ザ・グレート・展開予測ショー

横島と依頼人


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/ 9/ 4)

 自転車を転がして約20分。街の一等地、総ガラス張りの高層ビル十階。
 そこに有明不動産はある。 
 おキヌちゃんとは入り口ロビーで13時の待ち合わせになっている。
 ただいま12時45分。少し早めに着いたらしい。
 俺は自販機からコーヒーを買ってくると、待ち合い所のイスに座る。
「あちち」
紙コップでホットコーヒはやはり熱い。ふーふーと冷ましながら飲む。
 待合所からは歩道の様子が良く見える。
 時折OLのおねいさま方が美しいおみ足をさらしながら俺の前を横切って行く。
 女子高生も良いがこういうのもいいよね。
 暫らく見とれていると、おキヌちゃんが前を通るのが見えた。俺は一気にコーヒーを飲み干すと、入り口の方へ向かっていく。
 「あ、横島さん」
 「やあ」
「お待たせしちゃったみたいですね、ごめんなさい」
おキヌちゃんはかわいらしくぺこりと頭を下げる。
「いいよ気にしなくて。いいや、とにかく行きながら話そうか」
俺はエレベーターの方へおキヌちゃんをエスコートする。
「美神さんから話は聞いてる?」
「ええ、詳しい話は依頼人に改めて、って言われましたけど」
「ふうん」
チィン
エレベータが下りてきた。静かに扉が開く。
「乗って」
「えっと10階ですよね」
「ああ、有明不動産だから10階だよ」
おキヌちゃんがボタンを押すと扉が閉まり、体にGがかかる。
「制服のままで来たんだ」
「学校帰りですからね。ほんとは着替えてから来たかったんですけど、美神さんがそのままでいいからって。依頼人てどんな人なんでしょうね」
「気が弱そうな声の人だったよ」
取り留めのない話をしているうちにエレベーターは10階についた。
フロアに出ると微弱ながらはっきりとした霊気がながれているのを感じた。
「ゆうれいさんでもいるのかな」
「強い霊気って訳じゃないから、たぶん何かのきっかけで居付いた浮遊霊か何がだって」
フロアから奥に向かっていくと有明不動産の文字が目に入る。受付のおねいさんがこちえらを見て怪訝そうな顔をする。
「あの、どういったご用件でしょうか?」
何でここにいるの、とでもいいたげな表情だ。
「美神令子霊能事務所の横島となんですけど、臣志と言う人に依頼を受けまして」
「臣志でございますね、少々お待ちを」
受付嬢は電話を取ると内線で依頼人を呼び出してくれた。
「すぐ来ますので、あちらのイスの方でお待ちいただけますか?」
「いいですよ。行こう、おキヌちゃん」
「はい」
俺は言われた通りエレベーター前のフロアの長いすにおキヌちゃんを連れて向かう。
「しかし雑霊が少ないような気がしませんか、横島さん」
おキヌちゃんがふと気付いたように言う。
「そうかな、こんなもんじゃないのかな」
確かに少ない気もするが、立てる前にきちんとお払いとかしたり、普段から霊的にも衛生的にもそれなりに清潔にしていれば、幽霊がそれほど集まってくる事はないらしい。
「美神さんなら如何おもうかな」
たぶん気にしないだろうと思うけど。
「あ、あのすいませんお待たせしました、私がお電話させていただきました臣志でございます。このたびはわざわざご足労いただいて」
「きゃぁ」
「うわぁ、何時の間に」
いきなり声をかけられてちいさく悲鳴をあげるおキヌちゃんと俺。
振りかえるとそこには、30代半ば、ダークグレーのスーツに身を固めた、かなりやせ細った感じの男がたっていた。頬骨が突きでていて、耳が大きいのが特徴だろう。
「あ、す、すいません、驚かしてしまったみたいですね」
臣志さんは申し訳なさそうな顔をする。
「びっくりましたよ、いきなり後ろにいらっしゃるから。あ、おれ横島って言います、でこっちが」
「氷室キヌです。おキヌって呼んで下さい」
「あ、はい、横島さんとおキヌさんですね、はい、どうぞよろしくお願いします」
なんかやたらと低姿勢で気を使っている。大変なんだろうな、やっぱり。
「で、さっそくなんですけど、以来の内容を教えていただけますか?」
余計な話に入る前に早速話を切り出す。
臣志さんは俺達の前に回って向かいの長いすに座るとテーブルの上に写真を並べだした。
「えっと、この写真をごらんいただけますか、はい」
「これは?」
「私の取り扱っているマンションの一つです。イヤー最近自殺者が二人連続で出まして
ね。はい。でですね、でるんですよ」
カタカタと手を震わせている。よほど怖い思いをしたのだろう。
「でる、といいますと」
「当然、自殺者の霊ですよ…」
俺はごくり、と唾を飲み込んだ。ぬめりとした空気が流れたような気がした。
臣志さんが更に話を進めようと新たな写真を取り出した。
俺とおキヌちゃんの視線が写真に集中する。そこには…。

 続く。






 

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