ザ・グレート・展開予測ショー

強戦士、マリア


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 9/ 3)

同じ頃、サウスカロライナ州のクラークヒル湖の北寄りの背の低い建物から、全員起床のサイレンが鳴っていた。
政樹が言っていたニュータイプ研究所である。
政府の直轄化にあるニュータイプを研究する学術的な研究施設といわれていた。
まあ、そのまんまである。
が、その実態は秘匿されていたが、この朝、ニュータイプ研究所は、その秘密のベールを脱ぐ事件に出会ったのである。
その建物の湖に面した部分には大きな開口部があり、そこから湖面にブイが並んでいた。
その開口部の奥にも水が入り込み、さらにその奥では、鉄のシャッターが開くようなきしみ音がしていた。
「フロリダのケネディにガルーダが着陸したのは確実だ。ジブローと関係があるらしい。ICPOの連中だとしたら、叩かねばならん。ガルーダは傷つけるな。あんな高いものは、ぶち壊したら、こっちにお咎めがある。わかったか!マリア少尉!返事をしろっ!」
水面を覗くことのできる狭い管制室では、いかつい軍人が、マイクにしがみついていた。
「イエス・軍人さん・・・」
明瞭な声が、モニターを通して聞こえた。
その声は少女のそれであったが、どこか機械的な感じがした。
管制用のコンソール・パネルには幾つものモニターがあり、MSに乗っているパイロットを映し出すことができた。
ニュータイプ研究所というのは、表向きのものである。
実際はサイコミュとMAのシステムを研究するのがその主なテーマであった。
大雑把に言えば、サイコミュは、人間の反射神経を電気的に取り出して、それを機械の操作に使うものである。
そのシステムに捕らえられた人間が、時にはニュータイプ的な反応を示し、ピートは、そのシステム下にいた人間と意思の交換を行った経験がある。
そして、ピートは、それらのシステムの力を借りることなく、周囲の殺気を読み、多少の予知能力的な能力を持つまでに至った。
が、ピートの体験はエスパー的に突出したものではない。
あくまでも、人としての人格を具有したままでの感応であった。
通常の人間でも、訓練と習練によって手に入れることのできる洞察力のようなものにすぎない。
剣の技に優れた達人が経験する、間合いの読みとか、天をも斬ることができたと思える感覚の理解である。
その程度のことではあるが、これを通常感覚に持つことができれば、明らかに人の能力の拡大である。
一般人であっても、新しい環境に対応していこうとする前向きの意思と姿勢があれば、手に入れることができる能力であろうというのが、ピートの言いたいニュータイプ論であった。
そして、この悟りに近い体験を通して、人が全体的に革新することができれば、それは人のニュータイプであるというのである。
が、ニュータイプ研究所は、あくまでも道具として人間の能力のシステム化の研究をすすめていた。
ピートが言いたかった本来的な意味でのニュータイプの能力開発の研究ではなかった。
人間の反射神経を薬物、催眠、自己暗示を含むバイオテクノロジーの技術を動員することによって強化し、そのリアクションを電気的、神経信号的にとり出して、機械操作に転換してゆくシステムを研究していただけのことである。
そして、そのMSなりMAなりと連動して、戦闘部隊が編成できないかという研究が、このニュータイプ研究所で進められていたのである。
カオス教は、正規軍を押さえてゆくと同時に、世界に散々する幾つかのニュータイプ研究所を押さえていった。
このニュータイプ研究所にも、密かにMS隊が配置されて、戦闘部隊の機能を持っていたのである。
ニュータイプ研究の成果を実証するための配備であった。
もっと正確に言えば、強化人間が、戦闘パイロットになれるかどうかという研究のひとつの成果が、今日試されるのである。
半分水の中に沈んでいるマシーンは、どちらかと言えば、MAに見える。
ORX05ギャップランと呼称されるそのマシーンのコックピットには、マリア少尉と呼ばれる少女が座っていた。
「発進・可能です・・・」
おっとりした音声が管制室に入った。
「ガルーダは傷つけるな!わかっているな!」
「ノー・プロブレム・・・」
すでに、MS発進場の水は泡立ち、ギャップランは流れるように前進をしていた。
「コース・クリアだ。発進、よーし!」
「マリア・参ります」
その声と同時に、ギャップランの機体は、湖に出ていた。
同時に、水しぶきが機体をさらに包み、轟音が周囲にとどろいた。
ギャップランは、水面を押し割ってしばらく進むや、上昇をした。
水面から現れた機体は長く、ポッテリとしたもので、決して魅力的とは言えない。
と、ビルの背後の林からは、三台のベースジャバー(ホバークラフトみたいなの)に乗っかった六機のザックがギャップランを追って発進した。
「これより・三十分後に・敵と・接触予定・・・・」
コースを固定すると、マリアは研究所に報告して、ケネディに向かった。
アウムドラの巨大なデッキは、本来、シャトルのブースターを置くスペースである。
全体で、十基のブースターを積み込むことができ、テンプテーションを十回宇宙に送り込める能力があった。
その間、シャトルは、地上からガルーダ、ガルーダから宇宙へと飛行をする。
その方が地上からシャトルを発進するよりはるかに安いからである。
その巨大なデッキには、数十のMSが置かれ、パイロット達は、宇宙用の戦闘コントロールの記憶回路の消去を行っていた。
そのデータの中には、宇宙と月に関してのICPO基地の拠点の記憶回路があるから消去しておく必要があった。
横島もクレーン車に乗ってその作業をしていた。
「こんなことしないで、破壊したほうが早いんじゃねえの?」
隣のクレーン車ではシロが、次のロボットに向かっていた。
「西海岸か北欧でオカルトGメンがMS隊を編成するんでござるよ!」
と、下に西条がエレカで走り込んで来た。
「もういいっ!戦闘コントロールの記憶回路の消去はやめろ!」
「あと三機分はできます!」


「タマモ君!」
「ん、何?」
別のクレーン車からタマモが降り立った。
「タマモ君、君のディアスは宇宙には持って帰れんぞ!諦めてくれっ!」
「ウソ・・・じゃあどうすんの、これっ。」
「バンデンバーグのヒッコリーから、打ち上げてもらえそうだ。でなければ、オカルトGメンに使ってもらう。」
「シロのにしてよっ!」
「考えてみよう。タマモ君はすぐにシャトルに行ってくれ!」
「まだ時間はあるんでしょ?」
「オカルトGメンのシャトルのパイロットに、逃げられたそうだ。経験があったな?」
「でも・・・あのタイプは古すぎるわ。」
「それで飛ぶんだ!」
「もう・・・・!」
タマモはしぶしぶとクレーン車を降りて、もう一度、ディアスはなんとかなりませんか、と言った。
「かならず、宇宙に返しますから!」
鬼道館長である。
「なにか?」
西条は、政樹が自分を追いかけてきた理由がわからなかった。
「これの感想を聞かせてください。」
先ほどの手紙である。
「・・・・・?」
西条はそれを一読してして、
「横島君、シロ君!もういいっ!自分達のMSをシャトルを搬入しろっ!」
そう命令を下すと政樹に手紙を返した。
「これには、あなたがジャスティスだと書いとるんですけど、大尉、お教え願いたいのですが。」
「・・・・さあ・・・・・」
西条は、政樹の目を見つめて一息ついた。
「なにかの間違いでしょう。ジャスティスがなんでICPOに手を貸すのです?」
「僕にも思い当たる節はあります。ジャスティスならばそうしますよ。この内容はウソとは思えへんのです。」
「今の私は西条大尉だ。それ以上でもそれ以下でもない。」
「・・・・・・・」
「もし仮に私がジャスティスだとしたら、君は、ジャスティスに何を言いたいのかね?」
「彼は時代のリーダーになる資格があるのに地球圏に戻ってきてドンパチばかりやっとります。僕はそれは卑怯やと思うんです。」
「ジャスティスに政治家になれと言うのか?そうしないのは、現実逃避をしていると?」
「はい・・・僕ら元木馬のクルーは、現実の中で痛めつけられてきました。現実逃避をしたくなる気持ちはわかります・・・・・でも、ジャスティスは戦後自由ではなかったのですか?」
その政樹の言葉に、西条の口元がギリッと鳴ったように見えた。
政樹は言いすぎたと思ったが、遅かった。
「・・・・私は、ジャスティスではない・・・・」
西条は怒ったのだ。
政樹は、目を伏せた。
「・・・・許してください。大尉。」
政樹は、西条に握手を求め、西条もまた握手を返しながら、
「ジャスティスはジャオンで戦ったのです・・・・」
「現在は、僕らと共に地球の汚染を増進させようとする人々と戦っていると僕は信じたいのです。それほどに、僕らは、戦後、苦しい思いをしてきたのです。重力に魂を引かれた人々によって・・・・」
「わかります。」
西条は答え、横島の方を見た。
「・・・・・・・?」
横島は、なぜ西条が自分を見つめているのか分からなかった。
ウィーン!警戒警報が鳴った。
「空襲!?」

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