もう・・・・」
そこでシロの無線は途絶えた。
「シロ――――――!?」
横島が呼び掛けようとした、その刹那―――――
ドゥーーーーーーン!!!
シロのディアスは、パッと咲く光に包まれた。
「おい・・・・シロ・・・・・シローーーーーーーーッ!!!!!」
横島は、涙でグショグショになった目を拭いもせず、ただひたすらに吼えまくった。
だが、無情にもその声に呼応するかのように、絶叫する横島のMK-Uにディアスの装甲板が次々と降りかかってくるだけであった。
「シロ・・・・・・」
横島には、その爆炎の中でパイロットスーツのシロがこちらに笑顔で敬礼しているように思えた。
『先生!タマモのこと、よろしく頼むでござる!』
「シロ・・・・・・そんな・・・・・ウソだろ・・・・・」
横島は、虚ろな目で天井を仰ぎながらバタリと椅子にもたれ掛かった。


タマモは、シャトルのコンソール・パネルの小さなモニターの中で爆発するシロのディアスを見た。
「シロ!?」
と、言いかけた時、
「5秒前、よん・・・・」
コントロール・センターからカウントダウンの声が明瞭になった。
「さん、に!・・・・・」
タマモは、応じた。
「レディー」
タマモの目に涙が浮いた。
「ゴーッ!!」
シャトルのバルブが開かれた。
「シロ・・・・!!シロ・・・・!!」
上空へどんどん突き進むシャトル内で、タマモはハンドルを握ったまま一人泣き崩れた。


マリアは、十式とMK-Uとシロ機の相違というものを知って、かすかに納得した。
実戦というものの質感が分かった気がした。
これらに自分が、どう対応していけるかわからなかったが、それは、これから学習すれば良いことである。
その納得が敵の存在を忘れさせて、ギャップランを無闇に上昇させることになっていた。
「マリアッ!敵が逃げるぞっ!」
ヌルの声が、ヘルメットに飛び込んで、マリアはギョッとした。
「シャトル?」
マリアは、シャトルが轟音をあげて上昇しているのを見た。
任務を忘れていたという強迫観念が、マリアを逆上させた。
シャトルを追尾した。
西条は、その動きを知ると、横滑りにシャトルの発射台の方向に叫んでいた。
「横島君!」
「・・・・・何スか・・・・」
横島の気の抜けた返事が返ってくる。
「十式の肩に乗れっ!シャトルが狙われている!」
「アンタな・・・・・・シロが・・・・シロが死んだんだぞっ!!どうして、そう平気でいられるんだっ!?」
「平気なワケ無いだろ!!だが、今はそれどころではない!!これは戦争なんだっ!!今シャトルを破壊されたら我々ICPOにはもう打つ手が無いっ!分かってくれ、横島君!」
「・・・・・・・クソがっ!!」
シャトルは炎と噴煙に押されるように上昇して、厚い雲に突っ込んでいった。
それにギャップランのMAが接近しようとしていた。
横島は、MK-Uをジャンプさせ、西条の十式は、そのMK-Uの脚に向かって飛び込んでいった。
十式の推力とMK-Uの推力が二機の機体を上昇させるように見えた。
横島は、ギャップランの動きを見て、さらにバーニアを全開した。
「テメーがシロをっ!!」
ライフルをかまえ、雲に突っ込もうとするギャップランの鼻先を狙った。
雲に入る直前である。
ギャップランは、機体の装甲を射ち抜かれていた。
「くっ!」
マリアは、自分が飽和しているのを感じた。
「後退・するしか・・・・・」
その自覚症状が、マリアに、シャトルの追撃を諦めさせ、後退させた。
ケネディ空港の滑走路では、アウムドラが離陸する瞬間であった。
降下を始めた十式とMK-Uを捕らえることができる位置でもある。
「乗り移れ、ジャスティス!横島!」
政樹は、西条と呼ばなかった自分の間違いを訂正しようとは思わなかった。
横島は、正面に流れるアウムドラの巨体を見ながら、方向修正のバーニアを噴かして、MK-Uを横滑りさせた。
後部のハッチに取り付いているノモとディアスからワイヤが発射された。
MK-Uの機体を引っ掛けてくれるのだ。
西条は、アウムドラの背中に当たる部分に十式の脚をそっと接触させた。
それでも、甲板のように強化されていない装甲は、1メートルほどへこんだ。
しかし、巨大な機体にとって、それは損傷にもならなかった。




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