ザ・グレート・展開予測ショー

霧の街より来る悪魔(7)


投稿者名:ツナさん
投稿日時:(00/ 8/25)

 「だぁぁぁ!!あっちいけぇぇ!!!」
 横島の雄たけびが美神たちの耳に飛び込んでくる。 
 ジャックリッパーは美神たちを霊視ると歯を剥き出しにして笑って見せた。 
 挑発をしながらも横島を捉えている。
 サイキック猫騙しは一瞬は目を眩ます効果がったが始めの数秒だけであとは何事もなかったように横島を脅かし続けた。
 彼の目は目視ではなく、ある一定の領域規模で全体的に霊的存在を感じる、といったほうがいいのだろう。
 霊気を一時的に高出力で放出し、弾けさせるサイキック猫騙しは彼の霊視力を一瞬くらませるだけに留まった訳だ。
 『ぎゃははははは、逃げるだけか、みっともねぇ。怯えろ、慄け、ファーーーーック』
甲高い声が、耳から耳へと突き抜ける。
 「美神さーん!!」
 横島は迷わず美神達の方へと逃げる!!
「主と精霊の御名において命ずる!!汝数多の魂を奪いし醜悪なる悪魔よ!!穢れ無き魂たちの嘆きと主と精霊の怒りを受けよ!!」
前触れも無くいきなり唐巣神父が破魔の呪文を唱える。唐巣神父の霊力と、精霊や主たるもののエネルギーが混ざり合い、掲げられた唐巣神父の右手に光り輝くエネルギー体を作り出す。
「避けろ横島君!!主よ、精霊よ、嘆きの魂達よ、我に悪魔を滅っせし力を!!アーメン!!」
エネルギー体はまるで全てを理解したかのように唐巣神父の手を離れジャックリッパーめがけて飛び立つ!!
「うえあぁぁ!!」
横島が奇声を発して飛び避ける!!ちりちりとした感触が横島の右半身を覆う。
「いきなり大技!!せんせー飛ばしてるわねー」
涼しい顔で美神が言う。言いながら神通棍を構える。当然左手には破魔札を持っている。しかも全部五千万円を超えている。それを見たエミがギョッとした。
(玲子が採算を考えないほどの相手なわけ…) 
気を引き締めざるを得ない。
「ぴーとぉ、エミこわーい!!」
それでもピートを挑発するのは止めない。ピートはただただ苦笑いを浮かべている。
『さすがに、ぐぁお!!!!』
エネルギー体はまっすぐ飛んでジャックを捕らえた。思った以上の威力と速さにジャックは避けるまもなく巻き込まれて、短い悲鳴をあげる。
「これで終わりですね、先生!!」
「いや、まだだ」
ピートの歓喜の声を冷たくあしらう唐巣神父。
「あの程度で退治できるなら美神君や横島君が苦戦するかね?」
神父の目は何気に寂しそうだ。
『ぐおあぁぁぁ!!ファァァァック』
そしてジャックリッパーは神父の放った、自らを包んだエネルギー体を己の負のエネルギーによって消し飛ばした。
ピートが驚愕する。
「私ではやはり力不足か」
淡々と言う神父、が神父の一撃はジャックに隙を作るのには十分だった。
「くらいな!!」
エミがブーメランを投げる、それと同時に美神が神通棍に霊気を込めてジャックめがけて飛びかかる。神通棍は美神の霊力に負けて変形し鞭状に変化する。
『きぃぃ、GSどもが!皆殺しだ!!』
ジャックが動く。怒りを胸に。
ジャックはまずブーメランめがけて突進、刃を振り回し向かってくるブーメランをずたずたに切り裂く。
「ック!!」
まさか突っ込むとは思ってなかった美神、神通鞭はむなしく地を叩く。
ジャックは駆る。唐巣神父たちには予想外の速さで。
「マリア!!奴を止めろ!!」
「イエス・ドクター・カオス!!ロケット・アーム!!」
カオスがマリアに指示を飛ばす。マリアは即座に反応し、両腕を飛ばす!!
「あぶない!!」
ロケットアームをするりとすり抜けたジャックがまずエミを襲う。エミは無意識的に精霊石を投げようとするが間に合わない。危険を察知したピートが彼女を身を呈して守る!!
「ピート!!」
叫ぶエミ。ピートに抱きしめられたまま。
「大丈夫ですかエミさん!!」
「うん、ピートが守ってくれたから、あ、背中に傷が・・・」
ブシュウ!!
浅い傷口から血が噴出す。シロと同じ傷だ。痛みが激しいのか、ピートが顔をしかめる。
「ピート!!」
「大丈夫です、それより奴は!!」
言いながら脂汗が出ている。かなりきついに落ちがいない。
「令子、早く手を打つわけ!!」
エミに焦りが見える。ピートががくりと膝を落とす。エミはピートの顔を抱きかかえて、
「心配しないでピート、私があなたを守るわけ」
優しく強く言った。顔を赤らめるピート。
「このヤローピート、おまえなんかもう友達じゃねぇ!!」
横島遠くから叫ぶ。むなしい叫びだ。
 ジャックリッパーは続けて美神に突進する。
『ファァァァッック』
行動が単細胞ながら身が軽く異常に速いだけに、厄介さをます。
「たぁぁ!!」
美神が素早く神通鞭で応戦するがジャックは刃をバリアーのようにしてことごとくはじき受け流しながらいささかも速度を緩めず突進する。
「このおぉ!」
美神は立て続けに破魔札五千万以上を乱れ打つ!!
『無駄ぁぁぁ!!ファァァァック!!』
ジャックは破魔札が発動する前に全て切り刻んでしまう。
そして一気に美神の背後に回ると、背にまとわりついて、言う。
『バイバイ、GSのネーチャン!!』
そして首筋に刃を突き立てた!!
「かはっ!」
美神が喀血する。
「くおのクソ悪魔ぁぁぁぁぁぁ!!!」
その瞬間、横島が信じられないスピードで、美神に駆け寄ると、霊波刀でジャックリッパーを貫き、美神から引き剥がす。横島の足元には速の一文字の刻まれた文殊が転がっている。
「このねーちゃんは俺のだ!!俺がやるまではぜってぇやらせねぇぞ!!」
欲望剥き出しの言葉を発しながらジャックリッパーを地面に釘付けにする。
『がぁぁぁぁぁ!!!はなせぇぇぇ!!!』
ジャックリッパーが悲鳴にも似た叫びをあげる。
「喧しい!!!」
横島は言葉を叩きつけながら更に文殊を出す。文殊には破邪の二文字が刻まれた。
それをなんと手の甲の水晶体の所に吸収させる。霊波刀が更に凝縮され、目を覆わんばかりの輝きを発した。
「消えうせろ!!!このクソ悪魔ぁぁぁぁぁ!!!」
横島が更に腕に霊力を込める。
『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
ジャックリッパーが苦悶の叫びをあげた。その声はあまりにも激しく、そして唐巣神父は思った。
(悲しみ、怒り、恐怖、憎しみ、殺意。人間の負の感情が集まったような叫びだ)
ジャックリッパーの体が、徐々に崩れていく。
『ぐぁぁぁ・・・・やっと解放されるのか…、憎しみ、怒り恐怖、殺意。人間の負の感情から生み出されたおいらは、一体なんだったんだ…ぐぅ……。
なぜおいらは生まれた…?答えろ、GS…』
「…人間にも屑がいるって事よ」
美神が苦しそうに答える。 
『おいらは人間を恨むよ…おいらに殺意を抱かせた人間の心を』
ジャックリッパーの目に涙が浮かんだように見えた。
その時教会の中からすんだ笛の音が聞こえてきた。暖かさを優しさを含んだ音色がジャックリッパーの耳にも届いた。
『人間って、時には酷いことしちゃうかもしれないけど、優しいところだって一杯あるんだよ。みんな、一生懸命生きてるんだよ。あなたにも優しさに触れて欲しかった。きっとそうすればあなたは、そんなに苦しまなくても良かったのに…。ごめんなさい…』 
おキヌの笛の音はジャックの心に一筋の光をさした。
『…畜生…おいらは何をやってきたんだよぉ……ちく…しょぉ…』
消え去る瞬間、ジャックリッパーの素顔が見えた。その顔はまるで教会の壁画にかかれる天使のような、涙を溜めた澄んだ目の子供だった。
「主よ、願わくばこの罪深き魂に永遠の安らぎを与えたまえ、アーメン」
唐巣神父が魂の平安を祈る。
横島の手から霊刀が消えた。その目には遣り切れなさがある。
「よく、やったわ」
美神が言う。首の傷が次第に消えていく。
「人間て、罪深い生物ッすね・・・美神さん」
「そうね。でもしょうがないじゃない。今の人生は一回しかないんだから。欲もでるわよ。それより、さっきの発言…」
「なんすか?美神さん?」
「だれがあんたの物だって!!え?」
「いやそれはその…」
横島がよろよろと後退する。美神が神通鞭を構え、迫る。
「第一なんであんたとP〜〜〜〜〜っちゃいけないのよ!!」
「ひぃい、ごめんなさいごめんなさいっと・・・あれ」
後退しながら横島がへなへなと尻餅をつく。
「美神君、今はやめときなさい」
それでも横島をしばこうとする美神を、唐巣神父が制した。
「横島君は霊力を使い果たして、今は話しているのもやっとんだから、っとっと」
言っているうちに横島が後ろに倒れそうになる。それを美神が受け止めた。ちょうどそれが膝枕をしたような形になる。
横島は意識が飛んでいる。
「ちょっと、横島君!」
「ぐうう。くうう・・・」
すぐに寝息が聞こえてきた。美神はほっと胸をなでおろす。
「…って何で私がこんな奴の心配しなくっちゃいけないのよ! こら、起きろ横島!!」
横島をぶんぶん揺さぶるが、一向に目を覚まさない。
「しょうがないなぁぁ・・・もう」
「みかみさぁぁん・・・、裸にエプロンじゃ風邪ひきますぐぼは!!」
寝言と同時に肘鉄が横島の顔面にめり込む。
「夢ん中で人に変な格好させるな!!!」
「うわぁぁぁぁ、ごめんなさい、ごめんなさい!!・・・くうう」
横島は夢の中でまで謝り倒している。
 彼は一生、美神さんに頭が上がらないのだろう。
「この馬鹿…」
 美神の呟きの意味は美神しか知らないわけで、ある。
                                     fin



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