ザ・グレート・展開予測ショー

ケネディ・スペース・ポート


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 9/ 2)

払暁。
鬼道政樹は、パイロットも乗せず、ひとりでB70『バルキリー』で二機のガルーダを先導していた。
二晩続きで一睡もしていない。
それに従うのは、巨人機ガルーダのアウムドラとスードラである。
バルキリーの前方には、フロリダ半島が朝の靄の下で眠りを覚ましつつあった。
アウムドラのコックピットには、西条、メドーサが他のクルーと共にいた。
「アウムドラ、スードラは、B滑走路を使用してください!」
政樹の声が、ノイズの中にかすかに聞こえた。
この空域は、ケネディ・スペース・ポートのエリアである。
「空港は安全なのかね。鬼道君。」
「大丈夫です。ケネディは、ほとんどオカルトGメンの連中ですから。」
「そうか・・・」
西条は納得しながら窓越しに見えてくる空港をジッと見つめていた。
前方でライトがつくと二本の滑走路が浮き上がって見えた。
「よし、行くぞっ・・・」
ケネディ・スペース・ポートの彼方には、何十機ものシャトル発射台が見え、コロニー移民時代のレール型の発射台が、遊園地のジェットコースターの台のように見えた。
短い方の滑走路にバルキリーが着陸し、二機のガルーダは、次々と巨大な滑走路に着陸していった。
政樹は。バルキリーを降りると、ジープを使ってアウムドラに向かった。
アウムドラにスードラのMSを移動しているところだった。
他にも地球連邦軍の捕虜の始末もあり、ICPOのパイロットと、ケネディのオカルトGメンの将校たちは多忙を極めた。
政樹はICPOのパイロットをこのケネディに連れてきて、ここのシャトルでパイロット達を宇宙に戻そうという計画を立てていた。
政樹は、アーギャマとの接触の予定を急がされていたので、すぐに西条を通信棟につれていって、アーギャマとの最後の連絡をさせなければならなかった。
「地球連邦軍に知られずに支援体制を作るために、機材はセコハンばかりを使いましたから、うまくいかなくて・・・・」
「いやいや、オカルトGメンの組織がこれほどとは思いませんでした。」
「当然ですよ。地球連邦政府は、カオス教に騙されて地球を一部の人々の独占物にしようとしとるんです。それにジャオンが手を貸しているという噂もあります。となれば、抵抗は当然でしょう。」
「しかし、ご自身が危険にならなければいいのですが・・・・」
「ガルーダを二機も着陸させてしまいましたから、ここももう危険です。使えません。」
「ジブローが引越しをしたという情報が手に入らなかったのは?」
「申し訳なく思っとります。カオス教のDrカオスの力を甘くみていました。ジブローの引越しが分かったのは、一昨日でした。」
「それでお出迎えに来てくださった?」
「そうです。」
政樹が館長をやっている戦争博物館は、昔スペースシャトルの組み立てに使っていた建物である。
その前で政樹は降りると、
「・・・・シャトルは二台用意しましたが、MSは三台しか運べません。」
「了解した。」
「それと、シャトルのパイロットが一人、逃げました。MS隊の中にシャトルの経験者はいませんか?」
「大丈夫です。なんとかなる。では・・・・」
「電波研究所へ急いでくださいっ!」
走り去るエレカを見送りながら、政樹は博物館に入った。
その中には昔の戦闘機が吊るされ、下には戦車やMSが並んでいた。
政樹は、自分が昔乗っていたのと同じ型のMSを見上げながら、執務室に入った。
そこは、博物館の暗く冷たい空気の部屋とは全く異なった活況があった。
いかにも速成で集められたコンピューター・ウインドーが並び、床にはコードの束が蛇のようにうねっていた。
急場で作り上げたシャトルの司令センターだ。
「ああ、そうだ!燃料積み出しは三十分以内に終わらせてくれ。」
「食料が少ない?なんでだ!ムリをやるのがオカルトGメンだろうが。」
そんなクルー達の怒声が満ちていた。
「館長。北米のニュータイプ研の直轄部隊が、カオス教に寝返ったって情報があります」
「ニュータイプ研究所か?」
「はい!」
「急がせろ!今度の便でなんとしてもシャトルを発進させろ!」
「はっ!」
政樹が情報収集をしてくる男との話が終わるのを待って、若いインストラクターが手紙を差し出した。
「調査したところ、あの西条とかいう男の正体が分かりました。」
「・・・・・」
政樹は、黙ったまま機器が積まれた大机の前に座り、あれさがったコード類をどけて、机の引出しからペーパーナイフを出して、封を切った。
「・・・・・なんやと!?」
政樹は、その手紙をジャンパーの内ポケットにしまうと、
「西条大尉が、赤い閃光だっていうんか・・・?」
と、ひとりごちた。


政樹が窓から見た方向に電波研究所があった。
その暗い一室では、アーギャマと交信が始まっていた。
レーザー発信を使って、次の周回で合流する打ち合わせである。
西条は、コーラの瓶を置いて、二人の通信員の背中を見つめていた。
「暗号コード、ゼロスリスリ。」
「そうだ。間違いない・・・」
通信員が手首の鍵を取って、ロッカーから033と書かれたデスケットを出し、それをコンピュータに噛ませる。
ディスプレイにコードが浮かび、
「ええっ?軌道変更可能なれど、われ、敵艦隊と交戦中・・・?ランデブーはオーケー?本当か?」
「敵の攻撃が散漫なのさ。・・・知っているか?今のアーギャマの館長は、美神美智恵なんだよ。」
「木馬の?」
「そうだ。」
「なら、戦闘しながらでも、ランデブーはやってくれますよ!」
「そういうことだ。打ち上げ時間は四十分後ぐらいか?」
「はいっ・・・・!」
「きました!最適打ち上げ時間は、四十一分後の1423です!」
「シャトルの発射準備は?」
「待ってください。」
と、通信員は受話器をとるやいきなり怒鳴った。
「シャトルの発射時間決定だ!できるだろ!やれってんだよっ!」
戦争博物館の最上階にあるシャトル管制室には動揺の色が走った。
「打ち上げシャトルは博物館物なんだっ!ムリだっ!」
「燃料注入は間に合うぜ!」
「黙ってろ・・・・え?パイロット養成には時間と金がかかる!?分かってんよ!」
電波研究所の一室で西条は、オペレーターから受話器をとって、
「MS用のシャトルも同時に出す。できるな?」
「どこのバカだっ!二台同時の発進はムリだ!パイロットだけ優先させろっ!」
「いや、新型のMSをカオス教に渡したくない。コントロールはさせるよ・・・ああ・・・了解だ。」
西条は受話器を返して、
「では・・・・」
「良かったですね。」
「ああ・・・・・」
ポンと、その愛想の良い通信員の肩を叩いて出て行った。

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